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生理用品らしくない「PLAZA」流のパッケージデザインが生まれるまで

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宣伝会議は、2023年11月29日、30日に九段会館テラスにて「宣伝会議マーケティングサミット2023」を開催しました。2日間で合計34セッションの講演、展示ブースでのプレゼンテーション、マーケター交流会などが行われました。本稿では、雑貨店「PLAZA」による新たな生理用品のブランド開発に関する講演についてレポートします。

※次回のリアルイベントは、2月29日、3月1日に「アドタイ・デイズ2024春」を浜松町コンベンションホールで開催予定です。

全国133店舗を展開する雑貨店「PLAZA」から2022年、「女性の“こころ”と“からだ”を応援する」プロジェクトがスタートした。

オリジナルの生理用ナプキンやショーツなどの新ブランドを立ち上げた狙いやパッケージのこだわりについて、スタイリングライフ・ホールディングス/プラザスタイルカンパニーでプロジェクトリーダーを務める中村優希氏が語った。


写真 商品・製品 オリジナルの生理用ナプキンやショーツなどの新ブランド

コロナ下のキャリアの挫折、店舗休業がきっかけ


写真 実データ プロジェクトのステートメント
プロジェクトのステートメント。

「Nice to meet me!」は雑貨を扱う「PLAZA」らしく、女性の身体の健康や生理の本音にそっと寄り添っていきたいという思いで活動しているプロジェクトになります。「心と身体の健康と健やかな人生を送る大切さを考えるきっかけを提供したい」という思いから生まれました。


写真 人物 中村優希
中村優希(なかむら・ゆき)スタイリングライフ・ホールディングス プラザスタイルカンパニー 事業戦略本部 担当課長 兼 Nice to meet me!プロジェクトリーダー。2010年4月プラザスタイル カンパニーに入社。7年間の店舗勤務を経て2017年よりHealth&Beauty 課 バイヤーとして従事。その後、NYオフィス担当、MDディレクター、販促課課長を経て現職。2022年より「Nice to meet me!」プロジェクトをローンチ。

実は、コロナ禍だった2020年に私自身がキャリアで挫折を味わい、さらに2カ月ほど「PLAZA」の実店舗の休業期間もあり気持ちがふさぎ込むことが多くなりました。昔からPLAZAで扱う雑貨が大好きなのですが、当時はどんなにかわいいものを見ても心が動かされなくて。

そのとき初めて「かわいい」「わくわくする」というこれまでPLAZAが提供してきた価値は、心身ともに健康という前提があってこそ楽しめるものだと気付きました。その気付きが発端となり、私なりに女性の健康や心身にフォーカスし、お客さまとともに考えられるプロジェクトを立ち上げてみたい、と思い社内で自主提案をすることになりました。

その一方で、PLAZAはそもそも、お客さまもスタッフも女性中心であるにもかかわらず、生理用品を取り扱っていない状況でした。「PLAZAなら置いてあるはず」と急いで来店されたお客さまに、「生理用品ありますか」と聞かれ、「ありません」とご案内することが心苦しいという現場からの声も以前からあり、挑戦しなければならないカテゴリーという位置付けでもありました。

「生理中こそジャンクなお菓子が食べたい」本音


写真 商品・製品 オーガニック生理用ナプキン「The Week Sanitary Pad」
オーガニック生理用ナプキン「The Week Sanitary Pad」。

プロジェクトは、商品部のバイヤーや販促宣伝部PR 担当など、異なる部門で活躍しているメンバーで構成されています。また、社内モニターチームとして、アルバイトや契約社員、社員といった全てのレイヤーから希望者が参加した、総勢55名の「meet me! Club」も発足しました。

商品展開や接客など、店舗運営を行っている現場からの声を直接聞く貴重な機会となり、実際にさまざまなアンケートや座談会を行い、意見を商品企画にも活かすことができました。

そして、プロジェクトの企画第一弾として、PLAZA初のオリジナルパッケージのオーガニック生理用ナプキン「The Week Sanitary Pad」を2022年3月から、第二弾としてオリジナルサニタリー(生理用)ショーツ「SaniBuddy」を2023年9月からそれぞれ発売しました。

「The Week」ではお菓子やコスメ、雑貨を選ぶように生理用品を購入していただきたいという考えから、生理用品に思えないパッケージを目指して開発しました。「PLAZA」の世界観にマッチするパッケージであると同時に、生理用ナプキンであるという商品説明がわかりやすく見えるかどうかのバランスが苦労した点です。

また、プロモーションにおいて販促物を使って店頭で展開することができるビジュアルであるかどうかも重要視して開発を進めていきました。


写真 商品・製品 ノベルティとして配布したバッグ
ノベルティとして配布したバッグはナプキンだけでなく、お菓子も入る大きさに。

ノベルティのバッグにもこだわりがあり、「The Week」のほかにスナック菓子などが一緒に入るサイズとしました。理由はアンケート結果などを見ると、「生理期間中はポテトチップスやチョコレートが食べたくなる」という声があったから。

一般には「ハーブティーで身体を温めた方がいい」なんて言われますが、罪悪感を持ちつつジャンクなものを欲してしまうという女性の隠れたインサイトを反映しています。バッグに「The Week」と今食べたいお菓子を入れて、少しでも生理を楽しく前向きに乗り越えてほしいというメッセージでもあるんです。

ショーツのキービジュアル、どうデザインする?


写真 商品・製品 サニタリーショーツ

サニタリーショーツはこれまで、あまり能動的に選択されることがなかったアイテムだと思います。今回開発した「SaniBuddy」については、「これがいい!」と選んでもらいたいという思いを込めました。

「フェムテック」「フェムケア」が注目されていたこともあり、当初はナプキンのように吸水できる「吸水ショーツ」の開発を考えていたのですが今回は通常のサニタリーショーツとしています。というのも「meet me! Club」で座談会を実施した際、参加者の9割がまだ吸水ショーツを使ったことがなく、一方でサニタリーショーツについての悩みや不満をヒアリングすると改善の余地があることがわかりました。

加えてフェムテックの市場が先行するアメリカに出張し現地の市場調査を行ったところ、世界的に見ても吸水ショーツの存在感はまだそれほど高まっていないと確認できたことも決め手になりました。

パッケージについては、雑貨や化粧品が並ぶPLAZAで店頭展開しても違和感のないデザインを重視しています。実際に雑貨や化粧品の隣に商品を陳列した店舗の方が売上も好調でした。


写真 実データ オリジナルサニタリー(生理用)ショーツ「SaniBuddy」とキービジュアル
オリジナルサニタリー(生理用)ショーツ「SaniBuddy」とキービジュアル。

さらにキービジュアルを制作する際は下着そのものをどう見せるかに悩みました。モデルに着用してもらうことが必要なのかも議論し、撮影現場も女性スタッフのみで構成するなど配慮して結果的には着用したビジュアルを採用しています。発売後はPLAZA PASS本会員の方々の購買率も高く、顧客層にマッチした商品になったと考えています。

マラソン大会の女性トイレに設置も

また、今回のプロジェクトは店舗での販売以外にも広がりがあります。2023年3月開催の「名古屋ウィメンズマラソン 2023」では、コース内に340基ある仮設トイレの230基に生理用品ボックスを設置して、フルマラソンにチャレンジしようとするポジティブでヘルシーな女性たちをサポートしました。プロジェクトメンバーの1 人が実際にランナーとしてマラソンを走る際の悩みをきっかけに始まったものです。


写真 商品・製品 「名古屋ウィメンズマラソン 2023」の仮設トイレに設置した生理用品ボックス。
「名古屋ウィメンズマラソン 2023」の仮設トイレに設置した生理用品ボックス。

私たちは今後も、心と身体の健康について、多岐にわたった視野を持ちながら活動を続けていくつもりです。一見すれば関連性のないように思えるような企業の皆さんとも手を組んでいければと考えていて、新しい観点からのコラボレーションも進めていければと思います。

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