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電子機器の「リファービッシュ(整備済製品)」市場をつくる、仏発・新興企業のマーケティング戦略

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整備済のリユース商品のマーケットプレイスを運営

2014年にフランスで創業したBack Marketは、リファービッシュ製品(整備済製品)のグローバルマーケットプレイスを運営する新興企業だ。リファービッシュ製品とは中古品ではあるものの、専門業者が整備した状態で販売される製品で、同社では主にスマホを中心とした電子機器をリファービッシュして新品の3-7割程度の価格で提供している。

「これまでのテクノロジー製品はメーカーから消費者への一方通行の世界になっていて、そこから大量消費、大量生産、資源の枯渇、電子ゴミなど複数の社会課題が発生していた。これらの課題を解決するために事業をスタートさせたのがBack Marketだ。そこで、私たちは消費者が新品を購入することが第一の選択肢となっている現在の状況を変え、リファービッシュが新たな選択肢として加わった状況をつくりたいと考えている。その実現のためには、消費者に気づきを与えることが重要。それゆえメッセージ性が高い広告やコミュニケーションも展開している」と同社のトーマス・プーラン氏は述べる。

また同社では、こうした活動を通じて最終的には、循環型社会と修理しながら製品を使い続けることを通して人々をエンパワーすることを事業のゴールとして考えているのだという。現在、Back Marketはアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、スペイン、日本、韓国、オーストラリアなど計18カ国の市場で事業を展開。700名以上の従業員と1000 万以上の顧客を抱えている。

チャレンジャーをサポート、フランスの文化的素地も影響

2021年の世界の電子機器市場規模は180兆円。「そのうちリファービッシュ可能な電子機器の市場規模は150兆円」(プーラン氏)と言うが、実際のリファービッシュ市場は12兆円にすぎない。この状況に伸びしろを感じ、リファービッシュという市場にチャレンジする先駆者の立場としてこの市場を牽引してきたBack Market。プーラン氏は、こうしたチャレンジをする企業が誕生した背景には、フランスには世界的なビックテックのようなリーダーとして確立している存在よりも、チャレンジャーをサポートする文化的素地が影響しているのではないか、と指摘する。

「フランスにはプリュドムシンドロームという言葉がある。プリュドムとは有名なフランスのサイクリストで、現在はツール・ド・フランスのディレクターであるクリスティアン・プリュドム氏のこと。彼はツール・ド・フランスで1度も優勝をしたことがないにもかかわらず、素晴らしいコンペティターでありチャレンジャーであったことからフランスではとても人気があり、尊敬を集めている。このようにフランスには『チャレンジャー』を称える文化的要素がある」という。

だからこそ同社はフランス発のチャレンジャーとして世界市場に挑んでいる。「ビックテック企業は毎年のように消費者が新商品に買い替えるという習慣をつくっており、その状態が長く続いている。我々はそこにチャレンジャーとして新製品ではないオルタネイティブな選択肢のひとつとしてリユースの市場を開拓していきたい」(プーラン氏)。

2025年の日本市場での広告・マーケティング本格稼働を目指して始動

Back Marketにとって「リファービッシュ製品が少なくとも新製品と同様の良さ、あるいはそれを上回ることを実際に消費者に示すのが究極のゴール」と語るプーラン氏。同社が行っている製品の良さを伝えるためのバリューポジションには3つの柱があるという。「まずは価格。新商品に比べて最大70%は安く、入手可能な価格であること。次にサステナビリティの面で優れている。最後に新製品と同じだけの良さを持つクオリティを保っていること」と述べる。

「モノを買う時に価格やクオリティを基準にして選ぶというのは個人的な事情だが、サステナビリティを考えて購買決定をするというのは個人のレベルを大きく超えている、そこが当社のバリューポジションのユニークな点だ。また一言でサステナビリティと言っても、捉え方や抱かれるイメージは各国ごとに違う。Back Marketでは新興国市場では実際に事業はしていない。まずは規模のあるしっかりとした市場で確立させて、グローバルブランドになるということが先決だと考えている」と述べる。

2020年に東京にオフィスをローンチしてから3年。市場拡大トレンドを受け、日本法人取扱高は昨年比でおよそ 3-4倍となるなど順調に伸長している。社員も186名となり営業・マーケターの他、プロダクト・エンジニア・デザイナーも在籍、日本に向けたカスタマイズ開発を推進しているという。今後は「2025年の本格稼働に向けて着実な準備を行いたい。日本市場での関心度は高いと感じているが、バリュープロポジションが日本の消費者の方にきちんと伝わる、刺さる、日本の消費者の期待とマッチするか、確かめることが大事だ。問題が起きた場合はまず解決したい。日本は顧客に対するサービスの要求が最も高いことは理解している。この点も重視していきたい」と語る。

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写真 人物 プロフィール Back Market Vice President / マーケティング担当 Thomas Poulain (トーマス・プーラン)氏

Back Market
マーケティング担当 Vice President
Thomas Poulain (トーマス・プーラン)氏

2021年3月より、世界最大級のリファービッシュ(整備済製品)専門マーケットプレイスを展開する Back Marketのマーケティングオペレーションを統括するVice Presidentに就任。ブランド、パフォーマンスマーケティング、CRM、マーチャンダイジング、SEO、データ分析、PR、各種サービスを管理。Back Market参画前は、Googleに7年以上在籍し、パフォーマンスマーケティングのトップ、Eコマースのトップなどを歴任。