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広告とまちづくりを共存させる、壁画(ミューラル)を使った新感覚広告が躍進の予感

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「Mural(ミューラル)」という言葉をご存知だろうか。建物などの壁に描かれるアート全般を指し示すもので、いわゆる壁画のことを意味する。この「ミューラル」の活用事業を手掛けるのがWALL SHAREだ。CEOの川添孝信氏は、「アートと社会の距離を縮めたい」と話す。ミューラルと「広告」を掛け合わせることで生じる効果や、「ミューラル」が持つポテンシャルについて語ってもらった。

「壁画」が広告になる ミューラルが持つ新たな可能性

10代のころからミューラルを取り巻く文化に魅せられてきたという川添氏。自分が影響を受けたカルチャーを広めたい想いと、世界のアート市場が約9兆円といわれるなか、日本はその3%未満ほどにとどまっている現状を打破したいと考え、2020年4月にWALL SHARE を創立した。事業内容は「ミューラル」のプロデュースだ。同社は、つながりを持つ国内外120組以上のアーティストとタッグを組み、富士フイルムやヤンマーホールディングス、くら寿司をはじめとした大手企業からJR東日本グループ等の鉄道会社、行政まで、幅広い業種とのプロジェクトを行なってきた。これまでに手がけてきた作品は 130作品以上に及んでいる。

WALLSHAREが手がけてきたミューラル事例

そんなWALL SHAREが今注力をしているサービスが「WALL SHARE・AD」だ。壁画広告のことをいい、日本中からなにも描かれていない壁をリストアップし、独自に管理。これらを「空き壁」と呼び、広告媒体として活用することで、壁画の広告を実現している。

看板広告やWEB広告とは違い、建物の壁に直接描かれる壁画広告。これまでにない新たな新商品の広告、企業プロモーションとして期待が高まっている。

海外では壁画を活用した企業広告が盛んだ。その代表格の企業が、WALL SHAREが共同企画を進めるロンドンのミューラルカンパニー「Global street art」だ。同社のクライアント戦略責任者Ben Fishlock氏は、壁画広告の可能性について以下のように話している。

「15 年以上、主流の屋外広告と5000を超える「壁画以外」のメディアプランを担当してきましたが、ごく稀にメディアとクリエイティブが完璧に調和し、記憶に残る素晴らしい瞬間が生まれることがあります。それを生み出すのが壁画広告。従来の屋外広告や大判バナーなどの他のクリエイティブとの違いを示します。また、アーティストの活躍の場の創出のサポートする方法でもあり、現在ロンドンでは数多くの企業や団体が壁画広告を活用しています。

Global street artが手がけてきたミューラル事例

視認性とインパクトの相乗効果で露出アップ 人の流れも変えるミューラルの可能性

「WALL SHARE・AD」はクライアントから問い合わせを受けると、まずはプロジェクトの目的や方向性についてヒアリングを実施。その後、希望する展開エリアやキーワード・テーマに合わせて、最適な壁とアーティストを複数提案する。実施に向けて進められる方向に至れば、アーティストへ正式にオファーし、スケッチの作成を行う。基本的にはスケッチをもとにクライアントとイメージを固める。企画の準備期間は2~4カ月だという。掲載期間は1年間をベースとしているが、企画に合わせて柔軟に対応している。

WALL SHAREの代表的な事例のひとつがオーディオビジュアルブランド「AVIOT」の壁画広告(2022年)だ。東京都渋谷区の駐車場の巨大な壁を活用し、アーティストであるアイナ・ジ・エンドをモデルにしたミューラルが描かれた。20m以上の巨大なミューラルのインパクトは抜群で、各種メディアに取り上げられるなど、注目度も急上昇。日本ではまだ真新しいミューラルの新規性も相まって、渋谷のスクランブル交差点から徒歩10分ほどの少し離れた立地ながら、大きな話題を呼んだ。

オーディオビジュアルブランド「AVIOT」の壁画広告(2022年)

このビルの所在地は比較的人通りが少なく、周囲に目立つ広告物は存在しない。また、繁華街の看板広告と違って短期間で入れ替わることがないため、描かれてからは“街の一部”になるのもミューラルの特徴だ。川添氏は「広告を出す価値がないと思われていた場所だったが、ミューラルができたことによってSNS上でシェアされたり、テレビや新聞で掲載されたりして、人が足を運ぶようになった」と、広告宣伝効果だけでなく、人々の心にも届け、行動に変化をもたらしたことを実感したと明かした。

必要な道路許可など、制作に付随する申請も一括して担当。描く内容は、広告としてのクオリティーを保つと同時に、アーティストへのリスペクトを大事にしつつ、クライアントの想いに寄り添った作品の完成を目指してプロデュースを行う。

さらに、空き壁の所有者にとってはこれまで使っていなかった壁から収益を生み出せるようになり、さらに自分の物件がダイレクトにまちづくりに貢献していると実感できることも大きい。

WALL SHARE・ADのスキーム図

行政からの相談も増加 受け入れられつつあるミューラル

日本におけるアートをもっと身近な存在にしたいと考えている川添氏にとって、街を舞台にしたミューラルはかっこうの手段だ。「海外ではミューラルがカルチャーとして認知され、企業や行政が積極的に活用をしています。でも、その中に転写のポスターで話題を呼んでいるものは少ないと思います。手描きで生まれたものに対して、人の心は動く」と言葉に力を込める。

海外とのギャップはあるものの、日本におけるミューラルのポテンシャルは高いと感じさせられる。壁画広告の媒体になり得るいわゆる空き壁は日本中にあるし、さまざまな得意分野を持つアーティストとのつながりも強い。また、海外のアーティストからも日本のミューラル市場は熱い視線を送られているという。「アーティストはいろんな国に自分の作品を残したいという欲求がある人が多いのでしょうか。『日本でもミューラルを取り扱う人たちが現れたらしい』と、海外アーティストの中で話題になっているようです」と川添氏は笑う。実際、世界中のミューラルアーティストからの問い合わせが増えているそうだ。

また、行政からの相談が増加していることにも手応えを感じている。交通広告や看板広告とは違い、その場に残り続けることでコミュニケーションの起点となり、活性化や地域貢献にもつながる可能性を秘めている。アーティスト、クライアント、壁の所有者、そしてその街に暮らす人それぞれに好循環をもたらすミューラル。今春には、国を超えてミューラルが盛んなヨーロッパのある国の政府とのプロジェクトがスタートをする。川添氏は「日本でもミューラルを含むストリートカルチャーを築いてきたパイオニア的なアーティストが多く存在し、そのカッコ良さに憧れて今の僕はいます。しかしカルチャーとして世界に対して遅れをとっているのも事実。ミューラルを扱う企業として、企業における先駆者的な存在でありたい。もっとたくさんのアーティストが活躍できるステージをつくり、街にミューラルがあふれ、アートに触れる人が増えるのが僕の願い」と締めくくった。

ミューラルは描いていくプロセスをまちの人々に届けることができる
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川添 孝信氏

WALL SHARE代表取締役 川添 孝信

大阪体育大学卒業後、フォルクスワーゲンの新車営業にて全国セールス販売賞を3度受賞。
その後、クラウドワークスにて従事し、ベンチャーを共同創業。
ミューラルを日本に広めるべく2020年4月 WALL SHAREを設立。
問い合わせ先:WALL SHARE・AD