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LTVの向上を目指す、タカラトミーのSNSコミュニケーション戦略

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宣伝会議は2024年3月11日(月)~15日(金)の期間、「AdverTimes.Days(アドタイ・デイズ)2024(春)」を開催した。「アドタイ・デイズ」は、広告・マーケティングの実務者、多様な視点、構想、実績を持った講演者と共に、業界がその時々に直面する課題を提示し、解決の方向性を導き出していくことを目的とする、「講演者と参加者の共創を目指すハイブリッド型のイベント」。
 
「アドタイ・デイズ2024(春)」では、テーマを「Humanity 「人」と「思考」と「感性」-AI浸透時代のマーケティングとクリエイティブを考える-」と設定。テクノロジーの力でマーケティングが進化した時代、マーケター、プランナー、クリエイターに求められるクリエイティブとは?実務の世界のトップランナーとの議論を通じて、コミュニケーションビジネスにおけるクリエイティビティを再定義した。本記事では、「アドタイ・デイズ2024(春)」の中でも、注目のセッションをレポートする。
 
本稿では、創業100周年を迎えたタカラトミーのLTVを高めることを目的とするコミュニケーション戦略とその実践について、同社メディア戦略室室長兼D2C・CX戦略部部長兼デジタルコミュニケーション課課長の木村貴幸氏が解説する講演をレポートする。
グラフィック バナー アドタイ・デイズ

2024年に創業100周年を迎えたタカラトミー

当社は今年、創業100周年を迎えました。トミカやプラレール、リカちゃん、ベイブレードなど、0歳から大人まで楽しめるおもちゃを世界中で届けています。現在は中期計画でも掲げているように子供から大人まで、ライフタイムバリューを上げていくことを目指しています。

スライド 目指す方向

その一環として、どのようにお客さまにコミュニケーションを取るべきかを考えています。当社の顧客は90%が13歳未満の子供です。一方で購買者の80%は大人です。つまりプロモーションターゲットには、実際に遊んでくれる子供と、買っていただく大人の2つが存在することになります。

スライド 当社の顧客実態

購入者、使用者がどこで認知しているのか。当社調べでは購入者の50%が店頭、2番目が8%でYouTube、ホームページも8%。テレビCMが7%で4番目の認知経路になっています。SNSを見ているのは主に大人ですが、子供も5%は見ています。SNSが主要メディアであることは言うまでもなく、我々も積極的に活用しています。

顧客視点で整理すると、我々の顧客は多くのメディアを通じて情報を得ています。店頭は50%の認知がありますが、来店しないと認知されない弱点があります。調査では、お子さまがおもちゃ売り場に行く頻度は1カ月に1回程度だとわかっているので、来店を補完する役割をオウンドメディアに期待しています。当社はテレビCMを上回るオウンドメディアをすでに所有しているため、来店お店前の認知の向上を目的に、大人向けにはSNSを、子供向けにはYouTubeをさらに積極的に活用していこうと考えています。

LTV向上を目指し、タカラトミーが展開するSNS

スライド 目指すLTV向上

当社は0歳から大人まで各年代に合わせたいろいろな商品があります。小さい頃遊んだおもちゃからは一瞬離れるかもしれませんが、SNSではつながっていただいて、子供が産まれてまた戻ってくる。そんなライフステージや興味関心に合わせた心地よいコミュニケーションで体験価値を提供し、エンゲージメントを向上させたいと考えています。単純な「売り上げ向上思考」から、「顧客の体験価値・エンゲージメントを高める」に全社を挙げてマインドチェンジを図り、一時的な売上ではなく、長期的な収益基盤を作るという発想に立っています。

スライド 自社メディア整理

当社が運営するSNSを紹介します。まずはX、旧Twitterです。主に大人を対象に商品の情報、CM、キャンペーン情報を発信しています。フォロワー数は最新で40万人、年間インプレッションは9748万回と大きなメディアです。昨年の3月に開設したインスタグラムはフォロワー数は2.6万人と少ないですが、親向けのコンテンツを考え、配信しています。

公式YouTubeチャンネルはお子さまに見ていただけるようにトランスフォーマーやゾイドの映像を紹介しています。登録者数は155万人。玩具メーカーではナンバーワン、国内企業の中でも上位です。1年間の再生回数は2023年1年で2.5億回と多くの方に見ていただいています。

公式LINEは開設して2年が経ちました。商品情報やキャンペーン情報を大人、親向けに商品情報を発信しています。友だち数は43万人まで増えました。認知経路では3番目に位置しています。公式サイトでは全年代向けに配信していて、サイト訪問者数は2000万人、年間の表示回数は1.3億回とたくさん見ていただいています。それぞれのチャネルの特性を踏まえた役割分担をした上で、単なる商品訴求のためのカタログコンテンツだけではなくて、タカラトミーのブランドの価値を伝えるコンタクトポイントとしても活用していこうと考えています。

SNSの特性とライフステージに合わせた配信内容でファン化を促進

スライド SNS戦略

SNSの戦略について説明します。当社は、玩具メーカーということで心理的ハードルが低いので、まず見てみようと思っていただけるブランド力があります。こういったイメージを持っていただいている前提でいろいろなフォロワーやユーザーがタカラトミーのSNSやサイトを見に来ています。

フォロワーを分類すると「現在おもちゃを購入するお客さま」、「昔遊んだお客さま」、「お子供や孫との会話、プレゼント選びのために情報収集するお客さま」。という分類があると思っています。これらのお客さま像を意識しながら、オウンドメディアを通じて最適な情報を提供し、ファンを拡大させることを意識しながら行動しています。メーカー側の立場から属性を分類すると非購入、初回購入、リピーター、年間10万円以上買うような優良顧客、さらに進んでもファン、と分類ができます。SNSごとにターゲットやライフステージが異なるので、その微妙な違いを意識しながら投稿内容を考えています。

スライド SNS別ターゲット
スライド 目指すDX

皆さまの参考になればということで、各SNSの事例を紹介します。公式YouTubeで2023年視聴数が多かった第1位は「NEW!走れ!走れ!プラレール」で年間439万回再生されました。第2位が「トミカのまちつくっちゃおう!【トミカタウンの歌♩】」で391万回の再生でした。おもちゃそのものが登場し、動きがあるもの、お子さまが一緒に登場すると再生回数が伸びる傾向にあります。

スライド 公式Youtube
スライド 視聴回数ランキング

公式Xはスマホで見ることを前提に、最新情報をタイムリーに配信することを意識しています。視聴状況を見ると、16時以降の帰宅時間帯、時間的に余裕のある週末に視聴回数が増える傾向があるので、毎週金曜日の夕方に投稿を増やしています。昨年のエンゲージメント数トップは5月に発表した新しいベイブレードの投稿がインプレッション27万、エンゲージメント8.38%を記録しました。次が6月のおもちゃショーの情報。こちらもインプレッションが24万、エンゲージメントも8.26%。3番目のトランスフォーマーの動画紹介はインプレッションが7万2000と少ないですが、エンゲージメントが8.06%と高くなっています。

スライド 公式X
スライド Xエンゲージメントランキング

LINEは開封率が62%と高いことが特徴です。ターゲット別にセグメント配信ができるので、今、国内で一番情報通達力があるのがLINEだと思っています。お客さまが欲しい情報を入手しやすいように、ブランド別にリッチメニューを用意していることが特徴です。開封実績などを元にセグメント配信を行うことで必要な人に必要な情報を届けるようにしています。クーポン機能を利用したキャンペーンでは、参加者のUIDを獲得して、キャンペーン参加者だけのセグメント配信などでデータを活用しています。

スライド 公式LINE
スライド LINE活用施策

Instagramは子供がいる親向けということで、おすすめ投稿や新商品情報、How toの3つのジャンルを毎週二回、火曜と金曜に投稿しています。UGCの活用ではインスタグラムでの写真投稿を募集しています。メーカーが提供する綺麗な写真よりも、お客さま自身が撮影し、投稿する写真の方が説得力にもつながります。

スライド 公式Instagram
スライド UGC活用

お子さま向けのおもちゃの情報は「お子さま本人」「大人(親)」「大人(自分用)」と幅広いターゲットを意識して情報発信を行っています。オウンドメディアではブランドの浸透度が高く、費用も低く抑えながらファンの拡大、顧客と一生繋がる関係性を構築し、LTV向上を目指しています。

スライド 3世代おもちゃへ
スライド 顧客層の拡大

今日の話を聞いてご興味を持った方は、是非タカラトミーのSNSをフォローし、マーケティングの参考にしていただくとともにタカラトミーの製品のファンになっていただければと思います。

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【登壇者】

タカラトミー
メディア戦略室室長兼D2C・CX戦略部部長兼デジタルコミュニケーション課課長
木村貴幸氏

1997年株式会社タカラトミー(当時トミー)入社。営業、マーケティングなどの部門を経て、新規事業部門の責任者を10年経験し2022年から現在のメディア戦略室室長となり、現在は、TVCMなどのマスメディア、自社公式SNSの運用管理、自社ホームページの管理運営、自社EC運営、全社DX推進を統括している。