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自分の「市場価値」どう高めるか マーケターとして、マネージャーとして

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マーケティング責任者が考える、マーケターとして活躍するために必要な要素、そして採用面接で重視するポイントとは。トリドールHD執行役員CMOの南雲克明氏と、Uber Japan マーケティング部ブランド統括の鈴木あい氏が、マスメディアンのキャリアコンサルタント 荒川直哉氏とともに自社に迎え入れたいマーケター像について語った。

市場価値の高いマーケターとは

荒川直哉氏 まず、ストレートにご質問しますと、お二人は「市場価値の高いマーケター」とは、どのような人だとお考えですか。

南雲克明氏
トリドールホールディングス 執行役員CMOの南雲克明氏

南雲克明氏 当然ながら「成果を出せる人」です。そして、成果を出せる人というのは、「ターゲットのインサイトを見極める力を持つ人」なんですね。どのような企業や業界であっても欠かせない力ですので、転職をしても重宝されると思います。

荒川 なぜ、「インサイトを見極める力」が成果につながるのでしょうか。

南雲 マーケターは、株主や経営層と、さまざまなレイヤーでの「約束」をします。もちろん、「業績を上げる」ことが命題ですが、そのために「ブランドのパーセプションをつくる」「新たな価値を創造し、世の中に提案する」といった手立てと、その結果となる数字を「約束」するわけです。こうした約束を果たす上で、ターゲットのインサイトを見極める力は絶対に必要なのです。

鈴木あい氏 南雲さんのおっしゃるとおりだと思います。付け加えるなら、そのインサイトを理解するのに必要なのが、「コミュニケーション力」だと私は思います。

鈴木あい氏
Uber Japan マーケティング部ブランド統括の鈴木あい氏

荒川 どのような形で、コミュニケーション力がインサイトを見極めるのに役立つのでしょうか。

鈴木 相手にどのように伝えれば魅力的に思ってもらえるか、メッセージが深く届くのか。データを読み解くにしても、結局のところそのデータは人間の行動の蓄積ですし、マーケターが向き合うのは人間ですから。マーケターの本質はコミュニケーション力。共感力と言ってもいいかもしれません。

荒川 インサイトを見極める力、また、それを支えるコミュニケーション力や共感力。マーケターにとって本質的なスキルだからこそ、磨き上げることで、自然と市場価値が高まるということですね。

対談風景
マスメディアン 取締役 国家資格キャリアコンサルタント 荒川直哉氏(写真中央)

採用時のキラークエスチョン

荒川 お二人はマーケティング部門の採用責任者でもあります。採用時のポイントを教えてください。

南雲克明氏

南雲 CMOとして描いているマーケティングプランを達成するために必要な役割、スキルを持つ人ですね。仲間に加えることで、「目的地」にたどり着くまでのスピードがどれだけ早くなるか、ということも考えます。

鈴木 私も「この人がチームに加わることでどんな相乗効果が生み出せるか?」を考えます。

荒川 どんなことを尋ねられるのですか。

鈴木 必ず聞くことが二つあって。たとえば「あなたのスーパーパワーはなんですか?」ということを聞きます。「圧倒的に自信を持っていることは何か」ということです。チームでの仕事ですから、そこに何を加えられるか。

もう一つは、壁にぶつかったときのエピソード。困難を乗り越えた経験がある人は、周りに困っている人がいたら共感力を発揮してくれますから。

鈴木あい氏

荒川 先ほど話された「共感力」ですね。チームへの接し方、姿勢においても重要だと。

鈴木 そうですね。「これができればOK」といった、わかりやすいスキルにとらわれないことが重要だと思います。実際のところは、スキルを身に着けたり磨いたりすることには終わりがありませんし、学び続けられるかどうか。私自身、広告業界から転職して今に至りますが、学び直しからスタートしました。転職時点でスキルがないことは、さほど大きな問題ではないのではないでしょうか。

荒川 南雲さんはどんなことを聞きますか。

南雲 ひとつ挙げると「食が好きか」。結局のところ「好きこそ物の上手なれ」です。僕は食が趣味ですから、土日はもちろん、平日の夜のプライベートの時間もいろんなお店に行きます。繁盛店とか、話題のお店とか。好きだからこそ探求できる。これが大前提かな。

荒川 ほかのうどん店が好きな人ではなく、やはり丸亀製麺のユーザーを採用したいですか?

南雲 そのときの戦略で、ほかの会社の知見や考え方を取り入れたいと考えることもあります。でも、基本的にはうちの商品に偏愛ぐらいの人がいいです(笑)。そのほうがリアリティのある消費者インサイトをきちんとつかめるように思います。

鈴木 私も「思い入れ」がある人がいいです。仮に競合サービスの大ファンなら、「どうすれば競合のファンをウーバーに連れてこられるか」と聞くかもしれませんが……ただ、入社した後も「やはりウーバーよりも他社のほうが好き」なのだとしたら、その人はつらい日々を過ごすことになってしまいます。

南雲 カルチャーフィットも重要ですよね。

鈴木 そうなんです。本心から自分と自社の成長のためにがんばれる人って、やはりブランドと同じ価値観を持っていると思うんですよね。採用面接でも、「ウーバーでこんな挑戦がしたい」「もっと成長したい」と話す方のほうが、伸びるイメージが湧きます。

南雲 わかります。前職での上司や同僚、お客さまへのリスペクトが感じられる人は、当社に加わってもうまくいくだろうと思えますね。誰に対しても、リスペクトを持ってコミュニケーションが取れそうで。

荒川 計画の達成における一機能というよりも、自社にフィットする人間であるか、というところを重視されているのですね。

対談風景

採用後に見えてくる本当の力

荒川 「採用してよかった」と、入社後に感じることはありますか。

南雲 そうですねえ……採用って、とても重要で、とても難しい。「マーケティングで売上を伸ばせ」と言われる方が、ずっと簡単に思えるくらいです(笑)。

荒川 やはり面接では「成果が出せる」かどうか、わからないですか?

南雲 「本当のその人」が見えてくるのは、面接どころか、OJTが終わって、自立して仕事を進め始めたときだと思います。

特に鈴木さんがおっしゃった「コミュニケーション」。改めてですが、本当に大事です。他部門との円滑なコミュニケーションは、マーケティングで成果を出すための必須条件ですから。

南雲克明氏

荒川 やはり、より本質的な部分の見極めが重要なのですね。成果を出すためのコミュニケーションでいうと、たとえばマネージャーの評価についてはいかがでしょうか。

というのは、経営層や人事の方から、「マネージャーが部下の面倒を見ず、自分自身がプレーヤーに走ってしまう」という悩みを伺うことがあります。これも、コミュニケーションの一面だと思いますが。

鈴木 「自分が一番できるから」といって、すべてを一人でやろうとしてしまうのは、新任マネージャーにありがちなことです。ですが、チームでやったほうがアウトプットできる量が増えます。それに、まったく違う強み、視点が集まることでパワーアップもする。マネージャーはそこに目を向けて、メンバーの強みを引き出すことを第一に考えてほしいです。

荒川 だから、鈴木さんは一人ひとりのスーパーパワーを大事にしているのですね。

鈴木 はい。先ほど、南雲さんも「好きこそものの上手なれ」とおっしゃっていましたが、得意なことは誰しも集中でき、モチベーションも高い。お互いに得意なことを認めれば、リスペクトする空気が生まれ、自信にもつながります。それが一番サステナブルな気がしますね。

キャリアの指針となるビジョン

荒川 ご自身としては、どのようなマーケター人生をお考えですか。

南雲 僕は、トリドールのマーケティングチームを、外食産業のなかで日本一にしたい。本気で目指しています。そして、「外食のマーケティングで一番成果を出す人は誰だ?」となったとき、僕の名前が挙がるようにがんばりたいですね。

今、マーケティングの手法は、人事や採用をはじめとするさまざまな領域に広がりつつあります。だから、既存の枠にとらわれず、マーケティングの力で誰もやらなかったような成果を上げたいと思っています。

鈴木あい氏

鈴木 私は、UberやUber Eatsというブランドを、日本のカルチャーにしていきたい。日本は食文化が豊かですし、可能性を感じています。夢みたいなことを言うと思われるかもしれませんが、そこを目指したいと思います。

荒川 お二方とも、明確なビジョンをお持ちなのですね。

南雲 野心は大事だと思います。採用やマネジメントに携わってきて思うのは、野心がある人は伸びる、リーダーになれるということ。こうなりたい、こういうポジションに就きたい、この人みたいになりたい。そういう欲を持った人の方が絶対に育つ。

そういう人のほうが、人間としても面白いじゃないですか。だから、一緒に仕事をしたくなる。周りにそう思ってもらえると、マーケターは強いですよ。

鈴木 ビジョンがあれば、その実現に向かって進んでいけますからね。明確に行きたい場所があるなら、言語化した方がいい。口にしなければ、誰にも伝わらないですから。こうなりたい、こうしたいって言い続ければ、力を貸してくれる人が必ずいると思いますよ。

荒川 マーケターとして「約束」したことを、他部門やチームと連携しながら成果につなげていく、ということと、根本を共にすることのように感じます。まだまだ話はつきませんが、また場所を改めて、ぜひ続きを伺っていきたいと思います。本日はありがとうございました。

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集合写真