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産学連携プロジェクトで見えた、交通広告のプランニング・価値の示し方

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東京メトロの広告媒体社であるメトロアドエージェンシーは太陽工業、東京国際大学と「交通広告の価値」を産学共同で研究した。移動時の心理・感覚が広告認知に与える影響を分析し、掲出場所ごとにふさわしい広告内容を検証。学術・広告主・広告会社の三方向から研究を振り返り、交通広告の可能性を探った。

写真 人物
左から)東京国際大学 商学部 教授 平木 いくみ氏、メトロアドエージェンシー ビジネス開発局 ビジネスプロデュース部 山田凜子氏、東京国際大学 商学部 平木ゼミ 関口広人氏・菊池健太氏・石川紗衣氏(調査当時3年生、2024年4月1日より4年生)、太陽工業 執行役員 八木祥和氏

センサリーマーケティングで交通広告の体験価値を検証

―自己紹介をお願いします。

山田:メトロアドエージェンシーの山田と申します。東京メトロの広告媒体社として、今回のプロジェクトを企画立案しました。

八木:太陽工業の八木です。当社は東京ドームなどの膜構造建築物の設計、製造、施工を手がける会社です。今回の検証に広告主協力というかたちで参画しました。

平木:東京国際大学の平木です。本研究ではメトロアドから依頼を受け、ゼミ生とともに研究いたしました。

石川:私たちは平木ゼミの学生として、メトロアドと太陽工業それぞれの目的と課題をヒアリングし、仮説立案から、実際の調査・分析まで担いました。

―今回はなぜ、産学共同で研究することになったのですか?

山田:移動中に接触する広告の体験価値を検証するためです。交通広告・OOH業界は「視認エリアに何人いたか」「広告を視認したのは何人か」といったメジャメントの標準化を進めています。さらに、他メディアにはない独自の体験価値を実証すべく、学術的なアプローチを図りました。

平木:私の専門である消費者行動のセンサリーマーケティングの観点から研究しました。ゼミ生とは交通機関や地下鉄の特徴、利用者の移動中の心理状態から話し合いました。

八木:そもそもなぜ、学生さんと考えることになったのですか?

山田:交通広告の捉え方には世代別で違いがあるためです。以前、世代別でフォーカスグループインタビューをしたのですが、「中づりポスターで見た雑誌を駅売店で購入経験がある世代(X世代)」「デジタルサイネージ(動画)やスマホに没入していた世代(Y世代)」に対し、Z世代は「満員電車の経験が少なく、応援広告など広告を企業だけのものではないと感じている世代」で、捉え方が全然違いました。時代とともに交通広告も変化していく必要があります。そのため、若い世代に考えてもらうことに価値があると考えました。

―交通広告に求めることは?

八木:最重要はコストパフォーマンスですね。交通広告は効果がわかりづらい点を懸念していました。

山田:その点は課題として認識しています。

八木:学生のみなさんは電車移動時、(車内や駅を問わず)どのように過ごしているのですか?

関口:僕はスマホをポケットに入れて、音楽を聞いています。なので、広告が目に入ることも多いです。

石川:スマホを触っていない時は広告が目に入ります。特に、ひとりで移動している時は掲出されている広告を見ていることが多いと思います。

菊池:ほとんどスマホを見ていますね。ただ、広告で知らない企業や気になったことがあればその場で検索します。何でもすぐにスマホで調べるので、その契機を交通広告が与えてくれると嬉しいです。

「駅階段の昇降感覚」と「地下の明暗感覚」に着目

―早稲田駅で調査されたと伺いました。調査内容はどのようにして決めたのでしょうか?

平木:地下鉄は、階段移動が伴い、地上とは心理状況が異なります。そこで第1弾は、スマホ利用が少ない「階段移動時」の昇降感覚に焦点をあてました。

菊池:企業プレゼンをするため、仮説案のプリテストは学内で何回も実施しました。

石川:検証ポスターには東京国際大学の広告を用い、屋外・屋内それぞれの階段で移動中の学生にアンケート調査をしました。屋外・屋内、ポスターデザインによる違いなど、色々と比較検証しました。


写真 学内でのプリテスト

写真 早稲田駅での調査
学内でのプリテスト(上)を経て、早稲田駅での調査(下)に至った。

―第2弾は、車内デジタルサイネージでの検証をされるそうですね。

平木:地下空間で生じる「暗闇感覚」に焦点をあてました。地下も電気で明るいですが、地上との感覚に違いが生じることがわかっています。

関口:プリテストでは、大学の教室でブラインドの開け閉めで比較をしました。人は暗闇では不安になり刺激や明るさを求め、過去より未来を訴求したクリエイティブに注意が向く結果になったので、「地下の車内では未来志向のクリエイティブが効果的である」という提案をしました。

山田:移動中の心理・広告接触シーンを切り取ったアイデアは気付きでした。今後も色々なシーンで検証することでノウハウを蓄積できるため、調査案として採用いたしました。

八木:私も非常に面白いと思いました。当社が提供する「膜」でも似たような感覚のことが言われていたからです。膜は透光性があり自然光を差し込んだ空間をつくれるのですが、例えば、膜構造の建物内で実施されるイベントは不思議と盛り上がる傾向にあります。温かみを感じ、開放的な気分になるからだと思うのですが、地下鉄でも同じように感覚の違いがあることは納得がいきました。

検証を積み重ねて、ファクトに基づいた提案を

―今回の検証結果を通して、交通広告には今後、どのようなことが期待できますか?

八木:実証実験を通した立証はとても意義深いと思います。広告主の立場としては、ファクトに基づいたご提案のほうが、俄然、乗りやすいです。今後は、今回の検証で見えた価値・効果を定量化してくれるとさらにプランニングしやすいですね。

平木:今回は階段(昇降感覚)と空間(暗闇感覚)に焦点を当てましたが、他の感覚経験についても十分に面白い知見が期待できます。研究を一つひとつ積み重ねていくことにより、総合的に交通広告の価値向上に寄与できると考えます。

山田:学生さんたちに研究をしていただいたことは大きなポイントでした。私もZ世代ですが、フレッシュな学生さんに「自分だったら、どうしたら広告を見るのか」と丁寧な仮説検証をしていただけたことで、新たな学びとなりました。今後は八木さんと平木さんのコメントのとおり、積み重ねが大切だと感じています。今回の研究を契機に「交通広告・OOH全体が体験価値の体系化」に向けて動くと良いなと思っています。

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お問い合わせ
株式会社メトロアドエージェンシー
ビジネス開発局 ビジネスプロデュース部
山田、高澤

URL:https://www.metro-ad.co.jp/inquiry/other.html