「宣伝会議のこの本、どんな本?」では、当社が刊行した書籍の、内容と性格を感じていただけるよう、「はじめに」と、本のテーマを掘り下げるような解説を掲載していきます。言うなれば、本の中身の見通しと、その本の位置づけをわかりやすくするための試みです。
今回は、3月26日に発売した新刊『クリエイティブ・サイエンス』(松井正徳箸)の発売を記念して「はじめに」を紹介します。
「クリエイティブ」と「サイエンス」
この2つは「水と油」のように相反する2つの要素のように見えるかもしれません。でも実は、その2つは非常に近いんです。
例えばテレビCMやビルボード広告。
世の中にあふれる気の利いた言葉や気になる映像。
一見すると、それらは純粋な感性の世界、アートの世界に見えます。
もともと、あらゆるコミュニケーションは、「目的」 を持っていて、そこには 「科学」 が存在するのです。その科学的なコツを応用すれば、誰でも簡単なクリエイティブは制作可能です。意外なことに、クリエイティブを科学の視点から体系的・論理的に著述した本というのはほとんどありません。この理論は、全く新しい考え方ですが、この本の筆者である私、松井正徳がそれを考案したことは、ある意味で自然なことでした。
私は大学時代を理系として過ごし、核物理などにも触れていました。そこで徹底的にロジカルな思考法を学び、のちに広告代理店である博報堂に就職しコピーライターとなりました。だからこそ、「理系と文系のハーフ」というか、「論理と感情の通訳」のようなスキルを身に着けることができました(自分で言うのもなんですが)。その視点から言うと、素晴らしい表現の根底には、美しいシステムがあるのです。普通、広告で科学というとマーケティング方向が多いですが、クリエイティブにこそ科学が求められています。
「よいクリエイティブとは何か」を科学的に分類し、実践する。「感性」や「なんとなく」ではなく、「明確な効果」をめざすクリエイティブ。
それがクリエイティブ・サイエンスです。
そのコツをつかめば、誰でも簡単なコピーは書けるようになりますし、コピーライターであれば、自分の作風を超えたコピーが書けるようになります。また、企業の宣伝部などコミュニケーションを業務とする方たちにも「面白さとは何か」という不明瞭なことについて、言語化して議論するベースとして活用いただけます。公式SNSやオウンドメディアの運営にも役立ちます。
広告をベースとして生まれたクリエイティブ・サイエンスですが、これは、日常のちょっとした瞬間にも活用できます。急に結婚式のスピーチを頼まれて、なにか言わねば、というときにも…役立てばいいなあと思います。
『クリエイティブ・サイエンス ココロを動かす11の手法』(松井正徳箸)
「感性」や「なんとなく」ではなく、「論理的な説明」と「明確な効果」を目指したい。本書は、そう考える人に贈る表現の実践書です。11の手法の特徴をしっかりとつかむことで、例えば人によって感覚の違う「面白さ」についても、言語化して議論しやすくなります。またクリエイティブの現場で方向性や手法、効果などに迷いが生じたとき、この本で示す手法は関わる人たちが議論をする上で共通マップとなり、進むべきルートを示すものとなります。
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