三菱ケミカル・クリンスイの浄水器ブランド「クリンスイ」は、俳優・水川あさみさんを起用したテレビ CM『Cleanと、Cleanで、クリンスイ。』「ミネラール」篇、「W(ダボー)」篇、「ごはん」篇の放映を3月15日から開始した。
CMに登場するのは、白衣を纏った水川あさみさん。クリンスイの水の研究・開発を担う水博士を演じている。「水博士の水川です」と自己紹介をし、身近でありながら実はあまり知られてない水の話を軽快に説明していく。
実はクリンスイが著名人を起用し本格的にテレビCMを展開するのは、数十年ぶり。3年前から同社のコミュニケーションに携わってきた前田屋 プロデューサー 前田博隆氏は次のように振り返る。
「当時、クリンスイさんは外部のブランドディレクターの福田春美さんと共に、インスタやブランドサイトではとても丁寧なコミュニケーションをしていましたが、マス広告は展開していませんでした。福田さんからWebムービーの相談をいただき、ヒアリングを進める中で、認知度を高めるべく、いずれCMを考えているということをクリンスイさんから伺いました」
ブランドとして伝えたい強いメッセージはあったが、CMは高額なメディア費が必要であり、継続しなければ効果が出ないという難しさがある。そのことを鑑みて、当時、前田氏はWebムービーではなく、新聞広告を提案。2009年にクリンスイのCI計画グランドデザインをプロデュースし、現在に至るブランドイメ―ジをつくりあげたグラフィックデザイナー 佐藤卓氏と共に新聞広告を制作したのである。水がイメージされるビビットな青と赤いCIが象徴的な新聞広告は反響を呼び、同社にとってマス広告の第一歩となった。
「当初、まさか佐藤卓さんにお願いできるとは思わず新聞広告を提案していましたので、自分の想像以上に強いものに仕上がり多方面から反響をいただけたのは良い流れでした」
その翌年、同社の課題を再度整理し、テレビCMの検討を始めることになった
「本当にCMなのか?は、常に念頭におきながらプロジェクトをスタートしました。浄水器は水道水を安全で美味しくするというライフライン的な要素もあるので、『認知度』が重要なのは肌感としてはありましたが、そもそもこの時の広告費全体がマス広告をするような規模ではなかったので、費用感の共通認識が課題でした」
CMとなると、制作費もメディア費も新聞に比べてかなり高額になる。どうすべきか、議論を重ねて出した結論は、関西エリア限定で1ヶ月だけオンエアするというトライアルCMだった。KPIは、その時の「検索率を上げる」こと、そこでの「学びを得る」こととし、企画はあえてそれに合わせてクリンスイのイメージを伝えつつも販促的な内容にした。
シンプルな企画だったが、想像以上にCMの効果はあり、関西エリアでは大きな営業支援にもつながった。久しくマス広告を経験したことがなかった同社だが、少しずつCM効果の理解を深めていった。
そして3年目を迎え、再びテレビCMの話が浮上。
しかし、予算の話がクリアしたわけではない。どう広告費を生み出すか、社内調整、社内承認までのプロセスをクリンスイ担当者、ブランドディレクター、前田屋の3社で徹底的に議論。前田氏も、いろんな部署から賛同を得る必要があり各事業部署に個別にヒアリングを開始した。そこで課題を聞くことで、CMプロモーションを本当に実施する必要があるのか、フラットに意見交換をする場にもなった。そして2023年秋、ようやく各部との話し合いが終わり、各部が個別で抱えていた課題も明らかになった。そこで着目したのが、クリンスイの飲料用の浄水器には必ず入っている「中空糸膜」と「活性炭」という2つのフィルターだ。
「このダブルのフィルターを通すことで『残留塩素』や『雑菌』を除去し、安全に美味しい水になります。そこで、ひとまず企画するならこのダブルのフィルターを根っこにしよう、と。これを中心にCMをやっていけば、社内承認も進められるだろう、という思いでした」
これまでの制作過程において広告会社は入っておらず、CDも営業も不在。前田氏がすべてを理解した上でまずはタタキをつくり、クライアント、ブランドディレクターと議論を重ねて、コミュニケーションを設計している。
そして本格的に制作が決まり、クリエイティブチームを編成。まずつくったのが、コミュニケーション全体をまとめる「Cleanと、Cleanで、クリンスイ。」というキャッチフレーズだ。コピーライター 小藥元氏に依頼し、この1案でプレゼン。2つの「Clean」は、「中空糸膜」と「活性炭」を表現している。
「このコピーだけでは『Clean』が『中空糸膜』と『活性炭』とは伝わりませんが、今後のコミュニケーションの中でこのコピーを育てていくことで、クリンスイが他商品と差異化しながら成長できると説明しました」
そして認知度を上げるために、著名人を起用したCMを提案。ブランドディレクター 福田さんから候補として名前があがったのが、水川あさみさんだった。役者としての知名度や人気だけではなく、食生活を大切にしていることが決め手となり、前田氏が直接交渉。企画を見せながら話し合いを進める中で、「水博士の水川あさみです」の企画にまとまっていった。
演出は、水川さんが出演しているデリカミニ(三菱自動車工業)のCMも手がけている小島淳平監督に依頼した。
「シンプルな企画はとても難しく、タレントの印象だけが残るタレントCMにならず広告としての癖付けが欲しくて。一緒に仕事をするのは初めてでしたが、小島監督はタレントを最大限に使いながら、しっかり広告に落とすのがとてもうまいと思っていました」
CMで伝えたいことは、「Cleanと、Cleanで、クリンスイ。」というメッセージと共にWフィルターというファクト、そして「安全」「ミネラル」「環境に良い」という3つのベネフィットだ。
「小島監督に依頼した時点でファクトは決まっていましたが、どのベネフィットを選ぶかは決めていませんでした。自分の役割はクリエイティブの環境づくりが主で、信頼できるディレクターが良いと思う方向に自分もクライアントも寄せていきたいという思いがあったので、監督がチョイスした『ミネラル』に乗っかりました」
そしてできあがったのが、「W(ダボー)」というファクトと「ミネラ~ル」というベネフィットが独特の言い回しで印象に残る「W(ダボー)」篇と「どちらが」篇だ。「ごはん」篇は当初予定していなかったが、小島監督の提案で制作することに。このCMによって、飲み水だけではなく、食事という一つ先のリアルなベネフィットを伝えることができたという。
予算の関係もあり、オンエアは決して多いとは言えないが、社内外から好評を得ている。
「オンエアはまだ少ないですが、浄水器業界では著名人を起用したプロモーションは話題になっており、またインナー効果もあり今後の営業支援にもなりますので、継続してCMプロモーションをできればと思っています。浄水器は社会的なメリットも大きいと思うので、浄水器業界全体が盛り上がっていければと思っています」
同社では、特設サイトもオープン。ここではCMの紹介のみならず、クリンスイの特徴などをビジュアルで伝えている。今後は、このメッセージを店頭でも展開していく予定だ。
スタッフリスト
共通
- 制作
- 前田屋
- ブランディングディレクター
- 福田春美
- Pr(全体統括)
- 前田博隆
- 全体制作
- 檜山永梨香、篠塚薫
- 制作応援
- 赤星美保
- C
- 小藥元
- AD
- 古谷萌
- PR
- 川村美帆
- 出演
- 水川あさみ
CM
- 演出
- 小島淳平
- 助監督
- 木村昌嗣
- 撮影
- 木寺紀雄
- 照明
- 柴田亮
- 美術
- 三ツ泉貴幸
- FOOD、ケータリング
- 寺本りえ子
- ST
- 岡部美穂
- HM
- 岡野瑞恵
- ネイル
- 関根祥子
- 録音、MA
- 小松徹
- 編集
- 小暮好成(オフライン)、坂本由紀夫(オンライン)
- カラリスト
- 田中基
- 音楽
- 山田勝也
- SE
- 田中宏峰
Web
- AD(LP)
- 唯木友裕
- 編集
- ミトミアキオ
- ライター
- 高野瞳
販促物(小冊子/店頭)
- AD
- 飯田将平
- 編集
- ミトミアキオ
新着CM
-
クリエイティブ
BOVAグランプリに「Let’s ギューリッシュ」 短尺・縦型増加で...
-
クリエイティブ
世の中を変えようと挑戦する起業家をヒーローに――2023ACC賞審査委員長が語る
-
AD
宣伝会議
【広報部対象】旭化成のグローバル社内イベント成功事例を紹介
-
クリエイティブ
「これでいいのか?」これからの広告(東畑幸多)コピー年鑑2023より
-
AD
広報
AI活用で広報活動はどう変わる?プラップノードが「PR-AI Day」を開催
-
コラム
語り出すと止まらない!櫻坂46の魅力(遠山大輔)【後編】
-
特集
「宣伝会議賞」特集
-
販売促進
ファンタジー好きに訴求するグミ カンロ、空想の果実をイメージした新商品
-
販売促進
横須賀市、メタバースで観光誘致 AIアバターの実証も開始