メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×

「一言日記」のような言葉で心を捉えるルミネのコピー、約20年続く理由

share

季節の訪れを伝えるみずみずしいビジュアルと時代に軽やかに切り込み、ハッとさせるコピー。新宿、大宮、横浜などJR東日本ターミナル駅に直結する商業施設「ルミネ」の企業広告は、2007年から約20年弱かけてその「らしさ」を確立させてきた。移り変わっていく時代の中で人の心を捉え続けるコピーは、どのようにして生まれているのか。
※本記事は月刊『ブレーン』2024年5月号「長く愛される企業になる広告・デザイン」に掲載している内容から抜粋しています。
詳細・ご予約は《こちら》※Amazonページに移行します。

どんな「ハロー!」なら届くだろう?

ルミネが企業スローガンとして、尾形真理子さんによるコピー「わたしらしくをあたらしく」を掲げたのは2005年のこと。尾形さんはその後の2007年から、企業広告のクリエイティブディレクターを務めている。

当時から一貫しているのは、ひとりの女性が登場し、そこにパーソナルなコピーをのせること。「一般的に正しいとされていることもいいけれど、もっと小さな言葉も大切なんじゃないかと思ったんです。すごく個人的で発したことのない言葉や気持ちでも、皆が思っていることなら普遍になりますから。

それをふまえて、今の世の中で、どんなひとりごとなら見たいだろう?どんなメッセージに共感してくれるだろう?と考えながら、ルミネから世の中への『ハロー!』という挨拶を考えてきました」(尾形さん)。

そうして生まれてきた、「試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。」(2008年)、「風はすべて追い風。わたしがどこを向くかだ。」(2014年)、「わたしの夢を奪うわたしになるな」(2019年)、「心を着替えて、今日を進め。」(2020年)といった名作の数々。企業を主語に大義を語る広告が一般的とされる中で、「わたし」を主語に個人的な思いを語る広告に、当初は「女の子の一言日記のような、これが広告なのか?」と疑問視するクリエイターからの声もあった。

実データ グラフィック 「試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。」(2008年)タブロイド紙『WWD』掲載
「試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。」(2008年)タブロイド紙『WWD』掲載。

それでもそのパーソナルな言葉の持つ力を信じて広告を続けることで、その時ごとの人々の心に引っかかり、ルミネの広告というひとつのジャンルを確立してきた。

「なぜ続けられているのかと聞かれれば、これは忖度なく、クライアントであるルミネさんが100%えらいと思います。お客さまと本気で向き合いたいと、皆が自分らしくあることを後押ししていきたいと真剣に考えているんです。だから、広告効果が数字で表れてしまうこの時代に、それだけで判断をせず、どんな『ハロー!』なら伝わるかということを真摯に考えてくれています。

一方で、私がどうして続けているかといえば、その答えがずっとわからないから。これで繋がれる人がいるかな?と恐る恐る世に問いかけている気分です。今になっても、チームのみんなと毎回とことん苦悩しています」(尾形さん)。

下心にあるのは「励まし」と「刺激」

毎回の広告制作は、ルミネ側からのシーズンテーマの説明から始まる。「テーマはいつもすごく普遍的な大きいもの。それを、今どんな解釈で、どんな言い方をしたら伝わるかと考えるのが私の役割です」と尾形さんは話す。

「届けたいターゲットとしては、『自己形成に刺激と励ましがほしい層』と考えています。小さなきっかけでも素敵になれる、それを後押ししてほしい、という人がルミネにショッピングに来ると思うので。なので、広告はそんな人たちが『わたしらしくをあたらしく』したい、つまり『自分らしさを拡張したい気持ちになる』ようなものにしたいと考えています」と、尾形さん。

たとえば2024年春の広告、「その感情に反射して目の前が色づく。」のテーマは「The Time is Now“今”を生きる」だった。

実データ グラフィック 「その感情に反射して目の前が色づく。」(2024年)朝日新聞15 段広告
「その感情に反射して目の前が色づく。」(2024年)朝日新聞15 段広告。

忙しない日々の中で、目先の課題を片付けることに支配されたり、周りの人の意見に意識が行ってしまったりする人に向けた、「今、自分が何をして、何を感じるのかが重要ではないだろうか」というルミネからの問いかけだ。これをもとに尾形さんはこう考えた。「何かを見ているとき、その見え方は実は自分の気持ちに寄るのではないか、というところから考えました。

見慣れた路地でも、雨上がりならば美しい世界の始まりかもしれない。そんな風に世界の見え方が変われば、あなたの世界が広がるかもしれない、と」。企画の際に大切にしているのは、「励まし」と「刺激」の両方を感じさせることだという。「励ましだけだと偽善的だし、刺激だけでも無責任でついていけない。広告の“下心”として、このふたつをほどよく編み込むことを意識していますね」(尾形さん)。

 

……続く内容は、「『個人の思い』の見つけ方」「大事なのは、浮き沈みはあっても、沈まないこと」などです。

続きはぜひ誌面でご覧ください(ご予約・ご購入はこちら)。デジタル版の記事も、ご購読で続きがお読みいただけます。

advertimes_endmark

月刊『ブレーン』2024年5月号

【特集】「長く愛される 企業になる 広告・デザイン」

書影 月刊『ブレーン』2024年5月号

詳細・ご予約は《こちら》※Amazonページに移行します。

▼特集のトピックス

  • 「個人的な言葉」も
  • 共感が集まれば「普遍」になる
  • ルミネ
  • 「家族の真ん中には何がある?」
  • 東京ガスが家族を描いてきた理由
  • 東京ガス
  • 変わる時代の変わらない
  • “パルコらしさ”とは
  • パルコ
  • 「ペコちゃん」が
  • ロゴマークに変わったわけ
  • 不二家/不二家洋菓子店
  • 「時代と握手をし続ける」
  • ために必要な“普通”の感覚
  • リクルート『ゼクシィ』
  • しっかり届けて
  • 成果を出すBtoB広告
  • 並走の仕方
  • クボタ
  • 「愛されるには
  • 他とは違う“個”として
  • 認識されること」
  • SNS時代の企業広告の考え方
  • IHI