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デコンストラクションで浮かびあがった9つの視点(木村健太郎)~『世界を変えたクリエイティブ51の戦略とアイデア』によせて

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『宣伝会議のこの本、どんな本?』では、弊社が刊行した書籍の、内容と性格を感じていただけるよう、本のテーマを掘り下げるような解説を掲載していきます。言うなれば、本の中身の見通しと、その本の位置づけをわかりやすくするための試みです。今回は、本年度カンヌライオンズにてDigital Craft審査員長を務める木村健太郎氏が、『世界を変えたクリエイティブ51の戦略とアイデア』を紹介します。

とてつもなく美味しい料理に出会った時、あなたは目をつぶってひたすら感激しますか、それともどんな食材をどう調理したのかを解明したくなりますか。

ぐっとくる音楽に出会ったとき、あなたは頭を空っぽにして踊りだしますか、それともこの快楽がどう生まれているのかの法則を発見して、それを上回る楽曲を作りたくなりますか?

後者のように、何か素晴らしいものに出会ったときに、素直に感激するだけではなく、”WHY?”と自問自答を始めてしまうのは、クリエイティブに関係する職に染み付いている性。これを「デコンストラクション」といいます。設計図から完成品を作るのが「コンストラクション(構築)」だとすると、デコンストラクションはその逆で、完成品を見てどんな設計図からつくられたのかを「脱構築」する思考です。

僕も若い頃、仲間で集まって、世界中の優れた広告を見てみんなでああだこうだ分析する「デコン会」を定期的にやっていました。実はカンヌライオンズなどの国際広告賞の審査員は、膨大な作品を見て、そのどこがどう優れているのかを瞬時にデコンストラクションして言語化する(しかも英語で)作業をしているのです。

さて、デコンストラクションで面白いのは、その切り口が人によって様々に異なることです。僕はコミュニケーションの手口を人間の本性で類型化したがるタイプですが、ストーリーを心理学的に構造化するのが上手い人もいれば、ビジネスの技法として語るタイプの人もいます。

そんな中、本書はPR視点で類型化している本です。ブランドが世の中とどう出会い、どう対話し、どのようにして共感と合意を形成するのかという切り口で、カンヌライオンズの歴年の代表的な受賞作を次々とデコンストラクションしていきます。

そこで浮かび上がった9つのPRの手口を、本書ではなんと花束を贈る行為に例えて、花言葉で類型化しています。キキョウの花言葉は「誠実」で、ゼラニウムの花言葉は「よきせぬ出会い」。くーっ。井口さんはロマンチストだなー。もしかしてクライアントに花束でプレゼンしてたりして。つくづくPRパーソンはキザだなー。なんて思いながら読みました。

実はこの本でもうひとつすごいのは、紹介している受賞作品がQRコードを読み取るだけで日本語字幕付きの映像で見れてしまうこと。もう英語でつまずくことはありません。これだけでも十分もとが取れます。

古今東西の広告作品を楽しく見ながら、PR戦略と花言葉が学べちゃう、そんな本です。

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木村健太郎
博報堂 執行役員/インターナショナル・チーフ・クリエイティブ・オフィサー 
博報堂ケトル ファウンダー

大学休学中のバッグパッカー世界一周旅行がきっかけで、新しい価値観との出会いこそが人を幸せにすると思い博報堂に入社。ストラテジーからクリエイティブ、デジタル、PRと領域を広げ、2006年「手口ニュートラル」をコンセプトに博報堂ケトルを設立。共同CEO兼ECDとして革新的な統合キャンペーンを数多く創出。Adweek世界のクリエイティブ100人に選出。2017年から博報堂のグローバル領域のマネジメントを兼務するようになり、得意先業務、海外拠点強化、講演、審査などで、再び海外を飛び回る生活を送るようになる。2024年カンヌライオンズデジタルクラフト部門審査委員長。One ShowとAdfestのボードメンバーも務める。共著に「ブレイクスルー」(宣伝会議)。

『世界を変えたクリエイティブ 51のアイデアと戦略』
dentsu CRAFTPR Laboratory 著

本書はWEBサイト「LIONS GOOD NEWS 2023」に掲載したコンテンツをベースに、コミュニケーションの真理を9つに整理。それぞれの意味を表す花と花言葉に託し、カンヌライオンズの過去および最新事例とともに、コミュニケーション課題とその具体的な解決方法を紹介。また、本書で紹介した事例の日本語版字幕付き映像のQRコードも掲載しています。