(本記事は5月1日発売の月刊『宣伝会議』6月号巻頭特集に掲載されているものです)
- <グランプリ>
- 引越しの一番の荷物は、個人情報です。
(TOPPANエッジ/手続きをめんどくさがる人に、エアポス斗が言いそうな言葉のアイデア)
- <準グランプリ>
- ヂャラヂャラした大人には、なりたくない。
(ジェーシービー/初めて持つクレジットカードは、JCB!と思ってもらうためのアイデア)
- <特別審査員賞>
- 「のびしろ」の「しろ」って、
牛乳のことだと思う。
(よつ葉乳業/牛乳の見方が変わる言葉のアイデア)
- <協賛企業賞>
- 世界のどこかで生まれたカードより、
日本で生まれた世界のカードがいい。
(ジェーシービー/初めて持つクレジットカードは、JCB!と思ってもらうためのアイデア) - 勉強にも、買い物にも、友情にも。
(日本レジストリサービス(JPRS)/インターネットの大切さが伝わる広告アイデア)
課題文や企業のタグラインにも切り口のヒントが隠されている
――「宣伝会議賞」に応募するきっかけは。
小学校4年生の時、国語の自主学習で「図書館の本にPOPをつくる」という課題がありました。そこで初めてキャッチコピーに出会って、言葉の面白さを知ったんです。その後5年生の時に読売中高生新聞を読んで「宣伝会議賞」のことを知って、自主的に取り組んでみました。(第5回中高生部門の)『こども六法』やペットボトルリサイクルのキャッチフレーズをつくって、先生に見せて褒めてもらえたのがすごくうれしくて。それで今回やっと応募できる!と挑戦したのです。
――コピーはどのように考えたのでしょうか?
電車の中や、帰宅して宿題が終わって思考が活性化されているタイミングでコピーをつくって、応募サイトに入力していきました。
コピーを考える際に大切にしたのが、課題の解説文に書かれていることです。例えばジェーシービーの場合は「JCBは、日本で生まれた唯一の国際クレジットカードブランドとして、安全・安心で便利なキャッシュレス社会の実現に取り組んでいます。」とあって、ロゴには「世界にひとつ。あなたにひとつ。」と書いてありました。ということは「世界」「日本」「ひとつ」というのが、企業が伝えたい重要なキーワードではないかと考えたんです。ひとつの枝に複数のぶどうの粒が連なるように、ひとつの文章のなかにたくさんヒントになる要素があって、それを一粒ずつつまんでいったらいいんだと気付きました。
目標は、全ての課題に応募すること。1本書いたら次!というように、ぐるぐる横断しながら発想を広げていきました。そうすると今回の場合は多くの課題で「オンライン」という共通項があることに気付いたんです。他の課題で調べたことが、別の課題のヒントにもなりました。
応募したコピーの多くは、実際に先生や友達との会話から生まれたものです。一度それをメモしておいて、句読点や漢字の表記に気を配ったり、「ジャラジャラ」ではなく「ヂャラヂャラ」と書いた方がいいかなとか、改行位置や見た目もいろいろ試しながら、コピーの形にしていきました。
――コピーづくりで難しかったことは何ですか。
複数の課題を行ったり来たりするなかで、同じようなカテゴリーの商品であっても異なる切り口が見えてきて、そこで悩むことはありました。例えば「イミュ」の場合は「ハトムギ化粧水を使うと美肌になれる」という切り口が考えられると思うのですが、「マルホ」の場合はそれとは真逆で「肌の悩みも気にしなくていいよ」という具合に。何を伝えるべきか、アイデアが右往左往してしまったんです。
それから「日本製鉄」の「鉄」をテーマにした課題は切り口を見つけることが難しかったです。最終的には、例えば缶詰やマンホール、スカイツリーが喋り出したらどうだろう?とか、擬人化作戦で取り組んだりもしました。
――応募期間中はどんなインプットをしていましたか。
土日に読売中高生新聞を読むようにしていました。それから通学中の電車や街中の広告や、テレビCMでよく見る企業名と一緒に使われているコピーを観察して、表現方法を勉強しました。またYouTubeショートやTikTokをよく見ているのですが、そこでもサムネイルやタイトル、概要欄から、どういう風に表現したら最初の1秒で人の興味を惹きつけられるのかを考えながら見るようにしていました。
新しいことに挑戦する理由はそこに「人」がいるから
――普段の生活では「言葉」をどんなふうに捉えていますか。
言葉は、人から人に届けるものです。だから、どれだけ人と会って話すかが大事なのかなと感じました。最近は友達同士だけで伝わる言葉を開発して遊んだりしています。コピーをつくっていく中では、ひとつの音で複数の意味を持っていたり、そうした表現の部分で遊べるのも楽しいなと感じました。
私は人とコミュニケーションをとるのがとにかく大好き。話すことで脳が活性化されて、知らなかったことをもっと知りたい!と思うんです。部活も今は華道部に入っていて、ダンス部にも興味があります。新しいコミュニティに飛び込めば、そこには新しい「人」がいて、新しいことを知ることができますよね。人と関わり合うことで自分自身の熱量も分かってくるなと感じました。
――同年代の中高生の方たちに「宣伝会議賞」を勧めるとしたら、どんなメッセージが思い浮かびますか。
とっても楽しいことなので、できればひとり占めしたいのですが…。でも周りにおすすめするとしたら「そのコミュ力を生かそう」と言いたいですね。私は女子校なのですが、普段、お互いに空気を読みながらコミュニケーションをとることが多いんです。伝え方に気を配ったり、相手の気持ちを理解するように努力したり…その力は、コピーライティングにも生かせると思います。
――最後に、これからの目標を教えてください。
暇になることがとにかく苦手なので、自分が楽しいと思えることと勉強をかけあわせながら、新しい挑戦を続けて行きたいです。大人になって仕事に就くときにいろいろな方向に羽ばたいていけるように、今のうちにそのための材料を蓄積していけたらと思っています。
将来はコピーライターの仕事にも興味がありますが、今は、学校の校長先生にもなりたいと思っているんです。子どもたちだけでなく社会にも大きく場を開いて、いろいろな体験ができる場所をつくりたい。その中で、言葉の面白さを子どもたちに伝えることができたら、と考えています。
月刊『宣伝会議』2024年6月号
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