『宣伝会議のこの本、どんな本?』では、弊社が刊行した書籍の、内容と性格を感じていただけるよう、本のテーマを掘り下げるような解説を掲載していきます。言うなれば、本の中身の見通しと、その本の位置づけをわかりやすくするための試みです。今回は、博報堂 クリエイティブディレクター/CMプラナー 井村光明氏が、『言葉からの自由 コピーライターの思考と視点』を紹介します。
僕が入社して3年目の1993年のことです。コピーライターの先輩に占いで有名だというママさんのスナックに連れて行かれたことがありました。見てもらうと、「あなたはこれから運気が下降局面に入り、向こう10年はいくら努力してもうまくいかない」とのこと。僕は占いを信じる方ですが、10年というざっくりした数字を真に受けるわけもなく、今年こそ今年こそ自分のコピーで世を沸かせるぞと当然仕事に邁進していました。
しかし、結果僕が初めてTCC賞をいただいたのは2003年、賞が全てではありませんがともかく本当にぴったり10年後となってしまったのです。
もちろん偶然に決まってる。そう思っていました、この本を読むまでは。
「コピー年鑑を読むと、コピーライターがいいコピーを量産し始めるのは早くとも10年目からだと思った。」「だから、(中略)修業だと思って真面目に働こうと思った(実際10年かかった)。」「競合の時は、これに勝ったら人生が変わるかもと思いながら取り組み、そう思える競合のすべてに負けた。負けても構わないと思った。どうせ10年かかるのだ。」(「」は本書より抜粋)
振り返ると10年たっていた、ではなく、「どうせ10年かかるのだ」。
この本には、毎年ヒットコピーを連発している三島さんが、「偶然ではなく継続的にいいコピーを書くために」覚悟と確信を持ってされた10年の修業が記されています。
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