誰もが“ イラっ” とする瞬間を表現
冷凍庫から出てきた少年が「ストレスフルな皆さーん。怒りのエネルギーで、クーリッシュをギューッと握って、揉んで、飲みやすくしてみませんか?」と呼びかけるアニメーションから始まる本動画。
やがて舞台は、短尺のドラマが8 本連なるメインのパートへ。日常で遭遇したら“イラっ”としてしまうようなストーリーがテンポよく段積みで展開される。
デートらしき現場で女性をじっと見つめ「俺検定、合格」とナルシスト風に言い放つ男性、母親に「それってあなたの感想ですよね?」と口答えする生意気な子ども、フリマアプリのような画面で「もっと(値段を)下げた方がいいと思いますよ?」と強気なメッセージを送るユーザー、差し入れのクーリッシュを馴れ馴れしく頬に当ててくる先輩などが次々と登場し、思わずクーリッシュをギュッと握りしめたくなる、という流れだ。
動画を制作したのは、BBDO J WEST のプランナー/コピーライター 村上るり子さんと、ワンダーランドハウスのプロデューサー 泊香澄さんを中心とするチームだ。
村上さんは入社5 年目で、今回初めて応募した。「これまで業務優先でなかなか応募できませんでしたが、『今年こそは』と向き合うことにしました」。以前から親交があり、2 回目の応募となる泊さんに声をかけてチームを結成した。
企画のスタートは2023 年12 月から。村上さんが約1 カ月で企画を考案し、コンテを制作した。テスト撮影してネタの変更・修正を重ね、キャストを集めて撮影したのは1 月中旬。そこから約1週間で仕上げるなど、急ピッチで進めた。泊さんは「2人での協議、即断即決にしたことで、短期間で形にできました」と振り返る。
ロッテの課題は「『クーリッシュ、チョー飲みたい』そんな気持ちになる動画」。「せっかく自由にクライアントワークができる場なので、自分にも馴染みがあり、アイデアを広げやすい商品を選びました」と村上さん。
商品の特性から「おいしい、持ち運びに便利で、手軽に飲める、という点は広く知られています。一方、冷凍庫から出した時にはまだ固くてすぐに飲めないという実体験があり、そこからクーリッシュを思い切り握って飲みやすくする企画を考案しました」。
ドラマパートは全部で8種類。話し相手の相槌の間に違和感を抱く場面や、後輩の態度がちょっと鼻につく瞬間など、日常でも起こりそうなシーンが展開される。「ただイラっとさせるのではなく、笑いに昇華させるようなバランスを意識して何度もシチュエーションを再考しました。BOVAでは雰囲気のあるドラマタッチのものが多いので、あえてバラエティ番組の再現VTR のようなトーンにしています」(泊さん)。
今回のBOVAへの応募にあたり、村上さんは過去の受賞作品を研究しつつ、これまでにないようなアプローチを目指した。そのひとつが、冒頭と終盤に入る、少年が登場するアニメーション。「長尺動画は面白くないと飽きられてしまう」という懸念があったため、アニメを交えキャッチーさを加えた。
表現面では「違和感を出すこと」を重視。長く伸びる腕や、突然大きくなる顔など、不思議な動きを見せることで「これから面白いものが始まるのでは」という期待感を醸成した。それに加え、オンライン動画の特性を活かし、商品を持って視聴できる構成に仕上げた。締めくくりの場面では、「にぎって もんで のむアイス、クーリッシュ」と商品訴求に繋げている。
「期間や予算に制約がある中、ベストを尽くしたとは思いつつ、今後に向けた反省点もあります」と泊さん。村上さんも「自分たちのアプローチを評価していただけるか不安で、受賞の連絡を聞いた時は間違いかと思ってしまったほどです(笑)。チームの皆さんにたくさん協力いただいて、やりたいことを全て形にできました」と話している。
スタッフリスト
- 企画制作
- BBDO J WEST、ワンダーランドハウス、U2
- CD
- 今井美緒
- 企画+C+I+演出
- 村上るり子
- Pr
- 泊香澄
- PM
- 田村留郁
- 撮影
- 川越康平
- 撮影(アシスタント)
- 宮崎雄太、園田彪雅
- 照明
- 稲田雄太
- アニメーション+編集+カラリスト
- 仲子尚汰
- MA
- 岩下拓磨
- 録音
- 百代典由
- CAS
- 松原隆司、泊香澄
- 出演
- 颯斗、富永真由、太田悠資、山本英頼、河村陸来、納戸めぐみ、田村留郁