コピーライターという職業がなくなったとしても。(片岡良子)〜『言葉からの自由 コピーライターの思考と視点』に寄せて

『宣伝会議のこの本、どんな本?』では、弊社が刊行した書籍の、内容と性格を感じていただけるよう、本のテーマを掘り下げるような解説を掲載していきます。言うなれば、本の中身の見通しと、その本の位置づけをわかりやすくするための試みです。今回は、CHERRY コピーライター 片岡良子氏が、『言葉からの自由 コピーライターの思考と視点』を紹介します。

以前、三島さんとお話しする機会があり、「三島さんのライバルはどなたですか?」と質問させていただいたところ、「……AIですかね」と、答えが返ってきた。そのときは、真面目な回答なのか、三島さん流のユーモアなのか、ちょっとわからず、「ほほう」みたいなずいぶん間抜けな返事をしてしまったが、遂にはっきりした。あのときのアレ本気だったんだ!と。

AIと共存する今の時代に三島さんは、テクニックや方法論ではなく心構えを説く。一つひとつ手探りで感触を確かめるように、コピーを追求する。『言葉からの自由』を読んで、コピーライターという仕事が、とても人間らしい仕事に思えて、それが嬉しかった。

たしかに、スピードとか量産とか、そういうものだけを求めるなら、コピーライターが人間である必要はなくなるのかもしれない。だけど人の心の内は、おそろしいほど複雑で曖昧。言葉にすれば単純化されてしまいそうで、誰かに共有すれば冷めてしまいそうで、どこにも表出できない、ややこしい感情をいくつも抱えているものだから。他者の侵入を簡単には許さないし、最短ルートで捉えようとすれば、多くを取りこぼしてしまうだろう。そう考えると、人の気持ちをわかったような気にならない謙虚さや、書くことへの臆病さは、人間コピーライターの優位性なのかもしれないと思ったりした。

「ほんものの想いだけが、ほんものの言葉になる。」(本書より)
たとえいつの日か、コピーライターという職業がなくなったとしても。
コピーライターという職業に、これほど心を尽くして向き合った人がいたという痕跡は、この本を通して歴史に残っていく。そのことが、レベルは全く違えど同じ職業の端くれで働く自分にとっても誇らしい。

その日が来るまでに、自分には一体どんなコピーが書けるだろう……などと、ちょっとカッコつけたことを考えたくなるくらい、書く人に良い栄養をくれる一冊です。

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片岡良子(かたおか・りょうこ)

2012年ADK入社。約5年営業を経験し、コピーライターに転向。2022年からCHERRY所属。広告されない、ちいさなモノゴトマガジン『ちい告』共同編集長。
2023年クリエイター・オブ・ザ・イヤー メダリスト、ACCゴールド、TCC審査委員長賞、TCC新人賞、FCC古屋彰一賞など受賞。しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦「キミは、いたほうがいいよ。」新聞広告、明治 エッセル スーパーカップ「ふつうの日、スーパー最高では?」、Amazon Prime Video BACHELOR・BACHELORETTEシリーズなど。

『言葉からの自由 コピーライターの思考と視点』
三島邦彦著
定価:2200円(税込み)

この本に書かれているのは、「コピーライター」という名刺を持った日から現在に至るまで、「コピーライティング」について三島氏が考え、実践してきた数々の「思考のかけら」。「言葉を考える」「言葉を読む」「言葉を書く」「そして、言葉を考える」という4つの章から構成されています。これらについて、三島氏は日頃考えていることを惜しみなく書き綴りました。しかし、そこに書かれているのは、コピーライティングの作法でも手法でもありません。さらに言うならば、書き方の技術でもありません。コピーライターとして16年のキャリアを積んだ現在の三島氏ならではのフォーム、そして言葉に向かうときの心構えです

 

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