クラフトビールで奄美の魅力を全国発信 業務用ECサイトを開設、奄美ビール

「ハブ」や「島ばなな」など地元素材をアピール

「島ばなな」「長命草」など、奄美群島(鹿児島県)の素材を生かしたクラフトビールを製造する「奄美ブリュワリー」(奄美ビール)は6月、島外の事業者に向けた販売を開始する。「Best Beer Japan」が提供する業務店専用クラフトビールECサイトを活用。これまでは島内での消費が大半だったが、今春に設備を増強したことで業務用の全国展開に着手した。世界自然遺産に登録された奄美大島を始め、自然豊かな奄美地方の強みを生かし、素材にまつわるストーリーを周知するブランド戦略で商品価値を高める考え。現在はECサイトへの会員登録を呼びかけている。

写真 「奄美観光ハブセンター」とコラボして仕上げたストロングエール「奄美ハブW-IPA」

「奄美観光ハブセンター」とコラボして仕上げたストロングエール「奄美ハブW-IPA」

同社のクラフトビールは副原料として純黒糖や毒蛇の「ハブ」など、奄美ならではの素材を使用している。観光客を中心に人気があり、外国人のファンも多い。現在は8種類のクラフトビールをラインナップしており、ビールが苦手な人でも飲みやすい「島ばななヴァイツェン」が人気商品。高アルコールの「奄美ハブW-IPA」も高価格帯のボトルにも関わらず、1位、2位を争う売れ行きだという。飲用者からは「島外ではどこで買えますか」といった質問が多く、すでに一般向けではECサイトでの販売を実施している。

島外からの問い合わせも多い一方、島内需要だけでも供給が追い付かない状況が続いていた。一般向けの島外販売は問い合わせベースで実施していたが、販売数は多くなかったという。今年に入って生産体制を強化したことで欠品を解消。大量生産が可能になったことで、全国に奄美の魅力を知ってもらうために業務用の全国販売に着手した。

離島からの輸送ではコスト面の問題に直面。重量がある瓶製品はコストが高い。大容量を輸送する際には「樽」を利用することでコスト削減につなげた。

平泰造社長は「一人でも多くの人が奄美に来るきっかけになれば望ましい」と全国販売への意気込みを語る。世界自然遺産の地で、現地の水と素材で作ったビールという付加価値が競合との差別化になると考えている。また、自然を守るため醸造施設はガスや石油を使わず、電気を使って稼働させており「持続可能性」も特長だとしている。

全国販売を通じてビールに使用された素材をアピールし、島の生産者に還元する考えも。販売店には素材の魅力を理解してもらうためのマニュアルを提供しているという。平社長は「たくさんのクラフトビールがある中で、生産者の思いをビールに乗せて届けたい」と話した。クラフトビールが売れることで、素材自体も売れる相乗効果を期待している。将来的には「(奄美の魅力を)世界に広げていきたい」と展望を語った。

同社は2019年に「奄美DNA」という社名で平社長の故郷である奄美群島の徳之島伊仙町に設立。奄美大島一の繁華街「屋仁川通り」で郷土料理店「奄美大島料理かめ」を開業したが、新型コロナの拡大で人通りが消え、売上の確保が課題となった。様々な施策を検討する中、クラフトビールが差別化と地域の発展につながるとして2022年7月に奄美大島で醸造事業をスタート。2023年7月に現社名に変更した。現在も飲食事業を継続しており、クラフトビールを提供している。

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