イベント演出に生成AI活用 体験価値を高める企画制作のプロ集団

イベント、プロモーションなどの体験領域で実績多数のテー・オー・ダブリュー(TOW)。2024年2月には生成AIを活用し、「ポケモン竜王戦2024」の配信演出を担当。リアルタイムで戦況などを可視化する仕組みやユーザーインターフェース(UI)によって、視聴者の体験価値を高める楽しみ方を提供した。


人物 集合写真 「ポケモン竜王戦2024」配信演出を手がけたチーム。( 右から)TOW体験デザイン本部のチーフデジタルオフィサー 金森慎弥さん、プロデューサーの和田謙一郎さんと上霜圭央さん。左端は、AI「Pokémon Battle Scope」を開発したHEROZ のBusiness Success DivisionVice Division Head 大井恵介さん。
「ポケモン竜王戦2024」配信演出を手がけたチーム。( 右から)TOW体験デザイン本部のチーフデジタルオフィサー 金森慎弥さん、プロデューサーの和田謙一郎さんと上霜圭央さん。左端は、AI「Pokémon Battle Scope」を開発したHEROZ のBusiness Success DivisionVice Division Head 大井恵介さん。

データサイエンティストも在籍

「新しい時代の体験を創る」をパーパスとし、体験領域に強みを持つ統合プロモーションの企画制作会社であるTOW。強みとしてきたリアルイベントでの価値創造はもちろん、コロナ禍以前からデジタルコンテンツの開発、SNSや映像配信などを活かした体験価値の拡張などにも注力している。

イベントやプロモーションなどの体験領域を担う「体験デザイン本部」には、約60人のプロデューサーやプランナーが在籍。「今後もAIやテクノロジーを積極的にイベントプロモーションに活用していけたら」と、プロデューサーの和田謙一郎さんは話す。

さらに2019年には、データサイエンティストの金森慎弥さんが入社。カナダで音楽配信サービスのリコメンドシステム開発に従事したほか、VFXアーティストとしても活動するなど海外での研究経験を活かし、2023年7月にチーフデジタルオフィサーに就任した。同社における体験価値創造にデータを活用する取り組みを推進している。

AIをゲーム配信演出に組み込む

TOWではこのような体制のもと、2024年2月には株式会社ポケモンが主催する「ポケモン竜王戦2024」(共催:読売新聞社、日本将棋連盟)でAIを活用したゲーム配信の演出を手がけた。将棋界最高峰のタイトル「竜王」の名を冠し、ゲーム部門・カードゲーム部門・『ポケモンユナイト』部門で最強の選手を決める本大会は、2014年にスタート。3年ぶり5度目の開催となった今回初めて、ゲーム部門でポケモンバトルに特化したAI「Pokémon Battle Scope(ポケモンバトルスコープ)」を導入した。


イメージ 「ポケモン竜王戦2024」キービジュアル。
「ポケモン竜王戦2024」キービジュアル。©2024 Pokémon ©1995-2024 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc. ©2021 Tencent. ポケットモンスター・ポケモン・Pokémon は任天堂・クリーチャーズ・ゲームフリークの登録商標です。

「ポケモンバトルスコープ」は誰でもバトルを楽しんで視聴できるように、株式会社ポケモンとHEROZ株式会社が共同開発した。戦況やポケモンのタイプ、特性、技のほか、バトル中の天気などさまざまな情報から次の一手や勝敗・形勢の予想といったデータを生成できる。「日本将棋連盟公認のオンライン将棋対戦ゲームなどで活用しているAI技術を応用し開発しました」とHEROZの大井恵介さんは説明する。

このAIを「ポケモン竜王戦2024」に組み込むにあたり、TOWは企画・演出や配信画面のUI開発、AI実装を担当した。AIによって生成されたデータを配信画面に表示させることで、視聴者の知識の度合いに関係なく、目まぐるしく戦況が変化するバトルを楽しめるようにした。企画を統括する和田さんのもと、金森さんはAIを実装する演出の技術面を、プロデューサーの上霜圭央さんが各社との調整や現場での進行を担当した。「AIが生成するのはあくまでデータ。エンタメとして成立させるために、TOWの皆さんにその内容を解釈していただき、いかに演出として盛り込んでいただくかがポイントでした」(大井さん)。

当日はYouTube・X・ニコニコ生放送でライブ配信された。画面にはバトルの様子とともに、勝ち筋の高い次の一手をAIが予測し、確率とともに表示する「候補手」や、どちらのプレーヤーが優勢かを表す「形勢判断」をリアルタイムで表示した。途中から視聴しても一目で形勢が把握でき、AIの予測と実際の次の一手、実況による解説も比較しながら楽しめる。配信画面のUIは情報の視認性を高めながらも、ゲーム画面を主役に。視聴者がストレスを感じないように配慮し、観戦体験を盛り上げた。


イメージ ポケモン竜王戦 配信画面

最も苦労したのが、バトルと連動したリアルタイムの運用体制の構築だ。金森さんはその仕組みについて、「視聴者が見ている候補手や形勢判断は、戦況に応じてスタッフがデータを入力し、リアルタイムでAIが学習して生成したテキスト情報をCGシステムでデザイン化しています」と説明する。

上霜さんによれば、その工程はTOWが培ってきたイベント運営のノウハウが存分に活かされたものだ。「演出プランを各所と調整するとともに、スタッフにデータの打ち込みを学んでもらい、リハーサルをした上で本番に臨んでいます。AIの新たな可能性を活かすためには専門的な知見と入念な準備が必要でした」(上霜さん)。

配信中の視聴者のコメントを辿ると、AIによる予測が出るスピードに驚く声が多数寄せられている。AIへの理解や関心が高まる中での実装によって、視聴者から「学習を繰り返せばさらに精度も上がりそう」「また視聴したい」など、多くのポジティブな反応を得ることができた。

個人がより没入できる企画も可能に

今回の手応えから、金森さんは「今後、AIが得意とする予測をよりエンターテインメントに活かせるのではないか」と話す。「まだまだ今回のイベント演出は完成形ではありません。たとえば視聴者の視点で予測に参加できたり、自身の予測をスコア化させたりと、さらなる没入感をつくり出せるのではと思います」(金森さん)。

よりパーソナライズして参加者が没入できる仕掛けづくりなど、AIの活用には大きな可能性が広がっている。「マイクに向けて発した言葉がすぐさまイベント空間に投影されるなど、今までは夢物語のように思われた即時生成も可能になってきました。実現性がますます拡張しているAIを利用すれば、体験型イベントもさらに面白くなるのではないでしょうか」と上霜さん。

TOWとしても、さらなる体験価値の向上に取り組んでいく考えだ。「今回のような演出を標準装備できれば、クライアントのニーズにより応えることができるはず。将来的には、AIでの体験演出を体験デザイン本部所属の全スタッフが担えるようにしていきたいです」と和田さんは展望を語った。

同社は、6月1日・2日に開催される日本最大のポケモンバトル大会「ポケモンジャパンチャンピオンシップス2024」にも配信演出で参加。大会2日目には、今回活用した「ポケモンバトルスコープ」をさらに進化させて取り入れる予定となっている。

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