Webデザイナーの転職で求められる「人間らしいデザイン」とは AI時代のキャリア戦略

「Webデザイナーの仕事は生成AIに代替される」という不安の声が高まる中、実際の転職市場では求人数は減っていません。しかし、求められるスキルや業務内容は確実に変わりつつあります。AIとの役割分担が進む中で、重視されるスキルも変化しています。「人間らしいデザイン」への需要が高まる今、転職を成功させるには何が必要なのか。
マスメディアンのキャリアアドバイザー・田川結生が解説します。

「Webデザイナー=AIに代替」は誤解

Q: 「Webデザイナーの仕事は生成AIに代替される」という声をよく聞きますが、実際の転職市場ではどうですか。

これは大きな誤解だと考えています。実際の求人数は減っておらず、Webデザイナーへのニーズは引き続き高い状況です。ただし、求められるスキルや業務内容は確実に変わりつつあります。

定型的なビジュアル制作はAIに代替される可能性がある一方、ビジネス上の課題をデザインで解決できる人材や、顧客と円滑にコミュニケーションを取れる人材など、現時点ではAIで代替しにくい専門性・スキルを持つ人材への需要は一定数あります。

Q: 具体的にはどのような求人が出ているのでしょうか?

興味深い事例として、ある大手映像制作会社で「AI CGディレクター」の求人が出ました。求人企業に「AI活用の経験も必要ですか」と確認したところ、「現時点ではCGクリエイターとしての経験があれば十分で、AIも活用しながら制作できる人材を求めている」という回答でした。

つまり、AIを制作に取り入れている企業でも、「今すぐAIを使いこなせることが必須スキル」というより、「AIを活用した新しい制作スタイルを一緒に模索してほしい」という温度感なのです。企業ごとにAI活用の段階は異なり、まだ手探りの部分も多いため、共に新しい制作のあり方を考えられる人材が求められています。

Q: AIとの分担により、求められるスキルはどう変わっていますか。

わかりやすい例として、少し前まではコーディングができるWebデザイナーが非常に重宝されていました。しかし、現在はAIがコーディングを支援するようになったため、「自分でコードを書けること」に加えて、「AIを活用して効率的に実装できる力」が求められるようになっています。

このように、AIとの役割分担によって、ニーズの高いスキルは確実に変わってきています。重要なのは、AIにすべてを任せるのではなく、AIを活用しながら、人間にしか提供できない価値を生み出せるかどうかです。

写真 田川氏

人に求められるのは「言語化能力」と「選ぶ力」

Q: AI時代において、AIに代替されにくいスキルとは何でしょうか。

私は「人間らしいデザイン」を生み出す力だと考えています。ここでいう「人間らしいデザイン」とは、ブランドの価値観やメッセージを理解した上で、ユーザーの感情や体験まで考えて設計されたデザインです。

AIは、情報整理やレイアウトのたたき台づくりなどを得意としています。一方、共感や温かみ、ストーリー性といった人の感情に訴えかける表現には、まだ人の判断や感性が欠かせません。ユーザーの心に響き、ブランドの世界観を体現できるデザインを生み出す人材への需要は高まっています。

Q: 「人間らしいデザイン」を実現するために、どのような能力が必要ですか?

最も重要なのは、言語化能力と「選ぶ力」です。

言語化能力とは、「なぜこの色を選んだのか」「なぜこのレイアウトにしたのか」といったデザインの意図や効果を論理的に説明できる力です。AIを制作で活用する場合、AIが作成した複数のデザイン案から最適なものを選び、その理由をクライアントや上司に納得感のある形で伝えるコミュニケーション能力も求められます。

「選ぶ力」とは、AIが生成した大量のアウトプットの中から、ブランドのメッセージや世界観に最も適したものを見極める審美眼と判断力のことです。

ポートフォリオは妥協しないこと!

Q: 転職活動でのポートフォリオ作成において、この力はどう活かせますか。

ポートフォリオ作成においても、言語化能力と選ぶ力は非常に重要です。

Webデザイナーと一口に言っても、キャリアの選択肢はさまざまです。UI/UXデザイナー、Webディレクター、アートディレクター、マーケティング寄りのデザイナー、インハウスデザイナーなど、それぞれの方向性で求められる付加的なスキルがあります。

また、志望する業界によっても、求められるトーンアンドマナーは異なります。BtoB企業かBtoC企業か、食品業界かIT業界かによって、評価されるデザインの方向性は変わります。自分が進みたい分野において求められるスキルを見極め、自分の作品集に反映するのもデザイナーに求められる能力です。

Q: 具体的にはどのようにポートフォリオを構成すべきですか?

目指すキャリアの方向性に応じて、ポートフォリオに掲載する内容を戦略的に選ぶことが重要です。

例えば、UI/UXデザイナーを目指すなら、ユーザー体験の設計やリサーチ結果を反映した改善事例を重点的に掲載します。ディレクション職を目指すなら、関係者との調整や要件整理の経験を言語化して示します。マーケティング寄りのキャリアを目指すなら、CVRやCTRなどの改善に貢献した事例を前面に出すといった具合です。

ポートフォリオを戦略的に構成できること自体が、これからの時代に求められるディレクション能力の証明になります。

Q: 成功する人の共通点は?

これまで多くのデザイナーを支援してきましたが、成功する方に共通しているのは、ポートフォリオの完成度に妥協しないことです。「3カ月後に転職しなければならない」「うまく時間が取れない」といったさまざまな事情で、ポートフォリオを急ぎ作成される方もいると思います。ただ、私の経験上、せっかく素晴らしいスキルや経験を持っているのに、納得できる完成度まで仕上げられず、書類選考で不合格になってしまう方も多くいらっしゃいます。納得できるポートフォリオを作り上げた方ほど、転職成功につながっている印象があります。

また、考えを言語化する習慣がある方や、Google Analyticsなどのデータに基づいてデザインの根拠を示せる方も高く評価されています。

Webデザイナーのキャリアの広げ方

Q: AI時代のWebデザイナーのキャリアルートは?

大きく5つの方向があります。

1つ目は「デザインを深める」方向で、WebアートディレクターやUI/UXデザイナー、プロダクトデザイナーへの道です。人間の行動心理や感情に寄り添ったデザイン設計ができる専門性が求められます。

2つ目は「設計・体験に広げる」方向で、ユーザー体験全体を設計するUXデザイナーやサービスデザイナーです。

3つ目は「制作進行・上流に広げる」方向で、Webディレクターやアートディレクターなど、デザインの監修や戦略立案を担う役割です。

4つ目は「マーケ・事業側に広げる」方向で、LPO・グロース担当やWebマーケターなど、成果に直結するデザインを追求する道です。

5つ目は「実装・プロダクト側に広げる」方向です。フロントエンド実装やプロダクト開発に関わる道であり、今後はAIの活用を前提としたスキルアップがより重要になる領域です。

Q: よく受ける相談内容は?

「自分が目指すクリエイティブの方向性に合った環境で働きたい」という相談を多くいただきます。企業やチームがどのような考えでデザインに向き合っているかは、求人票だけではわからないものです。キャリアアドバイザーに相談したり、複数の企業から話を聞いたりしながら比較検討することが、納得できる転職への近道だと思います。

AIと協働して価値を生むWebデザイナーへ

Q: AI時代にWebデザイナーとして成功するには?

「人間らしいデザイン」を追求し続けることです。AIが得意とする効率的な制作だけでなく、共感や温かみ、ストーリー性といった、人だからこそ表現できる価値を磨くことが重要です。

そして、その価値を言語化し、適切に選択できる能力を身につけることで、AIと協働しながら、より高いデザイン価値を生み出せる人材を目指してほしいと思います。

Q: 転職を検討している方へのメッセージをお願いします。

デザイナーの転職活動では、ポートフォリオが非常に重要です。特に初めて転職する方は、どのように構成すればよいのか、何を書けば自分の経験や強みが伝わるのか、悩むことも多いと思います。

マスメディアンでは、キャリアアドバイザーがポートフォリオの添削にも対応しています。ユーザー視点での改善提案や、関係者との合意形成、ブランドを理解したデザイン設計など、ご自身では気づきにくい経験の価値も一緒に整理し、伝わる形にしていきます。

ぜひさまざまな企業と話しながら、自分の経験がどのように評価されるのか、どのようなキャリアの可能性があるのかを確かめてみてください。AI時代にも求められる強みを明確にし、妥協のない転職活動を一緒に進めていきましょう。

まとめ

Webデザイナーの求人数は減っていない一方、AIとの役割分担が進む中で、求められるスキルは変化している。これからは、「人間らしいデザイン」を支える言語化能力や判断力が重要になる。キャリアの方向性に応じてポートフォリオを戦略的に構成し、自身の強みを適切に伝えることが、AI時代の転職成功につながる。

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田川 結生

マスメディアン
CAチーム キャリアアドバイザー

教育業界から人材業界に転身し、大手人材会社で企業・転職希望者双方の支援に携わる。転職希望者の人生により深く貢献できるのは特化型エージェントだと考え、マーケティング・クリエイティブ領域特化のマスメディアンに入社。転職は人生を見つめ直す大切な機会と捉え、不安に寄り添い、率直に話せる関係性に基づいた支援を行う。趣味は動物(特にペットの猫)と触れ合うこと。

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