京井良彦の「CANNES LIONS 2011」レポート(第3回)

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カンヌはこれからの「クリエイティブ」に何を期待したか?
~コンテンツの復権と企業活動への本質的貢献

京井良彦(電通)

カンヌ国際クリエイティビティフェスティバルは、一週間の開催期間を終え、活況のうちに幕を閉じました。
今年から開催名称に「クリエイティビティ」を冠したカンヌは、そのクリエイティブに、これから何を期待し、どんなメッセージを残したのでしょうか?
今回の受賞作品の傾向や、セミナーの潮流などから考えてみたいと思います。

まずひとつは、「コンテンツ」としての価値創造。そして、そのクオリティがますます重要になるということでしょう。
昨年あれだけカンヌを賑わしたソーシャルメディアは、もう当たり前に浸透していて、わざわざ口に出すことが野暮であるという空気さえありました。

そんな中、共感できる強いコンテンツがあれば、マスメディアだろうがソーシャルメディアだろうが、いかなる伝送路を経由しても必ず世の中に届き、人々とつながることができるという主張がありました。いわば、「コンテンツ・イズ・キング」発想の復権です。

フィルム部門でグランプリを獲得したナイキの2010年FIFAワールドカップに向けたCM「WRITE THE FUTURE」も、その象徴でしょう。
監督は映画「バベル」などで有名なアレハンドロ・ゴンサレス・ イニャリトゥ。とにかく膨大な予算をかけられた圧倒的なスケールの映像ですが、そこには商品告知もつながる仕掛けもROIもクソもありません。マイケル・ジャクソンのシュート・ムービーなどと同じ概念で、そういう意味で、もう広告という枠を完全に超えてしまっているわけです。

また、セミナーにおいて、ロバート・レッドフォードや、パティ・スミスなど、永きにわたって素晴らしいコンテンツを生み出し続けているカリスマをパネラーに迎えての講義が多く見られたことも、カンヌのコンテンツ復権に対する強い意思のように感じられました。

もうひとつは、その真逆とも言えますが、クリエイティビティを、単にアテンション獲得のためでなく、もっと企業活動の本質的なところで発揮していこうということでしょう。

例えば、メディア部門でグランプリを獲得した、韓国の「ホームプラス」というスーパーマーケットの施策がありました。
地下鉄に巨大なポスターを掲出したのですが、単に商品がずらっと並んでいるだけのビジュアルかと思いきや、そのひとつひとつにQRコードが付いています。それを携帯電話で読み込むと、なんと自宅に商品が宅配されるというのです。つまり地下鉄構内に、広告どころかバーチャルショップを出店してしまったわけです。これによってオンラインショップとしての売上が130%も増加したと言います。

こういった販促そのものや、クラウドソーシングによる商品開発、ユーザーを巻き込んだ経営判断など、企業活動に直接寄与するクリエイティブを評価する傾向が強く見られました。

また、今年から「クリエイティブ・エフェクティブネス」というクリエイティブの実際の効果を評価する部門賞が新設されたことにも、こういった本質論に対するカンヌの姿勢を感じました。
但し、セミナーにおいて「今やクリエイティブの評価はROIでは測れない」と発言するエージェンシーもあり、早くもこの賞に対する牽制が行われていたことも確かです。

そして最後に、やや手法論にもなりますが、コラボレーションによるクリエイティビティの発揮、いわば「コ・クリエイティブ発想」への期待があるでしょう。
インテグレーテッド部門とアウトドア部門でダブルグランプリとなったラッパー「Jay-Z」の自叙伝発売キャンペーンは、マイクロソフトとのコラボレーション。サイバー部門でグランプリの「The Wilderness Downtown」というミュージックビデオも、Googleとのコラボレーションでした。

ソーシャルメディアによって、いろんな価値観でつながった人々(セミナーでは彼らをコ・世代と呼んでいました)に、そのソーシャルグラフを介してコミュニケーションを広げていくため、企業やブランド側も違うカテゴリー同士が手を取り合って新しいコンテンツを生み出そうという発想です。
違うカテゴリーとのコラボレーションによって、違うソーシャルグラフに属するユーザーとつながることができ、またアイデアジャンプによる斬新なコンテンツも生まれる可能性が高いということでしょう。
このコ・クリエイティブ発想に掛ける期待というのも、今回のカンヌから強く感じられたものでした。

このような、いくつかの潮流いずれを見ても、ブランドや企業活動そのものと生活者をつなげるクリエイティビティは、ますます重要になってきています。カンヌのクリエイティブに対する期待は、今回をきっかけに、ますます大きくなったといえるのではないでしょうか。

さて、3回に渡った速報としてのレポートは今回で最後になります。皆さま最後までお付き合いいただき有難うございました。
また「月刊ブレーン」本誌の特集で、深い考察ができればと思っています。

京井良彦(きょうい・よしひこ)
電通アカウント・スーパーバイザー/電通モダン・コミュニケーション・ラボ。富士銀行入行後、国立インドネシア大学留学を経て、投資銀行でM&Aアドバイザーとして活動。2001年より電通に勤務。営業局にて民間、官公庁、グローバルと多岐にわたるクライアントを担当。最新著書は『ロングエンゲージメント』(あさ出版)。

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