京井良彦の「CANNES LIONS 2011」レポート(第2回)

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カンヌ曰く、「ブランドは人間と話すべきである」
~ヒューマン・ブランドの構築を目指して

京井良彦(電通)

今回のカンヌでよく耳にするのが、「human(ヒューマン)」というワードです。

レオ・バーネットのセミナーでは、「Brands, Speak with, not consumers, but human.(ブランドよ、消費者と話すのではなく、人間と話をせよ)」というメッセージがありました。
ソーシャルメディアをはじめとするテクノロジーの進化は、生活者を消費者という一塊として見るのではなく、一人一人が違った顔を持つ「人間」としての関係を築いていくことを可能にしました。

例えばレオ・バーネットは、米国キャノンのマーケティングを例に挙げていました。米国キャノンでは、カメラを売るという発想を止め、生活者一人一人のライフログ、つまり「人生の記録をサポートしていく」という発想を持ち込んだといいます。一人一人の想い出を預かり続けるパートナーとして、カメラとともにネットでのフォト・サーバー・サービスも提供しているのです。

もはや、いかなる業種、いかなる企業にとっても、「ヒューマン・ブランド」の構築は目標とするべきものといえるのでしょう。

しかしながら、一人一人の人間と関係を構築していくとなると、グローバル・ブランドにとっては新たな課題が生まれてきます。それがカンヌでよく聞くもうひとつのキーワード、「Localize(ローカライズ)」です。
確かにソーシャルメディアの浸透は、国や人種を越えて、企業と世界中の人々とのつながりを実現しました。しかしだからといって、つながりの上での直接対話によって、一方的にブランドの価値観を強要していくものではないというわけです。

つながりが実現されても、やはり、それぞれの人々が持つ価値観や宗教観を崩さずに、それらを尊重した文脈でブランドは受け入れられるべきで、グローバル・ブランドには、そういった高度なローカライズが、新たに求められるようになっているようです。Hyundai、NOKIAなど、世界的なブランドがこういった新たな課題に意欲的な取り組みをみせているのが印象的でした。

また今回、プロモ&アクティベーション部門とダイレクト部門とでWグランプリとなったルーマニアの「ROMチョコレート」は、国旗をモチーフにしたパッケージデザインを、グローバル化と称してアメリカ国旗に変え、国民感情を煽るというものでしたが、上記のように世界的なブランドがグローバル化とローカライズのぎりぎりの着地点を模索する背景において、皮肉ともいえる面白さがあるわけです。

もうひとつ、「Planet(惑星=地球)」というワードもよく聞かれます。
「地球のために何ができるか」という意味合いですが、これもいわゆる単発の社会貢献キャンペーンの枠を超えつつあるようです。
WWF(世界自然保護基金)の取り組んだ森林伐採を抑制するための運動、パソコンからプリントアウトを出来なくするためのダウンロードソフトの拡散というシンプルなアイデアは、プロモ&アクティベーション部門でゴールドを受賞しました。

またセミナーでは、今でもペプシコ社の「Pepsi Refresh Project」や、それと同じ精神である「SONY OPEN PLANET idea」などが取り上げられています。
「By the people for the Planet」。企業は、「生活者のために何をするか」ではなく、「生活者と一緒になって地球のために何ができるか」を考えていくステージに入っているようです。

これら3つのキーワード、「Human」、「Localize」、「Planet」。これからのブランド構築を考えるにあたって、まずは念頭におくべき必要がありそうです。

京井良彦(きょうい・よしひこ)
電通アカウント・スーパーバイザー/電通モダン・コミュニケーション・ラボ。富士銀行入行後、国立インドネシア大学留学を経て、投資銀行でM&Aアドバイザーとして活動。2001年より電通に勤務。営業局にて民間、官公庁、グローバルと多岐にわたるクライアントを担当。最新著書は『ロングエンゲージメント』(あさ出版)。

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