よしだ・とおる
1985年博報堂入社。マーケティングプランナーとして数多くのブランドコミュニケーション、商品開発に携わる。2003年、ワイデン・アンド・ケネディ・トウキョウにストラテジック・プラニング・ディレクターとして参加。NIKE、KUMON、サッポロビール、Google、プレイステーション、Levi'sなどのブランディングを担当。
宣伝会議9月15日号では、「宣伝会議賞」の募集期間に合わせて「ツイッターで炎上増加のなぜ?企業の意志と表現方法」という特集を組んでいます。
その中から、ワイデン+ケネディの吉田透氏(ストラテジック・プランニング・ディレクター)に、「企業の強いメッセージをいかに開発するべきか」というテーマでご意見をいただきました。
特に「宣伝会議賞」応募者の皆さんには、課題企業のコピーを考える上で参考にしていただければと思います。本誌ではスペースの都合で掲載できなかったコメントを含め、完全版をアドタイにてお届けします。
時代や市場に合わせただけのメッセージは、信じてもらえない
――クライアントのコーポレートブランド、商品ブランドのメッセージを開発する際に、留意されているポイントは。
コーポレートブランド、商品ブランドにかかわらず、ワイデン+ケネディ(以下、W+K)が守っている原則は実にシンプルな指針です。それは、ブランドの真実の声を見つけだすこと、顧客(生活者)の知性を信じること、そしてブランドとその顧客の関係をより活性化すること、の三つです。
このアプローチはW+Kが世界中でさまざまなブランドの仕事を通じて得てきたものですが、今日、ブランドメッセージの開発においてますます重要なポイントになっているように思えます。
人々が情報を扱う能力は飛躍的に向上しており、情報をめぐるクライアント企業と顧客との関係は激変しています。単に時代の流れや市場の動向に合わせただけのメッセージや、消費者受けだけを狙った厚化粧のセールストークでは、人を動かせないだけでなく、ブランドの姿勢に対する不信感すら招いてしまいかねません。
そのブランドにしか出せない独自の「声」で、顧客や社会にとって価値のある対話を、きちんと正面から向き合って行っていく。そうした作法は今後さらに大きな意味を持っていくでしょう。そしてそういうコミュニケーションは、メッセージの送り手にも受け手にとっても、そして作り手にとっても非常に刺激的で、楽しい体験になっていくと思います。
すべてのブランドには独自の物語があり、真実がある
――深い思い入れのある商品や企業理念を持っているクライアントから、メッセージのある広告が生まれるのではないかと思います。W+Kでは、どのようにクライアントのインサイトに迫り、かつ信頼を得ているのでしょうか。
すべてのブランドには独自の物語があり、真実があります。どんな企業でも、顧客ときちんと向き合う気持ちさえあれば、強いメッセージ力のあるコミュニケーションを作り出していくことは可能です。企業理念や商品への思い入れの有無というのは、それをきちんと掘り出し、共有可能な形にできているかいないかの違いでしかない場合が多いように思います。
ブランドの独自の声というのは、自分ではなかなかその価値を見出しづらいものです。 W+Kの基本的な仕事の進め方は、まずパートナーとしてブランドの真の価値をクライアントと一緒に掘り当てることから始めます。そうすることで私たちは本当に力のあるブランドの声を見出すことができるのです。クライアントから与えられたテーマをただ表現にするだけ、という仕事ではW+Kの本領は発揮できないと考えています。
ですから私たちは、クライアントとの対話をとても重視します。マーケティングや宣伝担当の人だけではなく、企業トップや戦略意思決定に携わるマネジメントの方たち、各現場の人たちにも機会があればできるだけ話を聞くようにしています。
ほんのささいなエピソードがブランドの真実を雄弁に語ってくれることがあり、それが素晴らしいクリエイティブのインスピレーションになる。そんな魔法の瞬間を、私たちは何度も体験してきました。そうしたプロセスによって、そのブランドの「らしさ」を新鮮に表現する方法をクライアントと共に生み出せた時、本当の信頼関係は築かれると思っています。 (次ページへ続く)
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