被災地で泥まみれになって生まれた、Levi’sのコピー
――最近のW+Kの仕事で、クライアントのメッセージ開発に貢献し、評価された広告の一例があれば教えてください。
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日本でも今年8月にローンチした「Go Forth」キャンペーンは、W+Kがグローバルで手がけているLevi’sのブランドコミュニケーションです。
市場のトレンドに翻弄されて独自の価値を見失いかけていたジーンズの始祖が、ブランドの真実に立ち返り、その存在理由を今の時代に問い直す。そういう骨太な戦略構造を持つもので、キャンペーン全体が大きな社会的メッセージを継続的に発信するように展開されています。
その根底にあるのは「困難から逃げずに未来を切り拓いてきたアメリカのパイオニアスピリットは決して過去の物語ではなく、むしろこれからの時代を生きてゆく若者たちの胸にこそ刻まれるべき紋章である」という強く明快な主張です。これはアメリカ建国の生き証人であるリーバイスならではの強烈なブランドボイスであり、身につけた人の生き様が刻み込まれるジーンズという商品にこそふさわしいスタンスだと言えるでしょう。
「Go Forth」は2009年、変化の期待に湧く米国内向けのキャンペーンとして開発され、成功を収めたものですが、今や世界中が自らの構造を大きく変えていく予感を持っていることをW+Kのプランナーたちはグローバルに確認しあっており、メッセージはすぐにカナダや南米にも拡大されました。
さらにヨーロッパと、日本をはじめとするアジアへの展開にあたっては、グローバルリサーチを踏まえて戦略が策定され、各国のクリエイターたちが集合して数週間にわたる共同作業で表現開発を行いました。
実はその際、時代の変化への緊迫度が他国に比べてひときわ低かったのが日本でした。ところが表現コンセプトを固める直前にあの悪夢のような東日本大震災があり、日本の若者たちの意識は劇的に変わって行くことになったのです。
ワイデン+ケネディ トウキョウのクリエイターは、毎週のように被災地に通って泥まみれのジーンズ姿で復興の手助けをしながら、今の日本でLevi’sが何をメッセージすべきかを考え直し、コピーもすべて書き直しました。クライアントも「ジーンズとは自ら未来を切り拓く人の服だ」というブランドの信念のもとに復興支援活動を展開しています。
私たちは、メディアのスペースに掲載される表現だけがブランドのメッセージだとは考えません。ブランドスピリットのもとに行われるこうした一連の出来事が、全体として世の中からのブランドへの、そして私たちの仕事への評価を作っていくのだと信じています。
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