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どう伝える?幅広い自社の事業/東洋ゴム工業──いま企業に求められるクリエイティブ・ライティング(4)

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言葉を使って意図・思いを伝え、相手の心を動かし、行動を促す。その能力は、宣伝・マーケティング部門はもちろん、広報、営業、総務、経理…企業におけるあらゆる部門で求められています。本連載では、言葉を磨くことで自らの仕事の質をより高め、より大きな成果をめざして取り組む担当者を取材します。

※『宣伝会議』にて、宣伝会議主催のクリエイティブ・ライティング講座と連動して連載中の「いま企業に求められるクリエイティブ・ライティング」より抜粋。本記事は2014年1月号に掲載されたものです。

東洋ゴム工業の事例

主力事業のタイヤ事業の陰に隠れてしまいがちの化工品事業部門で、広報を担う長田真由美さん。グループ内の新会社と本社とをつなぐ立場となった直後、任されたのは「会社案内」の制作だ。文章のライティングはもちろん、関係者を動かすために、言葉の力の重要性を改めて感じたという。

売上全体の約8割をタイヤ事業が占める東洋ゴム工業。残り2割を、自動車部品や鉄道部品をはじめ1000種類以上におよぶ化学工業製品(化工品)を製造するダイバーテック事業が占めており、同社の成長を支える重要なパートを担っている。

東洋ゴム工業 化工品ビジネスユニット 長田真由美さん

そうした化工品について技術開発から製造、販売、サービス、管理までを一括する子会社「東洋ゴム化工品」が発足したのは2013年1月のこと。この新会社の営業部門と本社との間をつなぎ、東洋ゴム化工品を化工品事業の中核として効果的に機能させる役割を担うのが、東洋ゴム工業 化工品ビジネスユニットの長田真由美さんだ。新会社発足とともに現職に就くまでは6年間、本社の広報企画部に所属していた。

「商品セールスに役立つ社内情報やニュースを集約して営業社員に提供するほか、新会社社内のモチベーション向上につながるような取り組み全般を担当しています。経営トップの意思・メッセージを全社に伝えたり、広範な分野にまたがる製品部門の取り組みを全社に向けて発信したり…。一言で『化工品事業』と言ってもその内容は非常に多岐にわたり、隣の部門が何を作っているのかわからないのが当たり前という状況。横のつながりが極めて希薄なのが大きな課題です。また、売上比率が高いので当然ではありますが、広告やPRでクローズアップされるのはタイヤばかり。世の中のさまざまなシーンで使われる、多種多様な製品を作っているのに、そのことがあまり知られていないのはもったいない。化工品事業の、そして新会社自体の認知度をもっと高めていきたいと考えています」と長田さん。

その思いは、会社としてのミッションとも合致。今後、より広報活動を強化していこうという方針のもと、新しい会社案内を制作するプロジェクトが3月に発足し、広報経験がある長田さんに白羽の矢が立った。これまで製品ごとにバラバラだったカタログを統合し、自社の事業全体を説明することができる一冊を作る。

11月中旬に完成したばかりの会社案内。 全13ページの紙面で、幅広い化工品の特徴を簡潔に伝える。

「たとえばグローバルに向けて事業を拡大する際には、自社の事業全体について説明する必要があります。すでに認知のある製品のほかにもどんな製品を扱っているのか、理解していただくことが企業としての信頼につながる。そういう場で使える会社案内を作るのが今回のミッションでした」(長田さん)。

とは言え、ただでさえ広範なカテゴリーにわたる製品群。異動直後で右も左も分からない状況下、その情報を統合するのは容易ではなかった。

「どの社員がどの製品を担当しているかわからないばかりか、当初は社員の顔と名前も一致しませんでした。情報を集約・統合するには、多くの人と接し、話し、言葉を使ってこちらの意図を伝えなければなりません。もともと文章スキル・ディレクション能力が特別高いわけではないので不安もありましたが、言葉の力でどこまで人を動かせるのか試したいという思いもありました」。

新しい会社案内で目指したのは、一つひとつの製品を簡潔に、分かりやすく説明すること。製品名だけでは具体的なイメージが湧かないものが多いため、その特徴を噛み砕き、一般的な表現に変換した説明文を一から書いた。

「各製品の担当者から、昔の資料やカタログをもらい、約50の製品について各3行ほどで説明文を作成しました」。

また、制作はデザイナーや印刷会社など社外の協力者とのやり取りも多く、そこでの言葉の使い方にも難しさを感じたと長田さんは話す。

「社外の協力者には、『こんなふうにしたい』という構想やアイデア、要望を、具体的なキャッチコピーやビジュアルのレベルにまで落とし込んだ上で作業を依頼するようにしました」。

文章のテクニック面だけでなく、「伝えたい」という気持ちの熱量も大切にしたという。

「ビジネスメールはできる限りシンプルな書き方が志向されるものですが、依頼内容の背景やこちらの思い・要望を、誠心誠意伝えるのも重要なこと。どんなに長くなろうが、それらを文章に織り込まないことには始まらないと考えています。受け取り方は相手に委ねるしかないからこそ、伝える時には『受け手がどう反応するか』というところまで考えなければという意識が高まりました。ここ数年でクリエイティブ・ライティング、クリエイティブ・ディレクション、そして心理学を学んできたのですが、その全てが結実して、今の仕事に活きていると感じています」。

自社商品について知ってもらうことはもちろん、経営トップの思いや考え方・メッセージを伝えることも広報の重要な役割。意思を汲み取り、多くの人に伝わりやすいような形にして発信したい」(長田さん)。写真は、会社案内の冒頭に掲載された社長メッセージ。顔写真の掲載はNGと言われたため、「せめて直筆のサインを!」と説得し、現在の形となった。

会社案内は11月中旬にようやく完成。今後は、化工品の認知度を高めるためのコミュニケーション戦略を策定し、3カ年計画を立てて実行していきたいと話す。

「そのためには、社内にあるさまざまな情報を吸い上げていくことが必要です。まずは各製品の歴史から。開発・製造に携わる技術者から話を聞き、年表にまとめていきたいと考えています。自分の構想に近いものを作り上げるための取材力・質問力も磨いていかねばと思っています。社内の情報を広く・深く知り、社内外に分かりやすく発信していく。その業務を全面的に任せてもらえるような存在になりたいですね」(長田さん)。

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