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素人集団だからこそ常識にとらわれなかった~「楽天カフェ」オープンへの道~

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楽天の提供するさまざまなサービスを体験することができる店舗として5月29日にオープンした楽天カフェ。様々な楽天のサービスを説明するコンシェルジュを置き、席には最新のアンドロイドタブレット「Kobo Arc 7HD」が設置してある。提供するメニューは楽天市場で取り扱っている人気スイーツ商品など、これまでとは全く異なる「カフェ」業態への挑戦。この立ち上げの陣頭指揮を執った、常務執行役員CMOの中島 謙一郎氏に、楽天カフェオープンの目的や、そこに至るまでにどのように取り組んでいったのかについて聞いた。

生活者の日常生活の中に自然に溶け込む

——「ネットとリアルの融合」という観点から、楽天カフェの設立の目的を聞かせてください。

楽天 常務執行役員CMO 中島 謙一郎氏

楽天 常務執行役員CMO 中島 謙一郎氏

ネットとリアルの融合としてよく言われるのが「O2O」(オンライン・トゥ・オフライン)と呼ばれる、たとえばウェブでクーポンをまいてリアルの店舗に誘引するといった個別の施策。しかし、今回の楽天カフェについては、リアルからウェブへの流れも含むもっと大きなところでネットとリアルの架け橋をつくりたいと思いました。

Eコマースが世の中に普及して、いまや楽天グループだけで、金融事業も含めると年間5兆円を越える流通総額(取扱金額)になっています。しかし、リアルでの決済金額と比べるとまだまだ数パーセントに過ぎません。まだEコマースの経験がない、楽天市場を使ったことがない人もたくさんいるわけです。

従って、楽天カフェ設立の目的は二つ。一つは、すでに楽天市場を使ってもらっている方に対して、より近い存在として感じてもらい、実感値のある、形に見えるものとして示すため。もう一つが、ネットに対してまだ漠然とした距離感がある人に対して、ネットでできることは、リアルの世界と何も変わらないことを感じてもらうためです。

——何も変わらないというのは、具体的にどういうことでしょう?

例えば「電子書籍」は、タブレット端末などで読めるということ自体は多くの人が分かっていると思います。しかし、実際に端末に触れて読んだことがある人は、まだまだ少ない状況です。頭では分かっているけど、経験していない・実感値をもっていないから身近に感じられないといった事例は、電子書籍に限らずたくさんあるということです。

1階全席と2階カウンター席には「Kobo Arc 7HD」を設置。『DIME』や『CanCam』など雑誌の電子版を読むことができる。「電子書籍は実際にこんな風に読める、という体験を自然にしてもらいたかった」(中島氏)

楽天カフェ内には、1階全席と全カウンター席にKoboの端末が複数設置されており、『CanCam』『DIME』をはじめ、電子書籍がすぐに読めるようになっています。こうした「実際の雑誌を読むのと変わらないな」と思ってもらうような体験をカフェの中でしてもらう。

これは、スイーツにも同じことが言えます。インターネットショッピングは、店舗で商品を実際に見られるわけでもない。その、見えないところで購入することに対する漠然とした不安感を抱いている人もいるでしょう。

そこで、スイーツについても楽天カフェで購入して食べてもらうことで「普通にカフェに入って、ショーウィンドウで選んで食べていることと何ら変わりない」ということを実感してもらいたい。

——当たり前であることを、リアルな場であえて経験してもらうということですね。

そうです。ネットのサービスについて漠然としたイメージを持っている人に対して、本質的な価値を実感してもらうことで、「ネットだからといって特別なことはない」ということを感じてもらいたい。

そのためには、生活者が普通に過ごしている日常の中に、ネットサービスである我々の方から入っていって、“リアルの土俵”の中で、ネットサービスを実感してもらう。そうすると、普段自分が知っている世界の中に自然に入ってくるので、違和感なくその体験を受け入れられる。

目の前に実在の形があるものを見て触れることで、ストンと「腹落ちする」ことはまだまだ多い。日常生活の導線上に完全に入ってしまうことは、ネットの部分を生活者に実感させるためには非常に効果的だと思います。

また、多くの方は「楽天」という会社名は知っていても、どこにも店がないので実感値がありません。したがって、「カフェ」という、自分たちの慣れ親しんだ日常生活の一部に入り込むことで、楽天という会社そのものを実感してもらうということも考えました。

次ページ 「企画からオープンまでは1年足らず、徹底した現地調査を実施」に続く