メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×

素人集団だからこそ常識にとらわれなかった~「楽天カフェ」オープンへの道~

share

企画からオープンまでは1年足らず、徹底した現地調査を実施

——では、楽天カフェ設立にあたって、どのくらいの準備期間が必要だったのか。また社内のどの部門が、設立を主導していったのかについて教えてください。

最初に話が出てから店舗がオープンするまでは1年もかかっていません。設立を推進したのは、私が管掌している「グループマーケティング部」です。当然のことながら我々にはカフェをオープンさせた経験もないし、知見もありませんでした。さらに普段は別の役割がありますから、今年の1月くらいまでは専任を置かず、通常の仕事と兼任で2名くらいの体制。2月からはようやく専任チームを設けましたが、それでも4名体制でした。

——1年もかかっていないということですが、プロジェクトはどのように動いていったのでしょうか?

経験がない分、外部のパートナー企業にカフェのオープンを考えていることを伝え、形を作っていこうとしました。ただ、求めていたものとは大きな開きがあり、結果的に、自分たちでフィールドリサーチからはじめて、全部作っていきました。

例えば、店内の椅子、ソファ、テーブル選びについても、部のスタッフ全員で実際のカフェに足を運び、そこでどのようなものが使われているのかをリサーチして、自分たちのイメージに近いものを選んでいきました。

店舗の外観も、最初の提案はやはり思っていたことと離れていました。そこで、今回外観などのデザインをクリエイティブ・ディレクターとして監修いただいた佐藤可士和さんとともに、どういうデザインがよいかなどを相談して進めていきました。

事前に提案のあった外観(左、中)と、実際の外観(右)。最終的には、「R」を大きくデザインしたものとなった。

さらに店内で提供しているメニューについても同様です。楽天市場の中でカフェに関連する商品を扱っている1000以上ものサイトを見て、その中から数百商材をピックアップ。絞り込んで実際に取り寄せ、外部のアドバイザーの意見もききつつ厳選してから、我々が直接個別の店舗と交渉していったのです。

——さきほど、パートナー企業から提案されたものが、考えていたことと違っていたということですが、そうした中で具体的にどう進めていったのでしょうか。

まず、楽天カフェの空間そのものから受けるイメージが、そのまま「楽天市場」のみならず「楽天」という企業も含めたサービス全体の印象を決めることになるので、コンセプトとデザイン設定は徹底的に行いました。

提案が我々の考えと違っていたのは、楽天カフェを作るということに対して、楽天の社員だからこそ理解できる点が多々あったからではないかと思います。

いただいた提案の中から選んで、それをマイナーチェンジするのではなく、本当に一から作り上げていったのです。

こうしたことができたのも、「カフェはこういうもの」という思い込みがなく、常識にとらわれずに考えて進めていった結果だと思います。

店内の空間は、ウッドを基調とした落ち着いた空間に。テーブル、椅子などは、グループマーケティング部が実際に全国キャラバンし、さまざまなところに足を運んで、イメージに合うものを探した。パートナー企業からの当初の提案は、カントリー調の椅子やソファーが中心だった(上)を、部門のメンバー全員で休日にフィールドリサーチをして、スタイリッシュ・モダンな椅子やソファーを自分達で探してきた(下)。

——「常識にとらわれない」かたちで進めたものはなんでしょうか?

メニューがまさにそうですね。最初に提案されたメニューは写真の通りで、これは一般的によく見るデザインです。しかし実際の楽天カフェのメニューデザインを見ていただければ分かる通り、縦長でちょっと変わった形をしています。これは、「楽天市場」の店舗の販売ページをアレンジしたものです。

楽天市場の商品ページはロングページと言われるように縦に長く、そこには商品に対するこだわりや想い、ストーリーなど、さまざまなことが詰まっている。だから、メニューにおいてもそれを出さなければ意味がないと思ったのです。

店内のメニューも、提案があったのは統一されたデザインの見慣れたもの(左)。「楽天市場」そのものを体現するという狙いから、楽天市場の販売ページを模したデザインとなっている(右)。

——また、一つの定型デザインにまとめず、あえてそれぞれの店の特徴のまま見せているのも印象的ですね。

楽天市場はショッピングモール型なので、店ごとのテイストはバラバラ。むしろそういうごちゃごちゃした感じが特徴なわけです。メニューが楽天市場を体現するものなら、キレイにまとめてしまってはいけない。カフェとしては統一感があってそれが当たり前かもしれませんが、それは楽天市場を体感して欲しい私たちのやりたいことではありません。このあたりも何度もやり直してこだわって作りました。

もう一つが、店内の無料Wi-Fiの環境。楽天はIT企業ですから、単に「店内でネットが無料で使えます」ではなく、最高レベルのWi-Fi環境を整えたかった。そこで1Gbpsの専用線を引きました。これは通常の約10倍のスピードです。それにより「通信速度が劇的に速くなることで、自身のネット体験がこんなに変わりますよ」ということを、体感してもらいたかったのです。

次ページ 「ソーシャルメディア上で「楽天カフェ」がトレンドワードに」に続く