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伝統技術と天然素材 自社の資産を生かし、都市生活になじむ商品開発に挑む――中井産業

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企業を変えた「売れ続ける仕組み」

成熟化したと言われる環境下でも、新たな顧客を創造し、市場を創る経営トップがいます。そして、そこには瞬間的に売れるだけでなく、売れ続けるための全社を挙げた取り組み、さらには仕組み化があります。商品戦略、価格戦略、流通・販路戦略、プロモーション戦略に着目し、売れるためのアイデア、仕組みを解説・紹介していきます。

【企業を変えた「売れ続ける仕組み」】
商品訴求と企業ブランディングで進める大麦市場活性化
小ロット販売でB2BからB2Cへ顧客が拡大〜タイセイ
ネットでデザイナーズ家具を販売 絞り込むことが逆に人を集めた「リグナ」

中井産業のここがポイント!

  • 建具の下請け事業者から脱却し、自らのブランドを持って、住宅メーカーや建築士に直接提案する建具メーカーへと変わった。
  • 和室が減り、建具の需要が下降傾向にある中、現代の生活空間にも調和する建具を、クリエイターと共に開発。
  • 建具に関心を持つ消費者は決して多くない。空間づくりの起点として機能する、カッコ良い障子の啓蒙を目指す。

脱・下請け事業者、メーカーを目指す

障子は、室内に外光を取り入れながら外からの視線を遮ることができる、日本の伝統的な建具だ。その柔らかな光に包まれた空間に身を置くと、心が落ち着く人も多いはず。

だが近年、新築の住宅やマンションにおける和室の数は減少傾向にあり、それに伴って障子やふすまなどの建具の需要も下降傾向にある。

障子の良さをもう一度見直してもらいたい。和室という枠に捉われず、障子を活用して素敵な空間を演出できることを知ってもらいたい。そうした思いから、新しい障子の世界を切り拓こうとしているのが木製建具メーカーの中井産業だ。

同社はオリジナル建具ブランド「KITOTE(木と手)」を開発。昨年11月に東京ビッグサイトで開催された「Japan Home&BuildingShow2014」でブランドと新商品を発表し、反響を呼んだ。

中井産業が本社を置く和歌山市は建具事業者の集積地。同社は元々、住宅メーカーや一級建築士から発注を受けた建具店からの依頼で、障子などを製造する建具の下請け事業者だった。

そんな同社がなぜ、自らブランドを開発するに至ったのだろうか。代表取締役社長の尾﨑義明氏は、「建具屋は『待ち』の仕事」と言う。

建具業界は職人の徒弟制度の伝統を受け継ぐ世界で、職人の親方が社長を兼務する家内工業的な小規模事業者が多い。注文通りの商品を納期までに納めるという仕事を長年やってきたため、「営業をして攻めて行く」という発想そのものがないという。また、営業のスキを持つ事業者もほとんどいない。

しかし足元を見れば、仕事も職人の数もどんどん減少しているのが実情。尾﨑氏は、「注文が来るのをただ待っているだけでは、衰退するのを待っているようなものだ」と強い危機感を抱いた。そこで一念発起して、下請けから脱却し、メーカーを目指すことを決意した。

「メーカーになるということは、大手建材メーカーと同じ土俵で戦うということ。アリがゾウに戦いを挑むようなものです」と話す尾﨑氏は、同族経営が多い建具業界では珍しい、大手建材メーカーの営業畑出身。営業マン時代に中井産業を担当しており、当時の社長から営業手腕を認められ、3代目社長として招かれた。

尾﨑氏は「外部から来たからこそ、この業界を俯瞰的に見て、弱点や価値を判断することができた」と言い、「自分たちの強みは天然木と職人の技」と話す。

大手企業は効率と均一な品質を重視する。天然木を使う際に必要な目利きや、1本1本特徴が異なる天然木を加工する職人の技は、大手にはない価値だ。そう考えた尾﨑氏は、天然木を使い、職人の手でつくる、自社オリジナル商品を開発しようと考えた。

「これまでは、建具店から注文があったものを注文通りにつくるのが仕事で、『何でも作れる』のが強みでした。しかし、『これが自社商品』と呼べるものはなかった。初めて、外部に向けて紹介できる自社商品をつくろうと思い至ったのです」。

次ページ 「自社ブランドを持つことの意味」に続く

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