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Epicaグランプリ受賞、資生堂「メーク女子高生のヒミツ」動画制作の舞台裏

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「信じられないパワフルなアイデア、極めて完成度が高く、まるでショートフィルムのよう。ジェンダーの捉え方も非常に印象的」——フランス発の国際広告賞「Epica Awards」で審査員に絶賛された資生堂の「High School Girl? メーク女子高生のヒミツ」。とある女子高の放課後の教室で、カメラに謎めいた視線を投げかける美しい女子高生たち。だが実はその正体は“男子”校生だという秘密が、逆再生の演出を通じて明かされる。10月15日に公開し、公開後約2カ月で800万回あまり再生されている。この動画が生まれた背景など制作の舞台裏を、資生堂 宣伝・デザイン部 クリエイティブディレクターの小助川雅人さん、同 クリエイティブディレクター/コピーライターの島 聡さん、同 クリエーティブでWeb制作を担当した矢村智明さん、制作会社Watts of Tokyoの今井義人さん、木島正博さんに聞いた。

左から、Watts of Tokyo木島正博さん、資生堂 矢村智明さん、資生堂 小助川雅人さん、Watts of Tokyo 今井義人さん、資生堂 島 聡さん。

若者にアプローチできる動画は何か?
社内研修で生まれたアイデアが発展

——まずこの動画が生まれた背景について教えてもらえますか。

小助川:元々は、若者のテレビ離れとネット利用の増加にいかに対応すべきか、という問題意識からはじまった企画です。資生堂にはオンライン動画の成功例がまだありません。若者へアプローチする実験を、動画を使ってしてみたいと思っていました。

また、魚谷(雅彦)社長からは、常々、資生堂ブランドのイメージを含めた若返り施策が求められています。10代の女性の間には、資生堂はお母さんのブランドというイメージがあります。安心だが高くて真面目である、というイメージをどう変えていくかが課題でした。

この2つの要素に、宣伝・デザイン部のデジタル研修のワークショップで出てきたアイデアがうまく組み合わさったんです。研修のテーマは「化粧用具のリブランディング」。優勝チームのアイデアは「メーク男子(女装男子)」をテーマにしたコンテストイベント(女装甲子園)を行うというものでした。

この3つが掛け合わさり、「メーク男子の登場する動画を制作し、若者の資生堂のイメージを変える」ことにチャレンジすることになりました。

今井:Watts of Tokyoは、企画コンテ段階から参加しました。企画コンテを何十案も出し、それを絞り込んだうえで、女子高生にグルインを行ったんです。そこで圧倒的に評判がよかったのがこの「メーク女子高生のヒミツ」でした。

小助川:キャストは、高校生雑誌「HR」で活躍している男子高校生の読者モデルたちです。オーディションでは実際に全員にメークを行い、女の子らしく見える顔だちかどうかを見ています。

——なぜ、7時間ワンテイクのドキュメント映像、という企画になったのでしょうか?

小助川:企画コンテの段階で、逆再生まではアイデアは固まっていました。そこから、柳沢翔監督に入ってもらい、話し合いを進めていく中で「複数人を出したい」「変身するプロセスを主役に見せていくのが面白い」という意見が出て、今のディテールが固まっていきました。僕たちは「世界初の逆再生タイムラプス」と言っていたんですが、実現するには6~7時間かかり、しかも一発撮りでやるしかない、と。

——事前の準備が相当求められますね。

木島:人数を変えてみたり、カメラワークを変えたり、何度もリハーサルを行いました。僕らスタッフがメークの練習台になったり(笑)。実際の撮影は分刻みにならざるを得なくて、事前のスケジューリングに綿密さが求められました。

——ヘアメイクは、資生堂社内(ビューティークリエーション研究センター)のヘア&メーキャップアーティストの方々が参加をしていますね。

小助川:最初話を持って行ったときは「なぜこんなことをするんだろう」という反応でした。資生堂のヘアメイク部隊は日本屈指の技術者集団です。なのに、なぜ素直にビューティーをやらないのか、と(笑)。

島:とはいえ、世の中の一般的な女装は“やりすぎ”になってしまう。隠そうとして過剰になるからです。それをナチュラルメイクで“普通”に見せるのは技術です。この動画はそういう意味で、資生堂だからこそできる、資生堂の技術を生かした企画なんです。

次ページ 「デジタルでもクラフトマンシップが力を発揮する」へ続く