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マネタイズは?指標は? 2016年、マスメディアが向かう先

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いまや“オールドメディア”とも評されるマスメディアだが、テレビをはじめ、“マス”としてのリーチ力はいまだ絶大であり、ネットとの共存も進む。立場の異なるメディアパーソン3人が、これからのマネタイズや指標、広告ブロック問題に切り込む。

  • TBSテレビ 制作局 バラエティ制作部 兼メディアビジネス局 スマートイノベーション推進部
    角田 陽一郎
  • 講談社 ライツ・メディアビジネス局 局次長 兼第一事業局 局次長 兼 広告戦略部長
    長崎 亘宏
  • コピーライター/メディア・コンサルタント
    境 治


0次利用でいかにマネタイズするか

―自己紹介からお願いします。

コピーライター/メディア・コンサルタント境 治 氏

境:もともと広告会社でコピーライターをしており、その後プロダクションで主に映像制作の仕事をしていました。現在はメディア・コンサルタントを名乗り、テレビを中心にメディアが今後どうなっていくのかについての情報発信をしています。

長崎:広告会社を経て講談社に入社し、広告商品の開発やイベント事業を担当してきました。2015年の組織改編でライツ部門と広告営業部門が統合して、さらに編集部門を兼任することになり、3つの職種の交差点にいます。雑誌広告効果測定調査「M-VALUE」やJIAAのネイティブ広告部会にも携わっています。

角田:僕はもともと『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』などのバラエティ番組のプロデューサーをしていました。現在はバラエティプロデューサーを名乗っていますが、バラエティというのは「いろいろな」という意味なので、番組以外にも本を書いたり、映画を監督したり、ロックフェスを主催していたりもします。

境:いろいろやられているんですね。

TBSテレビ 制作局 バラエティ制作部 兼メディアビジネス局 スマートイノベーション推進部 角田 陽一郎 氏

角田:現在は、『オトナの!』という番組をプロデュースしています。これはTBSの通常の編成予算ではなく、自分たちの部局でマネタイズをして成立させている独立採算番組なんです。

境:テレビ番組を360度で経営するようなイメージでしょうか。

角田:僕は“0次利用”という言い方をしています。一次利用が放送、二次利用がDVDやグッズだとすると、テレビは0次のところで収益化やビジネスモデルを考える必要があると思うんです。以前『関口宏の東京フレンドパーク2』という番組にアイドルグループがゲスト出演した時、視聴率が20%を超えました。その収録を見ていて気付いたんです。通常の番組はTBS内のスタジオで収録するけれど、それを0次として事前に来場者だけが楽しめる有料イベントにして、その後編集して中身を凝縮したものを放送する。そうすれば、収益性からも放送以上のインパクトがあるわけです。テレビはこれまで広告による収益モデルで成立してきましたが、視聴率をとるから好きな番組をつくるという姿勢ではなく、面白いことでマネタイズをする仕組みからつくればいいと思うんです。“おもしろ原理主義”と言うか、僕はそのほうがピュアに面白いことが放送できると考えています。

講談社 ライツ・メディアビジネス局 局次長 兼第一事業局 局次長 兼 広告戦略部長 長崎 亘宏 氏

長崎:出版業界の合言葉は、「0から1」です。プリントメディアとしての限界がありながらも、出版社は常に0から1のコンテンツをつくり出しています。その一部が、他のプレーヤーによって10だったり100になる。つまり映像化や事業化され、コンテンツとして拡張されていきます。角田さんのお話では、従来的なお金の力学というものに左右されない0のところで、コンテンツ化してしまうという発想ですよね。テレビ局にそうした考えを持っている方がいることに、驚きました。

境:約5年間在籍した映像制作プロダクションで、僕は経営企画室にいたのですが、経営を考える上では未来についても考えないといけなかったので、テレビ局の決算などを見ながら、「これからはテレビが大変だ」ということをブログで発信していたんです。そうしたら、テレビ局の人からの反響が大きくて、当時からそうした問題意識を持っている人が多いのだと感じていました。

角田:長崎さんがおっしゃるように、いまは1から100の構造が、劇的に変わっているんですよね。僕もこれまで、テレビというフレームの中ですべてのフリとオチを考えていましたが、もっと広い視点で考えたほうが楽しいと気づいたんです。例えば音楽にしても、音楽が楽しいこと自体は変わらないわけです。それは0の部分であって、これまでは1以上にあたるところをCDのアルバムという括りで楽しんでいた。それが、いまはストリーミング内で、自分でプレイリストをつくって括って楽しむことができます。そうした1から100への変化に気づけるかどうかが、2016年を大きく左右すると思うんですよね。

次ページ 「必要なのは感情の起伏を測る指標」へ続く