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「冷静と情熱のあいだ」採用担当者に求められる力とは、これである

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新卒学生の採用期間の短縮と繰り下げによって優秀な人材の青田買いが加速し、企業と学生のコミュニケーションのあり方が変化している。こうした変化に対応している企業は、これまでの人事の視点に加えて、伝えたい情報を適切に学生に伝え、関係を構築していく広報とマーケティングの視点から採用戦略を見直している。そこで宣伝会議では、採用におけるコミュニケーション戦略の設計とその実践ノウハウを学ぶ「採用広報講座」を開講する。その講師でありキャリア、若者論などに詳しい常見陽平氏に採用活動のポイントを聞いた。

画像提供:shutterstock

『冷静と情熱のあいだ』という作品がある。1999年に江國香織と辻仁成が書いた小説である。個人的には、エコーズのボーカリストでオールナイトニッポンのMCをしていた辻仁成が、芥川賞作家になったのにはびっくりした。

エコーズはのちに川村カオリがカバーした「ZOO〜愛をください〜」くらいしかしらないし、彼のオールナイトニッポンは、

「Hello Hello This is Power Rock station こんばんはDJの辻仁成です。真夜中のサンダーロード、今夜も抑えきれないエネルギーを探し続けている、ストリートの上のロックンライダー、夜更けの固い小さなベッドの上で愛を待ち続けているsweet little sixteen。愛されたいと願っているパパも、融通の利かないママも、そして今にも諦めてしまいそうな君にも、今夜はとびっきりご機嫌なrock’n roll musicを届けよう。アンテナをのばし、周波数をあわせ、システムの中に組み込まれてしまう前に、僕が送るHot Number をキャッチしておくれ。愛を!愛を!愛を!今夜もオールナイトニッポン!!(当時の放送から書き起こし)」

という超絶意識が高いというか、ウザい前口上が有名だった。そんな人が大作家先生になるとは。人生とはわからないものである。

いきなり脱線してしまったが、この『冷静と情熱のあいだ』というタイトルは、実は採用担当者に求められる普遍的な力を物語っていると思う。そう、採用を成功させるためには冷静さと情熱が両方大事なのだ。

前回のエントリーで大批判したように、情熱だけでは採用は上手くいかない。意識高い系採用担当者も松岡修造系採用担当者も結構だが、要するに採れるかどうかが大事なわけで。何度でも、何度でも立ち上がり叫ぶが、採れない採用担当者はただのコストなのだ。

もっとも、情熱に過度に寄り過ぎるのは問題だが、その求職者を採用したい、人材から組織を活性化させたい、この企業を変えたい、そんな情熱がなければ採用活動は成功しない。また「情熱だけ」で求職者を口説くのは危険だが、とはいえ、最後は情熱がものを言うのである。経団連の指針は2017年度も改定されたが、学業を阻害しない採用を行うことが強く要望されている。学生にとっては嬉しい配慮かもしれないが、採用担当者の実務はますます過酷になる。採用活動は情熱なしでは乗りきれない。

情熱以上に必要なのは、冷静さだろう。環境を分析し、戦略を立案し、PDCAサイクルをまわしながらやり切る力。当たり前といえばそれまでだが、この力が求められる。

個人的に、人事の方々とお会いしていて感じるのは、もっと学生のことを分かって欲しいということである。どの企業でも入社1、2年目の若手が採用担当者に起用されたりする。「学生の気持ちがわかる若い感性で我が社の採用を変えて欲しい」などと期待されるわけだが、冷たく言うならば彼ら彼女たちには現役学生ほど自分たちが若くないことを直視して欲しい。学生の意識というものは時代によって、その時の景気によって変わるものである。気づけば、昨年響いていたような訴求では学生に届かなくなるということがよくある。

自社のこともよく理解して欲しい。どの企業にも言葉にならないような、一見すると何でもないような魅力があるものである。「ウチは大手さんとは違うし・・・」「うちは不人気業界だから・・・」など自虐的になる採用担当者がいるわけだが、とはいえ何らかの魅力はあるはずだ。抽出する努力を怠ってはいけない。これがないから、気合いと根性の、情熱的な口説きになってしまう。それでは賢い学生は採れないのだ。

ベンダーコントロール力も鍛えて欲しい。要するに就職情報会社との付き合い方のことだ。過度な友達感覚になってはいけないし、業者扱いして無茶振りばかりするのもよくない。どうやったらそのベンダーの力を引き出すことができるかと考えて欲しい。

書き出すときりがなくなるが、情熱と冷静さのバランスというものを採用担当者は意識して欲しい。情熱だけでは採用できないのだ。最後に、自分から「戦略人事」とか言い出すのはやめてほしい。そう思っている奴に限って、別に賢くもないし、戦略性もないものである。恥ずかしいからやめるのだ。採用担当者には、会社の未来に関わる仕事をしているという誇りと、営業の皆さんに食べさせて頂いているという謙虚さが両方必要なのだ。


常見 陽平 氏
評論家・コラムニスト

一橋大学商学部卒業。リクルート、玩具メーカー、コンサルティング会社を経てフリーに。2014年3月に一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。著書に『なぜ、あの中小企業ばかりに優秀な人材が集まるのか?』(日刊工業新聞社)、『「 就社 」志向の研究』(KADOKAWA)、『「できる人」という幻想』(NHK出版)。


常見氏が講師を務める、
採用におけるコミュニケーション戦略の設計とその実践ノウハウを学ぶ
採用広報講座
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