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コトバで解決できる人。

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ライバルから学ぶ。

ほぼ毎回、デザインの課題が出るので、僕は他の生徒の作品をみて、筋が通っている企画をつくる人に、授業の後に声をかけました。「あの○○の企画面白いね!」と話かけて、「今度一緒に○○広告賞ださない?」これを繰り返しました。同じ課題を受け、それに対する企画案をみているということで、努力量や理解力、デザインのトーンなどのお互いの自己紹介は充分に済んでいる。だから盛り上がりも早い。

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でも、そこで学んだのはデザインのことだけじゃなく…。例えば、打ち合わせの時間。仕事の後だから、夜の0時過ぎ。「すいません1時には着きますからっ」など。そんなに激務の後でも、一緒に新しいものを作ろうとしている。さらに課題の提出作品もレベルが違っていた。「デザイン案を持ってこい」という課題なのにメインビジュアルだけじゃなく、原寸大のポスターや店頭POP、交通広告になった際の掲載イメージを持ってくる。リーフレットや、型抜きのポスターにまで仕上げて提出する人がたくさんいた。個人差はありますが、コピーライター養成講座では「時間がない」とか「仕事が忙しいんだよね…」なんて声もたくさんあった。あぁ、危ない…。実際に働いている現場の人は、講座の課題でもここまで完成度あげて提案するのか。それが現実だったのか、と目が覚めました。そんな熱のある彼、彼女らに仕事の姿勢を学ばせてもらった。

あっという間に半年は過ぎ、講座内リクルーティングでの公募賞計画はファイナリスト止まり。けれど、それまではパワーポイントで入稿したデータを公募賞に出していたから、それに比べれば大分いい環境、いいチームを作れた。修了式の時にグループ展をやろうと誘われたのですが、当時の僕は「なんで誰にも依頼されてないのに、広告を考えるの?何を伝えるの?」と甘ったれた考えでした。でも反射的に「参加っ」と応えていて、またここでビシッとやられるわけです。

先に良い案を出した奴がリーダー。

「ちょっと展示会のテーマを決めるために集まらない?」ってことで集合するわけです。8人くらい。ふらっと会議室に集まると、F君が「あのさ、こんなテーマがあるとしてね。で、例えばなんだけど」といって、デザイン案を出すんです。手書じゃなくて、デザインカンプが出来ている。皆で、いいね!と盛り上がりつつ、K君が「僕もちょっと考えてきたんだけど」と言って3方向ぐらいのポスターと、DM案を出す。さらに紙の加工はこんな感じ、なんて言って会議が進むわけです。打ち合わせどころか、自分たちのイベントのアタマ張るためのプレゼンだったわけです。しかも企画案を提出する奴ほど、仕事で忙しい活躍中の人で・・・。

「あぁ、彼ら彼女らは、たとえ賞に入らなくても仕事勝ち取れるよな、自信もつくし、信頼もされているのだろう」と僕は、素直に受け入れるのは…くやしいから、まずグループ展の参加者じゃなくて幹事に立候補しました。DMのタイトルやコピーは他の奴に負けてなるものかと。でもコピーさえ簡単には通してもらえない。普段から仕事現場でコピーライターと組んでいるので、しっかりと筋が通っていて、アイデアのあるコピーを求めてくる。でも、それが嬉しかったし、勉強になった。

Excelでもポスターは作れる。

そして第一回目の展示テーマはコピーライターの眞木準さんから、いただきました。『「あんたも発展途上人」というコピーにデザインを付けて良いよ』と。仲間のデザイナーたちは、意気揚々とデザイン企画を練りだす。「さぁ、僕はどうしよう。ボディコピーはまだ自信ないし、キャッチコピーは既にあるし。考えた末、「発展途上人」、つまり自分たち若輩者の思いをコピーにして、たくさんコピーを書こう作戦へ。発展途上人10テーマに100本書けば、1000本か」。山手線(内回り)に乗っている時に、そう決めました。

一枚のポスターに1000本のコピーをレイアウト。そのポスター、Excelで作りました。(無知だから、恥ずかしいとか、怖いとか思わなかった)来場者から、「1000本のコピーが、離れた距離から見ると地震の波動みたい。そういうデザイン意図なんですよね?」と感想をいただき…偶然でしたが、そのデザイン意図は若さ、勢い、熱に合っているので(来乗客の方のですが)採用しました。

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さらに、ある銀行の方に1000本の中の一本のコピーが、企業テーマに合っているということで、そのポスターを購入いただきました。初陣で首を挙げることができて嬉しかったなぁ。グループ展示は一年に一回開催し、7年続きました。イタリア・フィレンツェに行って出前展示会をやったり、TCC新人賞を獲ったり。NYADCもそこで出会った仲間あってこそ。このコラムを書いている今日もその頃のメンバーとプレゼンに行ってきました。

ルール:学んだことを一週間以内に仕事に使う。

今、制作部署じゃない、広告会社社員じゃない人へ。僕も営業でした。メディアの提案をしていました。自分で自分を訓練する覚悟と“しつこさ”があればコピーライターになれます。Excelで作ったポスターでも、コピーで価値は作れます。

コピーじゃなくても、広告屋として解決力を付けたい方。人は問題を解決するとき、必ず言葉を使う。その後、アウトプットがキャッチコピーやデザインやキャンペーンの仕組みになったりしますが、その中心に言葉在り、です。

うん。動かない理由はもうないですね。ちなみに講座の受講生だった時の自分のルールは「講座で学んだことを次週までに自分の仕事の中で使うこと」。仕事の大小は問わず。僕自身は “あぶらとりがみ”のようなペラッとした人間ですが、周りには脂がのっている仲間がいた。彼らの力を借りたり、彼らに求められるような企画を作ったりして、ホフク前進してきました。などなど、ここでは書ききれなかった話を、コピーの課題と合わせて、毎回していきます。

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安田健一 氏
桜 クリエイティブディレクター・コピーライター

1976年東京生まれ。広告会社営業を7年、コンサルティング会社3年を経て株式会社桜を設立。セゾン・アメリカン・エクスプレス・カード「あなたと一生プレミアム」「人生を旅する、すべての人に」、NATURAL LAWSONブランディング、WWF JAPAN「いいなあ人間は。高齢化が悩みなんて。」、にんべん「日本橋だしの料理帖」、ジェラートピケ「あなたの髪を肌よりやさしく、いたわりたい。」、おむすび権米衛「手のひらが、厨房。」、「世界を変えるデザイン展」実行委員兼クリエイティブディレクター、東京コピーライターズクラブ「コピーは、あなたの鏡です。」等。TCC新人賞、NYADC賞、Cannes lions -shortlist- 、ONE SHOW -DESIGN MERIT AWARD-、グッドデザイン賞、毎日広告デザイン賞、他。


安田氏が講師を務める「コピーライター養成講座 叩き上げコース」が1月30日に開講します。コピーの作法や考え方はもちろん、大手広告会社の所属でなくても、またクリエイティブではなく営業からスタートだったとしても、コピーライターとして活躍する術を教えていきます。
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