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米・Facebook社マーケティングトップに聞くInstagramの日本市場の戦略

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現在、月間アクティブユーザー数は4億人を超える、Facebook社の「Instagram」。日本の月間アクティブユーザー数も昨年6月末時点で、810万人を超え、新しい消費者との接点として、企業の関心も高まっている。11年前に8番目の社員としてFacebookに入社し、最近では主にInstagramを活用した、企業とユーザーをつなげるためのマーケティングプログラムの実施を支援してきたマット・ジェーコブソン氏に、最近のInstagramのマーケティング活用ケースのトレンドを聞く。

——日本市場をどのように位置付けているか。

マット・ジェーコブソン氏

ユーザーコミュニティの活性、広告ビジネスの両面で日本は重視している市場だ。2年前からグローバルの中でも、特に重要なエリアと位置づけて戦略を企画・実行してきた。アジア市場で新しいプログラムを導入する際のテスト市場としても重要視している。

——ユーザーのInstagram活用について、日本ならではの特徴はあるか。

Instagramはプラットフォームなので当然、文化的背景の違いによって、国や地域で活用のされ方は異なるものだ。日本において特徴的なのは、Instagramが浸透する以前から、写真を共有する文化が根付いていたということ。Instagramが短期間で受け入れられた要因の一つに、この特徴が挙げられると思う。

——日本のユーザーには、以前から写真を介したコミュニケーションは浸透していたとのことだが企業に目を向けると、日本はビジュアルコミュニケーションの知見はあまり積んでこなかったのではないかと考える。ビジュアルコミュニケーションの強みは言語の壁を越えられることと思うが国内市場でのビジネスについては、日本語という言葉のコミュニケーションが重視されてきたのではないか。

日本には、そういった背景もあることも理解している。そうした背景を踏まえ、日本のオフィスにも「クリエイティブ・ショップ」という組織を立ち上げた。ここには日本のクリエイティブ・エージェンシー出身者が集まっており、新しいプラットフォームにおけるコミュニケーションのシナリオやコンテンツづくりのサポートをする体制を整えている。

日本でも日本の市場に合った、ビジュアルコミュニケーションのあり方をクライアント企業と一緒に、考えていきたい。

——FacebookやInstagramのような新しいプラットフォームは、どのようにブランディングに役立つのか。

ブランディングにおける活用はFacebookもInstagramも同じだ。例えば、私が過去に関わったFacebook のプラットフォームを使ったケースにJPモルガン・チェース銀行の社会貢献活動がある。同社は$100millionのドネーションを行う際に、Facebookのユーザーを巻き込んで、そのドネーション先を選んでもらうプログラムを行った。またインテルと共同で、ユーザーにアニメのショートフィルムを投稿してもらう企画も実施した。最終的には映画館でも上映され、非常にすばらしい作品が集まった。

両社のプログラムの根幹にあるのは、企業が自らFacebookというプラットフォーム上でストーリーを語り、そのストーリーに共感したユーザーが企業と対話したり、あるいは投稿をするなどのアクションを起こすという一連の流れである。

ここで言うストーリーとは、そのブランドの社会的な位置づけや役割、価値についてのその企業自身の解釈であり、その解釈(ストーリー)についてユーザーが意見をし、会話に参加する中で、コミュニティがつくられていく。

そして、このコミュニティが基盤となって、新しくブランドがつくられたり、あるいはより強固なものになっていく。Instagramの場合には、そのコミュニケーションの手段がビジュアルになっているというだけで、活用の仕方に大きな違いはないと思う。

こうした活動はデジタルメディアが企業のマーケティング活動に大きなブレイクスルーをもたらすものである。双方向のコミュニケーションが成り立つからこそ実現しうる、ブランディングの在り方だと思う。

——デジタル時代にブランドのつくられ方はどう変わったと思うか。

企業が一方向でメッセージを伝えることしかできなかった時代と異なり、双方向のコミュニケーションが実現する現代は、ブランドを短期間でもつくれるようになったことが大きな変化だと考える。

こうした土壌が新興のブランドのチャンスをつくりだしているが、一方で老舗のブランドにも素早い反応・アクションが求められるようになっている。もちろん、この変化に対応できている老舗ブランドは、これまでのブランド力をより強固なものにすることに成功している。新興のブランドのケースでは、ヨーグルトブランドの「CHOBANI」が、老舗の先進事例ではメルセデス・ベンツのケースが参考になると思う。

——属性、嗜好性によるターゲティングが、SNSで広告を打つ際のひとつの特徴と思うが。

ターゲティングは素晴らしい機能ではあるが、決してそれが唯一の者ではない。狙ったターゲットに効率的にリーチすることも大事だが、当然、真に大切なのは最終的な目標と掲げるビジネスの成果を実現することだ。

時にあえて広くリーチすることによって、そこで得られるインサイトもある。
マス広告全盛の時代から長く広告業界にいる人は、「広告の半分は当たっていない。でも、なぜうまくいっていないのかがわからない」といった話をする。デジタルメディアの強みは透明性にあり、万一ターゲットに適切にリーチしなかった場合にも、数値を見ることでその原因と理由を分析することが可能であり、そこからも大きなインサイトや新しいシナリオを見つけることができる。

また広告の活用だけでなく、全世界の何億ものユーザーが多様なコミュニティをつくり、日々コミュニケーションをしている場は、消費者を理解する場としても、ますます活用の可能性が広がっていると思う。


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