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コラム

『編集会議』の裏側

見城徹、堀江貴文という大物著者を若き編集者はどう口説いたのか

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数多くのベストセラーを生み出してきた編集者であり、幻冬舎の社長でもある見城徹氏。“IT時代の寵児”として注目を集め、多くの若者から支持される実業家の堀江貴文氏。『編集会議』では、2人の話題作を手掛けた、若き編集者のインタビュー記事を掲載。「いくら良好な関係になれても、売れなければ意味がない」と語る、“口説き”の極意とは。

※3月16日に発売された『編集会議』では「コンテンツ・ビジネス」を総力特集しています。

最も難しいところにこそ
あえて最初に行くことが重要

——双葉社時代、広告営業を経て編集者になった最初の年に担当した書籍が、見城徹氏と堀江貴文氏。どちらもビッグネームでしたね。

幻冬舎 編集者 箕輪厚介氏
1985年、東京都生まれ。早稲田大学卒業後、2010年に双葉社に入社。広告営業を手がけるかたわら、2013年に『ネオヒルズ・ジャパン』与沢翼を創刊。2014年から編集部に異動。『たった一人の熱狂』見城徹、『逆転の仕事論』堀江貴文などを担当し、2015年幻冬舎に入社

もともとお二人のことがすごく好きで、本もすべて読んでいました。だから編集者になってすぐに二人に出版のお願いをするというのは、僕にとっては自然なことでした。ただ、当時の上司からは「業界も狭いし見城さんにダメな奴だと思われたら終わりだから、編集に慣れてからのほうがいい」「堀江さんもいまオファーが殺到しているから、難しいと思うよ」などと言われました。

でも、いま考えると、最初にお二人の本をつくれたのは、本当に良かったと思っています。自分が出版したいジャンルがあれば、そのジャンルで最も上にいる人にこそ最初に行き、攻め落とすべきだと思います。僕は経営者の本をつくりたかったので、最も好きだった見城さんや堀江さんを口説くのは必然でした。

もし自分の身の丈を考え、たとえば同世代の若手経営者に行って、そこから一歩ずつ階段を上がっていこうとすれば、このお二人にたどり着くまでに、膨大な時間がかかる。でも、最初に多くの経営者から尊敬されているお二人の本をつくり、信頼を勝ち取って深い関係を築くことができれば、他の経営者は口説きやすくなるし、思わぬ人と出会えるようにもなります。

経験の有無は関係ない。階段は下から上るのではなく、最初に思いっきりジャンプをして、一番上に行ってしまうほうがいい。業界は狭いので、ダメな仕事をすれば悪い噂は広まりますが、逆に結果を出せば大きなリターンもあります。最初こそ、あえて高いところにいくべきだと思います。

どれだけ相手の心に寄り添い想像することができるか

——箕輪さんは、どのようにして、二人を口説いたんですか?

堀江さんの場合は、その頃『ゼロ』(ダイヤモンド社)が大ヒットしたこともあり、出版オファーが殺到していました。多忙な堀江さんが、どういう企画だったらまったく実績も面識もない僕のオファーに、最優先で乗ってくれるか。堀江さんのTwitterの書き込みを見ていると、執筆や取材で時間を拘束されるのは嫌だというのは、容易に想像できます。

だから、拘束時間の長そうなオファーは内容云々ではなく受けないだろうなと考え、隙間時間でこなせる企画を提案しました。僕が8人のイノベーターにインタビューして、堀江さんがそのインタビューを読んでコメントするという企画です。これならば移動時間にスマホでもできる。実は本人に会ったのは、表紙撮影のときが初めてでした。なので、“口説く”という場面はなく、堀江さんの状況や性格を想像し尽くして、即オッケーをもらえると思う企画を出しただけです。

一方で見城さんの場合は、僕は『編集者という病い』(太田出版)を読んで編集者を目指したくらいに尊敬していたので、見城さんがトークライブアプリ「755」を始めてからの書き込みを、ずっと見ていました。それで、この書き込みをもとにした本をつくりたいと思ったんです。

早速「755」を通じて「本にしたいです!」とメッセージを送ったのですが、最初は本気にしていない感じでもあったし、それだけでは失礼だと思ったので、すぐに手紙も出しました。そして手紙を読んだと思うタイミングで、もう一度「755」にコメントしました。そうしたら、「手紙読みました。一度お電話ください」と返信がきたんです。

これまでに箕輪氏が編集を担当した書籍。編集者1年目にして、いきなり見城徹氏、堀江貴文氏という大物を著者とした企画を実現させた。その後、幻冬舎に移り、自身にとって初の新書を手がけた(右)。

——手紙の内容は、どんなことを書かれたんですか。

見城さんは心のこもった手紙だと言ってくださいましたが、普通の手紙だったと思います(笑)。ただ、見城さんが著書のなかで「手紙に自分の話ばかりを書くヤツは最低だ」といったことを書いていたのを知っていたので、見城さんについてひたすら書きました。見城さんのこの言葉が胸に刺さった。見城さんのあのエピソードに影響を受けた。見城さんの「755」が盛り上がっているのはこういう理由だとか。僕なりの想いや考えを文章にしました。

見城さんが書いたものや動画などは、自分が認識している限りすべて見ていましたし、本をつくっている最中は、寝ても覚めても見城さんのことを考えていました。そうなると、段々といま何を考えているか、何を求めているかが、想像できるようになるんです。

例えば「755」で発信された見城さんの言葉が良いと思ったら、それを次会ったタイミングで伝えるのではなく、ものすごくお忙しい人ですけど、その場で電話する。そのほうが絶対に喜んでくれるんです。一方で、堀江さんに同じことをすると、ウザがられます(笑)。俺の大事な時間をつぶすなと。

そういうのって、その人の本を読んだり、近くで接していれば、わかるじゃないですか。最近本をつくったプロブロガーのイケダハヤトさんに手紙なんて出そうものなら、「古来の慣習を守り続ける紙の編集者」ってブログのネタにされてしまいます(笑)。どれだけ相手の心に寄り添って、想像することをできるかが大事なのだと思います。

続きは、3月16日発売の『編集会議』2016年春号をご覧ください。本誌では、下記のようなコンテンツ制作に求められる力についても紹介しています。

「編集会議」2016年春号はコンテンツ・ビジネスを総力特集

特集「読者を開拓するメディア戦略 コンテンツ・ビジネス」

  • 『週刊文春』編集長 1万字インタビュー「スクープ連発の理由と、これからのコンテンツビジネス」
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  • 編集者×デザイナーが語る「『ほぼ日』のコンテンツのつくり方」
  • あの絶妙な切り口はどう生まれる? 『Number』編集長に聞く「編集会議」
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