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デモグラフィック×〝モード〞で考えるスマホ時代のメディアプランニング 横山隆治氏×川崎裕一氏

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広告接触はモードのマッチングが大事

横山隆治氏

横山:ターゲットリーチのその先、どのような環境やモードで接触しているか。これまでの視聴率ではテレビが点いていることはわかっても、実際に画面の先で人が視聴しているかどうかまではわからなかった。本書でも紹介していますが、今では家庭のテレビの受像機にカメラを取り付け、視聴者の状況を観測・把握するシステムなども開発されており、日本でもこれから視聴質測定のソリューションが広がっていくと感じています。スマートフォンでも広告のクリックだけではなく、より詳細なユーザーの接触態度の測定も重要になっていきますよね。特にテレビの補完としてのスマートフォンの活用が進めば、ブランディングへの寄与といった指標やデータも求められると思います。

川崎:僕は生産の道具であったPCと比較し、スマートフォンは消費の道具だと捉えています。加えて、消費の態度も能動的か受動的か、接するメディアによって態度が異なります。メディアプランニングを考える際には、まずこの能動と受動の軸が重要になると思います。たとえばYouTubeは受動メディアとポジショニングをする人がいますが、実際には動画にたどり着くまでにユーザー自らが検索をするという点で僕は能動的なメディアだとポジショニングしています。こう見ていくと、実はフェイスブックはアプリを立ち上げたら、眺めているだけで非常に受動的なメディアと言えます。

「SmartNews(以下、スマニュー)」も受動的なメディアですね。こう考えると、テレビとフェイスブックで流れる動画は視聴態度が似ているとも言えるでしょう。これ以外に、そこで接するコンテンツが有用性の高いモノか、エンタメ軸に寄ったモノかの軸もありますが、こうした構造に目を向け、ユーザーのアクションを基にメディアプランニングをしていくことが必要ではないでしょうか。

横山:オンライン、特にスマートフォンはアクティブに接触するイメージを持たれがちですが、実はスマートフォンでもユーザーがパッシブに接する環境はたくさんありますよね。あと僕が注視しているのは、コンテンツ接触時のユーザーの「モード」です。かつて、総合広告代理店時代に医者は高所得者なので、高級車や高級時計の広告を医者向けの専門誌に出稿したら効果があるのではないかと皆、出稿していたと思いますが、仕事のモードで読む雑誌にクルマや時計の広告が載っていても響かない。モードのマッチングが大事なのだと学びました。

川崎:僕らの場合も横山さんの言うところの「モード」はとても重視しています。スマートフォンのメディアは、時間帯によって同じユーザーでもモードが大きく異なる。このモードをいかに捉えるか、各事業者がしのぎを削っています。たとえば「スマニュー」ユーザーの40代男性ですと、朝は硬派なニュースが6割でもモードに合っていますが、仕事終わりの帰宅時に今日の振り返りで為替相場を見たい…という人はあまりいない。寝る前はエンタメ要素が多くなるなど、ユーザーの反応が取り入れられています。プッシュ通知にも、この濃淡が現れます。

広告を打つ際も、スマートフォンの場合はデモグラフィック特性に「モード」を組み合わせて、プランニングをすることが重要だと思います。メディアを選ぶ際にも、自分たちが狙うターゲットをどれだけ内包しているかの軸だけでなく、狙うモードのターゲットをどれだけ内包しているか、の軸も考慮したほうが良いでしょうね。

横山:先ほどテレビの視聴態度を測定できるツールの話をしましたが、オンラインのメディアはよりモードを測りやすい環境にありますよね。

川崎:スマートフォンは記事単位の閲覧時間だけでなく、どこをタップしたのか、どのようにスクロールしたのかまで把握できます。タイトルを見て記事に遷移したあと、スクロールの速さで流し読みモードになっているのかがわかります。スクロールの途中で指が止まれば、そこにユーザーが興味を惹きつけられる要素があったのか、逆に咀嚼できない要素があったのかも知ることができます。僕たちは「タイム&スクロール」と言っているのですが、この二つの要素を掛け合わせてみることで、ユーザーの記事ごとの興味関心度合いをより緻密に測定することができるのです。

これまでの広告は、リーチ最大化を目指してきました。しかし、これだけユーザーの時間の奪い合いが激しくなると、広告においてもリーチ×時間の面積最大化の発想が必要です。そして接触時間当たりのコストをいかに低減させていくか、という発想でプランニングを考える必要がある。僕たちも動画広告で言えばインプレッション数、動画の再生時間、完全視聴率などを掛け合わせて、接触時間1秒当たりの接触コストを算出するなどの試みをしています。

横山:ユーザーの時間という概念が入ると、さらにメディアのプランニングは変わっていきそうですよね。

川崎:一時期、オンラインの広告はアドネットワークに流れ、どのメディアに出すかが重視されず、ターゲットリーチが「一山いくら」で売られる環境になっていました。しかしモードや時間といった軸が、重視されるようになるにつれ、改めて、自分たちが狙いたいターゲットを内包するメディアを緻密に分析して選ぶ必要が生まれてきているように思います。

横山:面白いですね。実はテレビでも同じような傾向が出てきているんですよ。具体的に言えば、スポットからタイムへのシフトという逆戻りが起こると思っているんです。特に若年層をターゲットにすると、スポットだけではリーチ目標を到達するのは非常に困難です。そもそもターゲットの含有率が低下しているので。僕は、それならむしろ関東ローカルの深夜枠でもBSでも、自分たちのターゲットが観たくなるようなコンテンツの番組をつくって、一社提供してしまったほうが効率は良いと思います。

川崎:メディアの持つ編集方針、編成方針によってユーザーの属性もそしてモードも変わります。そしてメディアと広告主には確実に相性の良い悪いがある。僕たちメディア側も、この「相性」を数値で説明する義務があると思っていますし、様々なコンテンツ視聴動向を測定する技術がますます重要になってくると思いますね。

スマートニュース 執行役員 広告事業開発担当 川崎裕一氏

慶応義塾大学経済学部卒業。同年日本シスコシステムズ(現シスコシステムズ合同会社)入社。ネットイヤーグループを経て、2004年8月にはてな入社。同年12月、取締役副社長に就任。2010年2月、kamadoを設立し、代表取締役に就任。2012年12月、ミクシィがkamadoを買収したことに伴い、2013年1月にミクシィ入社。執行役員クロスファンクション室室長を経て、2013年6月取締役。2014年8月から現職。

 

デジタルインテリジェンス 代表取締役 横山隆治氏

1982年青山学院大学文学部英米文学科卒。同年、旭通信社入社。1996年デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムを起案設立、代表取締役副社長に就任。2001年同社上場。2008年ADKインタラクティブ設立。同社代表取締役社長に就任。2011年デジタルインテリジェンス代表取締役に就任。ネット広告黎明期からビジネスの実践とデジタルマーケティングの理論化・体系化に取り組む。
著書に『広告ビジネス次の10年』(翔泳社)
『新世代デジタルマーケティング ネットと全チャネルをつなぐ統合型データ活用のすすめ』(インプレス)などがある。