人を動かすスイッチ、どう見つける? 「販促コンペ」最終審査員座談会

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企業が効果的な販促企画を募集する「販促会議 企画コンペティション(販促コンペ)」。今年8回目を迎え、受賞した企画が企業に採用されるケースも続々と出てきている。グランプリ賞金は50万円。チームでも個人でも応募でき、10枚以内の企画書でアイデアを競う。ここでは、最終審査員を務める博報堂ケトルの嶋浩一郎氏(審査委員長)、アサツー ディ・ケイの石田琢二氏、タンバリンの藤井一成氏、オイシックスの奥谷孝司氏が、審査基準やインサイトの見つけ方について語った座談会の模様をレポートする。
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—販促コンペは、どのような賞ですか?

嶋浩一郎氏:コピーやデザインといった、手段の決まった賞と異なり、ニュートラル(中立的)な発想で、課題を解決する方法を考えなければいけない。いまどきの広告コミュニケーションのプランニングに、一番近いスタイルのアワードではないでしょうか。

いま、企業はさまざまな課題に対して手段を選ばず、やれることはなんでも試す時代です。そうした企業に課題解決を提案する側にも、広告会社だけではなく、デジタルやイベント制作会社など、多様なプレイヤーが参戦しています。

「販促コンペ」はまさに、“異種格闘技”状態です。広告会社だけでなく、クライアントサイドの事業会社から応募する方もいます。アイデアさえよければ誰でも勝てるチャンスがある。

石田琢二氏:自分でクライアントを選べて、自分の好きな仲間と腕試しができる、それが仕事にもなってしまう、とても素敵な賞だと思います。

藤井一成氏:販促は、生活者が動いてくれないと成立しません。主役は生活者です。「販促コンペ」では、「課題を出している企業のプロパティ(資産)を自由に使い、生活者を動かすシナリオを考えられる」、そんなふうにとらえてみると、より面白いものが生み出せるのではないかと思います。

—ズバリ、審査の基準は?

嶋浩一郎氏

嶋:審査委員長として、審査員には二つのことを見てほしいとお願いしています。一つはターゲットのインサイトを突いた企画かどうか? つまり、人の欲望のツボを捕まえているか。それからもう一つは、企画のリアリティ。「本当に人が動きそう」って想像できる企画がいい。この二点がちゃんとクリアできているか、応募する人はセルフチェックしてほしいですね。

石田:それから薬機法(旧・薬事法)や景品表示法など、法規制面から見ても実現性があるかどうか。フィジビリティ(実現可能性)に関しては、審査をしていて毎年議題に上ります。

嶋:規制のことを知っているのは重要です。たとえば東京都でプロジェクションマッピングをしようと思ったら、その投射面積の最大値とかね。そういうリアリティが大切。

いい企画を立てられる人ほど、そういうルールについて詳しい傾向がある。企画を実現する時の限界を知っているからこそ、新たな表現に挑戦できるんですよ。面白いというだけで無責任に風呂敷を広げるより、フィジビリティをちゃんと考えているかどうか。そこで差がつきますよね。

石田琢二氏

石田:差と言えば、審査ではよくアイデアの重複が議論されます。「自分と同じアイデアの作品が、賞をもらっていて悔しい」と思った方もいるかもしれません。けれど、同じアイデア、同じ切り口であっても、やっぱり差はある。どれだけ課題と真剣に向き合い、突き詰めて考えたかで違いが出ます。

嶋:審査をしていると、既視感のある、過去の受賞作と似たロジックや企画に出会うことが多い。参考にするのはいいのですが、似たような企画書を書いた時点で負けですね。

—藤井さんと奥谷さんは、今回初めて審査に加わっていただきます。審査では、どんな点を見たいとお考えですか?

藤井一成氏

藤井:人がワクワクして動く姿が、企画書から透けて見えてくるものを推したいんです。社内会議でもそうしています。販促企画の視点で欠かせないのは、お客さんがわざわざ自分の時間を割いて、電車に乗って、友だちを誘って、場合によっては大事なお小遣いを握りしめてやってきてくれるのか。

企画書に笑顔の写真が貼ってあって、「本当かな?」と突っ込みたくなるものもあります。企画を通すのはゴールではなくスタート。企画が通った後に待つ現実に、きちんと向かい合わねばなりません。

—奥谷さんはいかがですか。

奥谷孝司氏

奥谷:外部の方から提案を受けて、うまくいった企画を振り返ると、必ず「一緒にやっている感覚」がありました。企画を立ててくださる方が、クライアント側をよく理解してくれて、こちらも共感できる時は、成功につながる気がします。

石田:確かに企画を実行する前に、クライアントの現場のモチベーションが上がっていると感じるときは、同じ方向を向いて、いい提案ができたと実感します。

奧谷:そうやって社内で盛り上がる企画は、いい意味で逸脱していたり、限界を少しだけ超えていたりしませんか? 既存のものを踏襲した企画は、会議が終わると覚えていないことの方が多い。

—ふだんの仕事では、どんなところから企画を考え始めますか?

石田:まず、商品のいい部分を徹底的に調べます。調べる過程で商品を好きになってきて、ファンとしての目線で、企画を考えていきます。

藤井:「新しいお客さんをどう取り込むか」といった課題の場合も、特に既存のファンを大事にして企画を考えるようにしています。

その時には、「この販促企画によって、10年後、20年後の、ブランドの未来を壊すことはないか」「もともとのお客さんの気持ちを裏切っていないか?」といった点にも注意していて。

インサイトを探る時にも、いまのお客さまが、どういう気持ちで、どう商品とつながっているのか、から考えて拡げていくようにしています。

奧谷:そうそう、例えば、水ひとつとっても、スポーツの試合で負けた後、ぐっと悔しい気持ちを抑えてノドをうるおす水と、上司に怒られて冷や汗をかいた後、飲む水は違います。こうした、お客さんがどんなふうに商品体験をするのかを「顧客時間」と呼んでいますが、それぞれのシーンを紐付けて、何を伝えるべきなのかを考える、これはインサイトの見つけ方のひとつだと思います。

何より、「顧客時間」を知ることは、(クライアントの)ビジネスモデルの理解につながります。私の場合、企画を提案してくださる方には、ブランドそのものとビジネスモデルを理解することを必ずお願いしています。

嶋:「ビジネスモデルを理解する」というのは、まさに事業会社さんからの発言ですね。とても大事なことだと思います。ビジネスモデルがわかっていると、たとえば居酒屋で会計する際、どのようなオペレーションが求められるかといった想像がつく。ビジネスモデルがわかっていないと、(企画が)机上の空論になってしまうケースが多い。

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