「日東駒専」「産近甲龍」という括り、どう思っている? 近畿大学☓東洋大学広報対談

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大学をはじめとする教育機関にも今、PRの力が求められている。6月1日に発売した『広報会議』7月号では、東西の大学広報を代表して近畿大学の世耕石弘氏、東洋大学の榊原康貴氏が初対面。大学広報キーパーソンによる公開対談をレポートする。

「日東駒専」ではなく、「ART」と呼ばれたい

近畿大学は1925年に創立。学生数は3万2703人(2015年5月時点。大学・法科大学院・大学院・短期大学 総計)。

世耕:東京の私大は「早慶(早稲田大学、慶應義塾大学)」の次に「MARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)」「日東駒専(日本大学、東洋大学、駒澤大学、専修大学)」という枠組みがあるのは周知の事実ですが、東洋大が「日東駒専」の中に入っていることを榊原さんとしてはどのように捉えていらっしゃいますか。

関西にも「関関同立(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学)」、次に「産近甲龍(京都産業大学、近畿大学、甲南大学、龍谷大学)」とあります。もちろん僕ら近大は「産近甲龍」に入会届を出した覚えはないのですが、脱会もできないわけでして(笑)。

榊原:「日東駒専」という広いボリュームゾーンのポジションは良い面もあれば課題もあります。ただ東都大学野球のように入れ替え戦がない(笑)。これは広報活動の中でも重要なポイントです。実は2012年にマークを刷新する際、学長に「将来、東洋大をどんなイメージにしていきたいですか?」と聞いたことがあるんです。すると学長は「ART(アート)を目指したい」と。

世耕:「ART」というのは?

東洋大学は1887年に創立。学生数は:2万9680人(2015年5月時点。学部(第1部・第2部)・大学院・専門職大学院 総計)。

榊原:「ART」は青学(A)、立教(R)、東洋(T)の頭文字です。この時、いやいや……と思う反面、青学や立教の持つようなイメージを目指してはどうかということに気が付きました。実際、東洋大は女子学生の割合は40%を超え、大規模私大では日本で1番。しかし、どちらかというと男性的なイメージが根強い。こうした世間の持つイメージを刷新して、「日東駒専」の枠組みとは別のイメージを定着させることはありだな、と私たちも常に意識しています。

世耕:なるほど。近大も「産近甲龍」のひとつですが、我々のようなグループは「ひとつ上のグループの併願校になる」という宿命があるんですよね。そうなると、実は別の壁にぶつかることになるんですよ。今後も近大の志願者数が増えて偏差値が上がり、試験がだんだん難しくなると近大に「滑り止め」という価値がなくなってしまうんです。

榊原:マーケットが変化しますからね。広報活動の結果、認知度がアップして志願者数が増えることがひとつの目標ではありますが……必ずしもそれがブランド醸成の正解とは限らない。

本記事は、『広報会議』2016年7月号の特集「社会に広がるPRの力」の記事を抜粋したものです。全文は本誌をお読みください。

世耕:知名度が上がれば上がるほど、志願者数が減る可能性もある。つまり「終わりの始まり」のような状況になってしまう。だから大学としてどんなブランドビジョンやミッションを描いていて、どのような立ち位置にいるかを客観的に捉えることは非常に重要。その中でブランドを構築していく広報が重要な役割を担うんですよね。

榊原:私たちも大学のブランディングについては常に考えていて、例えば「150周年を迎える2037年の東洋大のイメージはどうなっているのか」ということをロングスパンで意識しています。ブランドは一朝一夕には確立できないですし。直近では過去4回総合優勝している「箱根駅伝」というキャッチーなコンテンツがありますが、その勢いを「躍動感のある大学」というイメージに重ね合わせることができるかがカギとなっています。

「ネット出願」解禁発表はタッチの差!近大が「全国初」に

編集部:近大も東洋大も近年、広報活動を通じて「チャレンジ精神旺盛な大学」というイメージが形成されてきていると思います。入試制度なども同様で、特に2013年に発表した2014年度入試からの完全ネット出願への移行は象徴的な取り組みではないでしょうか。

世耕:ネット出願の採用は、おそらく東洋大も近大も、水面下ではほぼ同時にスタートしていたんですよね。ただ、プレスリリースを出したのが数日だけ私たちの方が早くて「全国初」という冠言葉をいただきました。正直、あのときは気分が良かったです(笑)。

榊原:はは、そうですか(笑)。

世耕:当時、中京大と東洋大がネット出願移行に向けて動いているらしい……という状況はキャッチしていたんですよ。こういうのは一番初めに発表しなければPR効果が薄れてしまうので、慌てて前年の入試が終わってすぐに決裁を回し、システムの構築が十分ではない状態でしたが、4月16日に発表しました。でも、その約2日後にNHKで東洋大がネット出願に切り替えると報じていて。きっと取材は先に受けていたんでしょうね。

榊原:そういうことですよね(笑)。

編集部:当時から因縁の対決が始まっていたということですね(笑)。その後の状況はいかがですか。

榊原:願書などの印刷物約60万冊分の資源節約や工程時間の削減、オンライン入学手続き、学内システムとのシームレス連携のメリットが生じました。さらに2013年度には紙の大学案内もネットに完全移行して大学関連の情報はすべてネットへ。紙媒体では不可能だったコンテンツの常時更新も可能となりました。紙媒体を全廃したことで「体験授業の動画を500本公開する」という新たなデジタル施策の投資へと転換することができました。

世耕:ネット出願に関してはコスト面のメリットもそうですが、「伝統に縛られない大学」「新しいことにチャレンジできる大学」というイメージを伝えたいという狙いがあります。2014年後期からAmazonで教科書の販売を開始したのも同様の狙いがあって、ネット上で「近大ってすごい」という評判を形成する効果があったと思います。

榊原:最近は高校生のスマホの普及率も99%とも言われていますから、私たちがアプローチしたい層が日常的に触れるデバイス上での接点を強化していくことは非常に重要だと思います。

続きは、6月1日発売の『広報会議』2016年7月号をご覧ください。本誌では、以下の内容についても聞いています。

・なぜ大学に広報が必要なのか
・近大は箱根駅伝についてどう思っている?
・広報で大学の価値観を変える

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「広報会議」2016年7月号 巻頭特集「社会に広がるPRの力」

自治体や教育機関、そして医療法人やNGOなどの分野で活躍するPRパーソン。現場の皆さんが実感した「広報の力」に迫ります。

    「大学広報の今を語り尽くす」特別企画

  • 近畿大学×東洋大学 東西のキーパーソンが初対談
    セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン

  • 二度の震災で再認識した「広報」の存在意義
    <医療機関> 小倉記念病院

  • 「病院が選ばれる」時代へ 地元企業や開業医と連携
    <オリンピック・パラリンピック>つくば国際スポーツアカデミー(TIAS)

  • 海外メディアを取材誘致 日本の競争力をアピール
    【VOICE】女子サッカー界を牽引する「なでしこ」

  • 「広報の仕事が勝負への思いを強めた」
    <自治体>石川県七尾市

  • 撮影しながらマラソン走破も 年間300件もの取材の裏側

近畿大学 広報部長
世耕 石弘 氏

1969年生まれ。1992年、近畿日本鉄道に入社。以降、ホテル事業、海外派遣、広報担当を経て2007年に近畿大学に奉職。入学センター入試広報課長、同センター事務長を経て、2013年4月より広報部 部長代理、2015年4月より現職。総務部長代理、水上競技部長も兼任。

 

東洋大学 総務部広報課 課長
榊原 康貴 氏

1992年、東洋大学に奉職。教務、入試、専門職大学院設置、就職・キャリア支援、通信教育などを担当。2012年6月より広報課へ。学園全体の広報活動や大学ブランディングに注力。2015年3月に修了した大学院では、 学生不祥事に関わる大学の責務や危機管理について研究。日本広報学会・社会デザイン学会所属。

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