『週刊文春』編集長が語る仕事論「“真面目な人”は編集者に向いていない」

宣伝会議が運営する「編集・ライター養成講座」2016年春コースが、6月に開講した。第1回の講義では、『週刊文春』編集長の新谷学氏と「NewsPicks」編集長の佐々木紀彦氏が登壇し、編集者としてのあり方や若手時代のエピソードなど、赤裸々なトークを繰り広げた。
※本記事は、6月18日に行われた講義の一部を記事化したものです。

『週刊文春』編集長が考える「週刊誌の役割」

佐々木紀彦氏(以下、佐々木):今日は編集・ライター養成講座の開講式ということで、100人を超える方々が会場に来ています。今回は、『週刊文春』編集長の新谷学さんに、私から色々とお話をうかがえればと思います。

新谷学氏(以下、新谷):皆さん勉強する意欲がすごいですね…あまり真面目な雰囲気は得意ではないのですが(笑)。私は平成元年の入社で、30年近く経っていますけど、スキル云々ということはまったく考えずに編集者人生を送ってきました。昔から勉強が得意なタイプではなかったですし、たまに怒られたり、休養させられたりしながら、いかに読者に面白がってもらえるかを考えてやってきました。

佐々木:編集・ライター養成講座に通っている場合じゃないぞと。

新谷:いやぁ(笑)。ただ、編集者はサービス業でもあるので、来ていただいたからには、なるべく皆さんにとって役立つ話ができればと思います。

佐々木:私は一編集者として、『週刊文春』は毎週、買って読んでいます。とにかく面白いですし、編集者であれば、勉強のためにも絶対に読んだほうがいいと思うんですよね。とくに2016年に入ってからスクープを連発しており、最近も『週刊文春』が報じた記事をきっかけにして、舛添要一・前東京都知事が辞任しました。

新谷:編集者は、世の中で起こっている出来事、あるいは話題の人々を「面白がる」気持ちが大事だと考えています。そして、どこがどう面白いのか、どうすれば世の中に広く共有してもらえるかを考えることが重要です。ただし、舛添氏の一連の報道もそうですが、『週刊文春』が“正義の味方”のように思われるのは、本意ではない。もともと、そこを目指していないし、たかが週刊誌ですから、偉そうに「悪を裁く!」といった意識はありません。そういう意識で雑誌をつくると、とたんに誌面が暗くなってしまう。

そうではなくて、我々が考えているのは、「人間としての色々な顔」を伝えたいということ。特に現在はSNSが普及して、誰でも情報を発信できるがゆえに、「建前」「綺麗ごと」ばかりが増えてきています。政治家やタレントをはじめとする著名人も、自分自身でメディアを持って情報発信していますが、ともすれば、自分にとって都合の良い情報ばかりで埋め尽くされてしまっている。そんな「建前」「綺麗ごと」ばかりの世の中も健全ではないので、ある種のガス抜きというか、「この人はこんな一面もありますよ」ということを見せていくのが、週刊誌としての役割だと考えています。

編集者に必要なのは、世の中の“風を読む”力

新谷:編集者にとって、世の中の風向きや空気に敏感になることは、すごく大事です。同じ方向に強く風が吹いているなと思ったら、その風に乗っていくことも必要ですが、時にはあえて逆らってみる。ただし、そこに正解はない。大事なのは、読者がどんなものを読みたいと思うのかを徹底的に考えることです。世の中で起こっていることについて、常に風向きを読みながら、どのように情報を発信すれば読者に刺さるのかを考える。そのアプローチの仕方や切り込む角度によって、編集者の力量が問われるのだと思います。

佐々木:そうした“風を読む”ためには、センスも必要ですよね。

新谷:おっしゃるとおり、センスは重要です。正直に言って、“真面目な人”は編集者にはあまり向いていない。いくら“風を読む”ことができても、誰もが考えつくような企画では、お金を払ってはもらえません。みんなが「右だ!」と言っているときに、「ちょっと待って、左はどうなの」と、思いもよらないことを言い出す。あるいはみんなと同じ方向だとしても、そこからさらに突き抜けたようなコンテンツにしてしまう。そうしたセンスは、間違いなく編集者に求められます。

佐々木:新谷さんが普段、“風を読む”ためにされていることはありますか。

新谷:人と会うことですね。毎日、色々な世界の方々と朝昼晩で会ったり、一緒にご飯を食べたりしています。そうした雑談の中から、それぞれが属する世界でのニュースの見え方や受け止められ方、話題の人物がどう評価されているかを聞いています。

また、マスメディアにも一通り目を通しますし、最近はネットもよく見ています。とくに『週刊文春』が報じたニュースについて、読者の皆さんがどのように感じているのか、あるいは評価をしているのかを見るのは、恐ろしくもあり、楽しくもある。「意外とこのニュースが好感を持たれているのか」「これはやり過ぎだったかな」などと感じつつ、世の中の空気を探っています。

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