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「がん」にかかるのは2人に1人、国立がん研究センターが広告賞を開く狙いとは?

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国立がん研究センターは7月11日から、「サンキューバトンアワード—全国がん登録・統計広告賞—」というコンテスト企画を始めます。デザイナーやコピーライター、または広告の仕事を志す学生の皆さんから広くアイデアを募るものです。このコンテストの主旨や「全国がん登録」の仕組みについて、国立がん研究センターの松田智大さん(がん対策情報センターがん登録センター全国がん登録室室長)に伺いました。

国立がん研究センター がん対策情報センターがん登録センター全国がん登録室室長 松田智大さん

集めた情報が未来の患者の命をつなぐ

—「サンキューバトンアワード—全国がん登録・統計広告賞—」の狙いは。

日本でがんと診断されたすべての人のデータを、国で1つにまとめて集計・分析・管理する仕組み「全国がん登録制度」が2016年1月にスタートしました。この制度の目的や意義について広く知っていただくきっかけとして、クリエイターの皆さんのお力を借りたいと思ってこのコンテストを始めることにしました。全国がん登録制度の新しいシンボルマークのほか、キャッチフレーズとポスターのアイデアを募集します。

サンキューバトンアワード—全国がん登録・統計広告賞—

—「全国がん登録制度」の目的を教えてください。

がん患者さんの情報を収集・整理することで、将来のがん治療やがん対策の発展につなげ、がんにかかる方やがんで亡くなる方を減らしていくことです。現在のがん予防や治療は過去の患者さんの情報によって支えられ、今日の患者さんの情報は、未来に役立てられ、未来の患者さんの命をつないでいく――、この「全国がん登録」の考え方を「サンキューバトン」という言葉で表しています。

サンキューバトン—全国がん登録PRサイト—

男性の62%が一生涯のうちに「がん」にかかる

—日本でがんにかかる人はどれくらいいるのですか。

平成24年(2012年)の1年間にがんと診断された患者の数は86万5000人と推計されています(国立がん研究センター調べ)。こちらに集計結果の一部を公開していますが、地域によっても傾向に差があることが分かります。

ちなみに、男性で一生涯のうちがんにかかる人の割合は62%、つまり、いまや2人のうち1人というより、3人のうち2人はがんにかかる状況に近づいています。

—それほど多くの人がかかるのですね。

はい。ほとんどの人にとって決して他人事ではないと思います。

もっとも、がんについてはすでに様々な情報が蓄積され、研究が進んでいることも事実です。世の中にはまだ原因の解明も治療法の確立もしていない難病もありますが、がんについては解明されている部分が多く、ある程度予防することも可能です。

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先ほど、1年間でがんと診断された人は86万5000人と説明しましたが、これは全国28県の調査結果をもとにした推計値です。全国がん登録制度が始まり全国からデータが集まってくれば、患者さんの数は1人の単位まで分かりますし、どの地域のどの病院にかかっているのかも明確に把握できるようになります。

患者数が推計値であっても、よく発生する種類のがんに対しての総合的ながん対策としてはさほど問題はありませんが、例えば100万人に1人がかかる「希少がん」と言われるものや、子どもがかかる「小児がん」などはサンプルが少ないので、患者さんがどの地域で、どの病院にいるかの情報は重要です。がん患者の傾向は地域性も見られます。例えば東北と九州で比べると、九州は胃がんは少ないけど肺がんが多い、といった傾向が見られますし、同じ東北でも日本海側と太平洋側では異なります。全土をカバーしつつ、県単位で傾向を把握できるようになることで、多くのことが分かるようになります。

日本では、がんにかかるリスクやそれによって亡くなるリスク自体は減りつつあります。ただ、乳がんのように増えているがんもあり、高齢化に伴い患者さんの数は今後も増えていくことが予想されます。増え続ける医療費をどうしていくか、病院や医師、看護師をどう確保していくかといった社会の課題に対し、先回りして手を打っていくためもこうした統計データが求められるのです。

—制度は今年1月から始まっていますが、どのようにデータを集めているのですか。

データの提出は病院が行います。2016年中に診断したがん患者さんのデータを2017年末までに都道府県に提出することになっています。現時点では徐々に集まり始めた状況ですが、2017年夏ごろには90万件近いデータが集まっている予定です。

次ページ 「「深さ」のある作品を期待」へ続く


サンキューバトンアワード—全国がん登録・統計広告賞—