どこまでワントゥワンに迫れるか?―ライオン、NTTドコモ、ザ・リッツ・カールトン東京が進める「人」が中心のマーケティング

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参加者
・NTTドコモ プロモーション部長 青谷宣孝氏
・ザ・リッツ・カールトン東京 PRマネージャー 小西純子氏
・ライオン 宣伝部長 小和田みどり氏

写真左から、「JAPAN CMO CLUB」の加藤希尊氏、ザ・リッツ・カールトン東京 PRマネージャー 小西純子氏、ライオン 宣伝部長の小和田みどり氏、NTTドコモ プロモーション部長の青谷宣孝氏。

2016年7月7日、NTTドコモの青谷宣孝氏、ライオンの小和田みどり氏、ザ・リッツ・カールトン東京の小西純子氏の3氏が東京・青山にある宣伝会議本社に集まった。その目的は、第13回目となるJAPAN CMO CLUB研究会に参加すること。今回もメーカー、通信、サービスと業態の異なる企業のマーケターが揃い、それぞれの日々の取り組みが紹介され、刺激を与えあった。

「JAPAN CMO CLUB」は、これまで研究会とMid-Year、Year-endなどに開催されるネットワーキングの場が主な活動だった。開設から1年以上経ち、メンバーが増えたこともあり、研究会やパーティーで交流を深めたメンバーが集う小規模の分科会も活動として実施されるようになった。冒頭にCLUBのCMO(Chief Marketing Organizer)である加藤希尊氏からSoup Stock Tokyoの本社で開催された分科会についての紹介があり、新たなメンバーを迎えた第13回目の研究会はスタートした。

企業の精神を象徴する「クレド」をもとに「宿泊体験」という商品を提供

初対面の3者に議論を活発にしてもらおうと、今回もアイスブレイクの意味を込めて自己紹介と各社のカスタマージャーニーを紹介からディスカッションは始まった。

先頭を切った青谷氏は、音声通話を中心としていた収益構造から、スマートフォン時代到来によるパケット通信料が大半となる収益構造への変化を紹介。こうした変化に応じて、カスタマージャーニーも従来の回線契約をゴールにしたものと、契約者や端末利用者にNTTドコモが提供するアプリやコンテンツなどのサービスを受けてもらうための2種類でとらえていると話した。

また収益構造の変化により、自社の契約者情報をひとつのIDと見なし、他企業のよりよいサービス提供へも活用するという自社サービスがプラットフォーム化しているという流れにも触れた。

コモディティ商品の代表とも言える、日用雑貨を扱うライオンのカスタマージャーニーは、当然ながら自社製品のロイヤルカスタマー化を目的としている。そのため、企業からの一方的な情報発信ではなく、消費者が「自分ゴト」として認知し、消費者の間で評価を高めていくようなコミュニケーションを目指していると小和田氏。その接点のひとつとして、商品のパッケージも重要なメディアとしてとらえ、日々改善に取り組んでいるという。

「私どもは広告よりも、私どもの商品である経験でメディアの関心を集めることに注力しています」とは、小西氏のザ・リッツ・カールトン東京。宿泊客の多くはソーシャルメディアも含めた口コミやメディアに出た情報を元にホテルを選ぶことになる。そこで小西氏は「宿泊体験そのものが商品」と表現し、宿泊客に「自分が特別な存在である」と感じてもらうことが非常に重要だと話した。そのためには、ホテルの施設や従業員が提供するサービスが最も重要な部分になる。

ザ・リッツ・カールトンホテルでは、従業員を「紳士・淑女」と呼び、その質を高め、同ホテルの精神を体現するために携帯している「クレドカード」を紹介し、研究会参加者へも配った。

加藤氏は、このクレドカードを手にしながら「私たちの研究会もマーケティングという業務に真摯に取り組む紳士・淑女なので、このクレドの精神は取り入れていきたいですね」と感想を口にした。

小西氏からはザ・リッツ・カールトンの全社員が携帯している「クレド」の実物が紹介された。

消費者に感動を与えるためには、情報の流し方ではなく、情報そのものが重要

これまでの研究会でも繰り返しテーマとしてきた「人口減少」、「コモディティ化」、「スマート化」というこれからのマーケティングにおける3つの課題。今回も研究会の前半で、各社がこの3つの課題に対してどのような取り組みを行っているのかを紹介しながら議論は進んだ。

今回は特に、「宿泊体験そのものが商品」というザ・リッツ・カールトン東京の参加もあってか「モノからコトへ」の転換が課題への対策として目立った印象だ。

NTTドコモは、収益構造の変化にともない、通信料以外の収入源を増やすことで3つの課題を乗り越えようと考えている。その中核を成すのが「dポイント」だ。「dポイント」をプラットフォームとして、ローソンやマクドナルドといった提携する他社と利用客との接点を拡大することができる。NTTドコモと契約していなくても、アカウントを作成すれば持つことができる「dポイント」会員に対して、どのようなコミュニケーションが最適かを探ることが目下の課題となっていると青谷氏は話した。

ライオンでは、店頭で消費者に選んでもらうために、機能による差別化から「いかに自分ゴト化してもらうか」を念頭にしたコミュニケーション戦略へと転換し課題と向き合っている。

一方で、機能性の追求もメーカーの姿勢として必要性を認めている。機能は常に高めていかなければならないが、その表現としてのコミュニケーションにおいては、消費者のニーズをふまえたものであることが大事だと話した。

「ザ・リッツ・カールトン東京と同じで人を感動させることが重要で、日用品のようなコモディティ商材では、情報の流し方ではなく情報そのものが問題になっている」と小和田氏は悩みを口にした。

小西氏は「クレドを元に従業員一人ひとりがユニークで思い出に残るサービスを提供し、強調できればコモディティという問題には陥らないのではないかと思っている」と話した。

また、コモディティ化があるとすれば、その競合は世界各地にあるザ・リッツ・カールトンであり、その対策としてグループで取り組む「シノグラフィー」というテーマがあることを紹介した。その土地を訪れた際に見た景色や体験をザ・リッツ・カールトンの存在とともに記憶に残してもらおうとするもので、東京では「East meets West」をテーマに日本の伝統文化を感じてもらう取り組みを進めている。

体験を重視するため、小さな子どものお客さまを“小さな”紳士、淑女と呼ぶことを徹底している。さらにクレドだけではなく各自が一人一人の宿泊客の好みや会話で得た情報をメモに書きとめ、それを集約し共有する「ミスティーク」というオンラインシステムも紹介した。

加藤氏を含めた参加者は、アナログとデジタルを融合し、世界中のリッツグループで共有する「ミスティーク」の取り組みを興味深く受け止めた。

次ページ 「お互いがより魅力的になるための提案から見えてくるのは「人」の大切さ」へ続く

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