どこまでワントゥワンに迫れるか?―ライオン、NTTドコモ、ザ・リッツ・カールトン東京が進める「人」が中心のマーケティング

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他企業との意見交換で浮き上がる課題と、その解決策

研究会の後半はこちらも恒例となった、参加企業がお互いに「あったらいいな」と思うアイデアを提案しあうことがテーマ。提案する側は一消費者として、聞く側はマーケターの視点を持った「消費者の生の声」を知る機会として貴重なものになる。これまでの研究会でも、この議論からコラボレーションの芽や新しい企業間の交流が生まれている。

ライオンに対しては小西氏から、より年代や性別、生活環境に合わせて細分化した商品提案ができれば、消費者の心をとらえられるのではという提案があった。

青谷氏からは自身の経験をもとに、旅行用の歯磨きセットのパッケージデザインに注文がつき「もっとおしゃれなデザインで、持つことが喜びにつながるようなものになればギフト需要など、新しい市場を開拓できるのでは」という話が出た。

加藤氏からも、研究会の参加企業である富士フイルムが原宿にアンテナショップを出店し、「写ルンです」の再ヒットにつなげ、現像したデータをCDに移すサービスで人気を呼んだ事例を紹介。さらに同様のサービスをギフトにも活用しようとしていることに触れ、ライオンにも当てはまる方法なのではという話をした。

小和田氏は、生活者の個別の事情に合った機能の開発は進んでいると話し、また、アンテナショップについてもオーラルケア分野については東京駅の近くに「ORALYSIS(オーラリシス)」というショップがあると紹介した。パッケージは、重要なコミュニケーションとして認識していることもあり、今後改善できればと触れた。

その小和田氏は青谷氏へ向けて、今後携帯電話を持つ人の数は増えないだろうという見通しのもと、端末の出荷台数を増やすのではなく、サービスやアプリを充実することに活路があるのではと指摘した。

その一例として、今の高齢者でも使いやすいもの「かつてのらくらくホンが出たときのような驚き、生活者が“これを待っていた”と思うようなサービスが提供できれば」と話した。

小西氏からは、現状あるサービスをより良く深めるために、顧客視点を取り入れたサービス展開ができればという提案がなされた。

ザ・リッツ・カールトン東京へ向けては広告に頼りすぎないという同社の方針もあり、小和田氏から「高嶺の花というイメージがあり、心理的な距離を感じる」という指摘があった。そのため、日本ならではの行事を組み込んだ宿泊プランや子ども向けのマナー教室のようなイベントで「ちょっとリッツに行ってみようかな」というきっかけづくりはどうかと提案した。

青谷氏からは自社のサービスをからめて、スマートフォンを利用した予約から宿泊、次の訪問にまでつなげられるような一気通貫したストーリーを持ったサービスがあればと話した。

各種のプランやイベントについては、季節に合わせたものなどすでに取り組んでいることや、スマートフォンを使ったサービスに関してもすでにアプリがあり、コンシェルジュのページを提供しているが、小西氏は「広告を出していないこともあり、知ってもらうという努力が足りていないのかも」と話した。

テクノロジーが進化しても、それを生かすのは「人」

3社ともに、いかに消費者に対してワントゥワンのマーケティングを実現するかが大きなテーマとなっている。そこでいかにテクノロジーが活用されるのか、いずれNTTドコモが開発する人工知能(AI)がその大きなツールとして活躍する日がくるかもしれない。

青谷氏は「AIにザ・リッツ・カールトン東京の従業員のようなホスピタリティをどうすれば取り入れられるか、AIの学習能力がどう作用するのか」としつつ、技術が進歩しても「やはり最後は人」と話した。

小和田氏も「究極のサービスはワントゥワン」だと研究会での議論をふまえて話した。商品開発に関して、個別にカスタマイズすることは難しいが、どうすれば近づけられるのか、ザ・リッツ・カールトン東京のホスピタリティなどを参考にしながら消費者の声を聞くコミュニケーションを検討したいと話した。また、ヘルスケアの分野などでIoTやAI活用の必要性にも触れ「NTTドコモさんの知恵をお借りできれば」と期待を口にした。

小西氏は「良いものを作ってさえいれば大丈夫だという職人気質のようなところがあったが、一企業としては何をしているのかを理解し、他との違いを知ってもらう機会を増やしていきたい」と話した。また、アプリについてもAIの活用など「より若い世代を取り込んでいく、先を見据えたビジネスモデルを作っていかなければ」という気づきを得た。

青谷氏は「均質化する競争において、ひとつの大きな差異化を目指すのではなく、少しの細かな違いを積み重ねて、結果的に大きな評価につなげるマーケティングにシフトしているのではと感じた」と話し、「新鮮な一日でした」とまとめた。

最後に加藤氏から、この日の研究会には2つのポイントがあったと指摘があった。

ひとつは、マーケティングの中心は「人」であること。今回だけではなくこれまでの参加企業が「人口減少」、「コモディティ化」、「スマート化」に取り組むときにキーワードとなったのは「人」だった。マーケティングにおいて企業としての人格がどうあるべきかが重要となる。その象徴がザ・リッツ・カールトン東京の「クレド」ではないかと話した。

こうした企業人格から外れることなく、消費者が心地好さを感じるサービスや商品を提供し、カスタマージャーニーを形成できるか。消費者に「自分が特別な存在」だと感じてもらうことがマーケティングの目指すところだと話した。

もう一つはNTTドコモが展開するような「サービスのプラットフォーム化」だ。既存のビジネスを土台に、B to CからB to B to Cへの転換を図り、消費者に新たなホスピタリティを提供する。ここにAIなどのテクノロジーを加えていく考え方は「マーケティング市場を変えていく可能性があるのでは」と話し、第13回のJAPAN CMO CLUB研究会をまとめた。

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