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「モテないやつは誰もいないところで鳴いているセミ」みうらじゅん×山本高史対談

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9月1日に発売された『広告をナメたらアカンよ。』の刊行を記念して実現した、著者である山本高史氏と「ゆるキャラ」ブームの仕掛け人 みうらじゅん氏との対談。前編「“モテない”はダメなことなのか」では、男子の永遠のテーマである「モテるとは何か」について、またみうらじゅん氏の「一人電通」についても言及した。後編では、現代における広告のあり方や2人が考えるキャラ論について語られた。

「言葉」は、実は難しい。

山本:前回「“モテない”はダメなことなのか」では、「モテない」ということで色々とお話させていただきましたが、モテなくてもいいこともあるんですね。

みうら:それでも、男は基本モテたいですからね。じゃあどんなやつがモテないかと言えば、夏場になると、セミがうるさいじゃないですか。とくに8月から9月になると夏もそろそろ終るし、あいつら必死ですよね。たぶんですけどね、セミの中でもきっとモテるやつとモテないやつが決まっているんですよ。たまに他のセミがいないところで鳴いているやつがいるじゃないですか。

山本:そこで鳴いても誰もいないし仕方ないだろう、みたいなね。

みうら:セミになる前に長く土中にいるんだから、先輩からその辺のことは教えてもらってこいよと説教したくなる。たぶんそういうやつなんですよね、モテないやつって。もう鳴いているところが違うんですよ、そもそもとして。

山本:確かに。逆に恐ろしい轟音のようにたまって鳴いている木とかもありますよね。そういうのはもう戦場ですね。

みうら:それこそ六本木ですよね。そういう木は。

山本:懐かしのジュリアナ東京みたいなね。

みうら:ぼくが社会人になった頃は、広告も、広告の人なら六本木でミーンミーン鳴いていましたよ。ものすごく鳴いてらっしゃるので、きっとモテてられるんだなと(笑)。

山本:そうでしたよね。今でもそのつもりでぼくも鳴いているはずなんですけどね。

みうら:ぼくは部外者なんであんまりわからないけど、昔と比べたら状況は随分変わりましたよね。飲みに行けば、昔と今とではお金の使い方とかもだいぶ違っているんじゃないかな。ただね、この間広告会社の若い人たちと一緒に仕事する機会があったんですが、彼らは、広告はまだバリバリだと思っているところもあるんですよね。

山本:そうですよね。まあ、ぼくらが若かった当時と比べると、あらゆる面で全然違います。例えば今の広告業界で道端に寝られる人間って、ぼくを含めて数人しかいないですね。ぼくはもう趣味なんですよ。特にアスファルトが。アスファルトって夏は涼しくて、冬は暖かいじゃないですか。

みうら:昔は珍しかったですからね、アスファルトって。アスファルトはいいですよね(笑)。

山本:そうなんです。寝っ転がるのは今もやってしまうんですよ。あと、酒を飲むと必ず転ぶので、どんどん半ズボンが増えていく。破れるたびに捨てるのはもったいないと思って、半ズボンにしようと切ってしまうんです。

みうら:エコですね。

山本:54歳になっても飲んでは記憶をなくすし、ぼくは広告業界ではたぶん変わり者なんですけど。

みうら:道端で寝っ転がると、これまでとは目線が変わる分、街が違って見えますからね。あれは普段ではなかなか味わえない目線だし、大事ですよ。それが今はもう道でゴロゴロ寝られなくなってしまっている。昔はむしろ変なことをした方がよかったはずなんですけどね。

山本:真面目な話もすると、今の若い広告の人は、そういう言い方はイヤなんですけど、言葉が弱いんじゃないかな。メディアの「側」のことはよく知っているんだけれども、ところが中身の言葉がちょっとさみしい。

みうら:まあ言葉というのは難しいですよね。言葉によって信用もされるし、騙されることもありますからね。

山本:いつも言うんですけど、「そのスカートは赤だ」といえば、赤ということを肯定しているのと同時に、赤以外のことをすべて否定しているんです。つまり言葉というもので自分を追い込んでいる。そうして意識をしてみると、言葉って怖いし、使いにくくなる。特にコピーライターというのは、そこを正確に言わないといけない。ちゃんと約束してモテたいですからね。でもそういうことだと、コピーライターになりたい若い人は今少ないんですって。

みうら:ああ、少なくなっているんですか。昔はキャラの濃いコピーライターも多かったような気がしますが。

次ページ 「2人が考えるキャラ論。」へ続く