HubSpot社 CEO「企業は、コンテンツをつくり出せる人材をマーケターに登用すべき」

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インバウンドマーケティング・プラットフォーム「HubSpot(ハブスポット)」を提供する米HubSpot社は、9月に日本法人を開設、これに合わせてイベント「Grow with HubSpot」を東京で開催した。イベントに合わせて来日したCEO兼共同創業者のブライアン・ハリガン氏に、企業がマーケティングにおいて抱えている課題や、今後取り組むべきことについて話を聞いた。

—企業が今、マーケティングやコミュニケーションにおいて抱えている課題について、どう捉えているか。

商品購買や情報収集など、過去10年間で消費者の行動様式は大きく変化している。一方でマーケターは、10〜20年前と変わらない手法でマーケティングを行っているケースが少なくないと思う。

従来型のマーケティング手法では、マーケターはなかなか私にリーチすることができないだろう。というのも、私はテレビを見るが、それはNetflixや録画した番組であって、リアルタイムに放送されている番組を見ることはほとんどない。つまりテレビCMには接触しないのだ。ラジオもPodcastで聴いているから、ラジオCMに触れない。インターネットではアドブロックを使っていて、ほとんどの広告が表示されない。電話も知り合いからでなければ出ないし、メーラーにはフィルタをかけているので迷惑メールは自動的に弾かれる。

こういう消費者は、私だけではないはずだ。だから、これらの手法を用いてマーケターが消費者にアプローチするのは難しい時代だと言える。現代の人々の行動に合わせてマーケターが消費者にアプローチできるようサポートするのが、我々の役割だと考えている。

—特に、日本企業が抱える課題についてどう見ているか。

テレビやラジオといった多くの人にリーチできるメディアで、質の高いコンテンツを展開する–これがかつての広告だった。しかし、この既存のモデルを成立させることは、次の2つの理由から、今後はますます難しくなっていく。

一つは、アドブロックの浸透によって広告が表示されなくなりつつあること。もう一つは、誰もが自らの手で簡単かつ安価にコンテンツをつくれるようになったことだ。

こうした中、企業の広告・マーケティングの成否を決めるのは「どれだけの予算を確保できるか」ではなく、「どれだけクリエイティビティを発揮できるか」に変わりつつある。日本企業も、こうした新しい考え方を早急に取り入れる必要があるだろう。

—米国企業と日本企業では、インバウンドマーケティングへの取り組み方に違いがあるか。

米国企業の多くは、先ほど触れたような消費者の行動の変化に気づいており、従来型のマーケティングからインバウンドマーケティングへとスピーディーにシフトしている。日本企業は、まだ従来型のマーケティングに多くの予算を割いているところが多いのではないだろうか。

日本企業がインバウンドマーケティングの導入を進めていくためには、啓発活動や環境整備が不可欠であり、HubSpotがその一助となれればと考えている。9月に立ち上げた日本オフィスでは、新たに採用した12人のスタッフが、日本企業に向けた情報発信や啓発・教育活動を推し進めていく。

—HubSpotと競合他社との違いは?

インバウンドマーケティングを行うために必要な機能は多岐にわたる。ターゲットの行動を分析し、セグメントして、パーソナライズしたコンテンツやメッセージをつくり、それを適切なタイミングに適切なチャネルで提供することで、見込み顧客から顧客へと育成していかねばならないからだ。

そのために必要なツールをすべて網羅し、インバウンドマーケティングをトータルで支援できることに、HubSpotというプラットフォームの強みがある。機能別に見れば、もちろんHubSpotには多くの競合が存在する。しかし、すべての機能を備えているパートナーは、 それほど多くないと言えるだろう。

—インバウンドマーケティングについて、日本企業が陥りがちな誤解はあるか。

まず、「コンテンツマーケティング」と「インバウンドマーケティング」は、アメリカにおいてもいまだに混同されることが多い。あくまで個人の見解だが、コンテンツマーケティングは、「Stranger(潜在顧客)をVisitor(サイト訪問者)に」というマーケティングファネルの上層部分を担うもので、インバウンドマーケティングは、そこからさらにLeads(見込み客)へと転換し、Customer(購入者)へと育てていくところまですべてを担うものだと考えている。

また、インバウンドマーケティングに取り組む上でやってはいけないことは、「水面に爪先を浸けただけで、湖に入ったつもりになってしまうこと」だ。湖に飛び込んで全身で水を浴びなければ、湖に入ったことにはならない。つまり、ほんの一部分を実行しただけでは、インバウンドマーケティングの真の効果を享受することはできないということだ。

—ある程度の投資が必要ということか。

一つの企業がトータルで使えるマーケティング予算は、今も昔も、そしてこれからもそれほど変わらないだろう。変わるのは、その配分だ。

かつての広告は、「他人が持っている場所」に費用を払って展開するものだった。広告の掲載スペースを確保するために9割の予算が投じられ、コンテンツやそれをつくる人材に充てる予算は残りの1割に過ぎなかった。

しかし今は、自分で制作したコンテンツを、自社のWebサイトやSNSなど「自分が持っている場所」で展開することができる。今後は、掲載スペースにかける予算が全体の1割、コンテンツにかける予算が9割と逆転するだろう。ブログや記事、動画といったコンテンツをつくる「人」に、多くの投資をする必要が出てきているのだ。

まずは、コンテンツをつくり上げることができる人材を採用し、マーケターに登用する必要がある。アメリカでは、ライターや編集者、映像作家などがマーケターになるケースが多く見られるようになってきた。マーケターのプロフィールが大きく変化しつつあると感じている。広告の枠や手段にではなく、そうした人材を確保するために予算を投じるべきと言えるだろう。

—最後に、日本のマーケターに向けてメッセージを。

1990年代に日本に住んでいたとき、相撲を見るのがとても好きだった。初めて見たのは、貴乃花と小錦の一戦。身体の大きさだけを見れば小錦が圧倒的に優位で、貴乃花は押しつぶされてしまうのではないかと思うほどだったが、貴乃花は巧みな技術で小錦のまわしを取り、見事に小錦を倒した。

HubSpotは、そんな貴乃花のような企業、つまり非常に高い技術やスキルを持ち、これから大きく成長していきたいと考えている中小規模の企業のためのソリューション企業だと考えている。インターネットの浸透によって、市場の競争優位を決める要素はリソースの多寡ではなくなった。インバウンドマーケティングは、大手よりも中小規模の企業にとって、厳しい市場環境における競争力の源になると考えている。


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