独自モデルで急成長した企業、パイオニアだからこその課題とは?

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参加者
・アンファー 執行役員 臺(だい)智紀氏
・ABC Cooking Studio 経営企画部 部長 吉村佳子氏
・星野リゾート 取締役 マーケティング統括 佐藤大介氏
・ユナイテッドアローズ 執行役員 事業支援本部 本部長 兼 デジタルマーケティング部 部長 高田賢二氏

写真左からユナイテッドアローズ 高田賢二氏、星野リゾート 佐藤大介氏、「JAPAN CMO CLUB」CMO 加藤希尊氏(セールスフォース・ドットコム マーケティング・ディレクター)、ABC Cooking Studio 吉村佳子氏、アンファー 臺智紀氏。

強いブランドにも課題はある!

独自のビジネスモデルで自ら市場を創造し、熱狂的なファンを生み出し続けるパイオニア企業…。マーケターであれば、一度は経験してみたいと思う、魅力的な職場と言えるのではないだろうか。

9月8日に開催した「JAPAN CMO CLUB」14回目の研究会の参加企業は、アンファー、ABC Cooking Studio、星野リゾート、ユナイテッドアローズで、まさに独自市場を創造してきた、パイオニア企業の4社。しかし、強いと言われるブランドだからこそのマーケティングの課題に共通点も見えてきた。研究会の冒頭で「JAPAN CMO CLUB」のCMO加藤尊希氏は「マーケターの集合知をつくる」ことを目的にしたCLUBの主旨に触れつつ、「独自の魅力を持った4ブランドが集まってのディスカッションからは成熟時代の新しいマーケティングの方向性が見えるのでは」と議論の行く末に期待を寄せた。

ABC Cooking Studio 吉村佳子氏。

近年の成長が著しいため、新興企業のイメージも強いABC Cooking Studioだが、創業は1987年。同社の吉村佳子氏は「私たちが、若い女性たちがコミュニケーションの場として楽しみながら通える料理教室という新しい文化をつくりあげてきた自負があります。一方で市場の支持を受け企業が成長したことで、いまや全国で130店舗を展開するまでに。今度は料理教室に通うことの価値のひとつとも言える、若い女性が感じていただいていた、ステータス性が薄れつつある」と、現在の課題を発表した。

「星のや」ブランドの他、国内では温泉旅館ブランドの「界」、デザイナーズリゾートの「リゾナーレ」の3ブランドを全国に展開する、星野リゾートでも施設数が急激に増えた2010年頃から、ブランドイメージの希薄化を招かないよう、細心の注意を払っているという。

星野リゾートの佐藤大介氏。

吉村氏の発言を受け、星野リゾートの佐藤大介氏も「2010年頃は、まだ『星のや』ブランドを熱狂的に支持してくださる方はいらしたものの、“知る人ぞ知る”という存在だった。まずは星野リゾート自体の認知を高めよう。そして一般的に認知が広めたうえで、ブランドを維持していくことを考えようという方針で進めてきました。今は、ブランドアイデンティティの確立・維持がテーマです」と課題における共通点を提示した。

また、吉村氏からは「お料理教室のライバルは決して競合他社だけではない。通学式の教室なので、ショッピングやデート、映画鑑賞など人の時間を拘束する多様なエンターテインメントと競合することも課題」という話も出てきた。加藤氏は「成熟化した現代においては商品のコモディティ化、人口減少、さらにスマート化がもたらす“顧客接点の奪い合い”が起きている。可処分所得だけでなく、可処分時間という概念も現代において、マーケティング活動の重要な競争軸」と指摘した。

企業とお客さまの生涯にわたる関係を構築するには

ユナイテッドアローズの高田賢二氏。

可処分時間の奪い合いを課題に掲げたABC Cooking Studioに対して、ユナイテッドアローズの高田賢二氏からはファッション業界は可処分所得の奪い合いで厳しい環境にあるという話が出てきた。

「若年層を中心に、ファッションに対する志向が減少傾向にあります。統計を見ても10数年前は1ヶ月にファッションに投じる金額は1万3000円程度だったが、現在では9000円代に減少している。」と業界自体が抱える課題が提示された。さらに「昔の若者に比べ、人と違う服を着たいという志向が減少している」と言い、インテリアや食などファッションに留まらない、ユナイテッドアローズならではの体験や世界観を提案できる場を拡充させる活動も重要視する方向性が説明された。

また、高田氏は「お客さまと接点を持てる機会は格段に増えたので、コミュニケーションがやりやすくなっている一方、その中で他社にはない独自性をいかに打ち出せるかが課題」と話し、現在はハウスカード施策の強化や、CRMプログラムのスタートなどエンゲージメント強化の活動に力を入れているという話もあった。

アンファーの臺 智紀氏。

世の中には「作ることはできるが、わざわざ作られることのない」商品や「作りたいけれど作ることができない」商品があるが、生活者の声を聞き、あえてそういった商品に挑戦し、男性用薬用シャンプー「スカルプD」など、独自商品で市場を創ってきたアンファー。同社では薬用シャンプーやまつ毛美容液など特定の商品だけでお客さまとつながる関係では年齢の変化とともに、企業との関係も途切れてしまうと考えている。現在は、予防医学を基盤としたトータルエイジングケア商品を開発・提供する企業として、商品ラインナップを拡充。「例えば、シャンプーは使わなくなったけれど、アンファーのスムージーを飲んでみようといった具合に、企業姿勢に共感し、信頼をしていただき、生涯にわたる関係を築いていけないかと考えています」とアンファーの臺 智紀は話す。

全国ブランドになる前に、
デジタルチャネルでコアファンをつくる

アンファーの「スカルプD」は医薬部外品のため、リニューアルをするには8ヶ月以上かけて国の認可をとる必要があるが、医療や研究の進化に合わせ、1年に1度フルリニューアルを行う。「流通対策を考えれば1年に1度のリニューアルには困難が伴う。しかし某自動車メーカーは技術の進化に合わせモデルチェンジを重ねているが、誰もが一目でそのメーカーの自動車だと認知されている。『スカルプD』もそういう存在に育てていきたい」(臺氏)。

他のメーカーが「あえて作らない」商品に挑戦するアンファーでは、商品原価削減を避けるため、インターネット販売を中心として販路を絞って展開している。「スカルプD」も発売当初からインターネットでの直販が約8割を占める。顧客と直接、接点を持っていることも、こうしたモデルへの転換を目指すきっかけになっているようだ。

この話を受け、星野リゾートの佐藤氏は、同社のグループ会社であるクラフトビールのヤッホーブルーイングの成長モデルとアンファーに共通点があると指摘。「リアル店舗では、最初なかなか相手にされなかったヤッホーブルーイングも質の高さで、ネット販売で熱狂的なファンができ、結果的に全国のコンビニエンスストアで流通するまでに成長しました。質の追求がファンをつくったプロセスには共通する点を感じます」。

次ページ 「強固なブランドイメージだからこそ、コラボの発想も広がる」へ続く

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