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スパイクス・アジア審査委員長の木村健太郎さんに聞く — 「審査を通して見えた日本のデジタル広告の課題」

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毎年シンガポールで開催される、アジア地域最大級の広告コミュニケーションフェスティバル、スパイクス・アジア。今年は、9月21日〜 9月23日に開催されました。
デジタル部門、モバイル部門、そして今年新設のデジタルクラフト部門の審査委員長として参加した博報堂ケトル 共同CEOの木村健太郎さんに、今回の審査と受賞作について話を聞きました。

アイデアだけではだめ!審査委員長として示した3つの方針

—今回の審査で重視したポイントを教えてください。

木村:デジタル部門、モバイル部門では、審査員委員長として3つの方針を打ち出しました。

1つめは、「ヒューマニティ」。デジタルテクノロジーは、僕らの人間性をもっと豊かにしていくことができるはず。だから、テクノロジーのためのテクノロジーではなく、僕らの社会や生活を少しでも人間らしくした仕事を探そう、という方針です。

木村健太郎さん

2つめは、真に「デジタル・ドリブン / モバイル・ドリブン」なアイデア。今は、ほぼ全てのキャンペーンがなんらかのデジタル施策を含む時代。だからこそ真にデジタルやモバイルの力が牽引したクリエイティビティを選ぼうよ、ということを言いました。

3つめは「How it works」。つまり何を成し遂げたかなんですが、売り上げやビュー数のような量的な成果だけでなく、その仕事が社会やブランドにどんなインパクトを与えたのかという質的な成果をちゃんと見ようということにしました。

もうひとつ、今年新設されたデジタルクラフト部門については、アイデアやリザルトは無視して、純粋にエグゼキューションのクラフトとユーザー体験にフォーカスしようという方針で審査しました。

—審査で苦労したことは何でしたか?

そうですね。特にモバイルで議論になったのが「プロトタイプ(試作品)をどう扱うか」ということです。

すばらしいプロトタイプの作品がいくつもあったのですが、多くの審査員が、ユーザーにちゃんと体験をもたらしてくれる作品と、未来を描くプロトタイプを同軸で評価するのが難しいと感じました。幸い僕が見たチームにはテクノロジーに強い審査員が多かったので、技術的に可能か、そしてそれはサステナブルか、という議論はかなりできたと思います。でもやはりプレゼンテーションや質疑応答があるイノベーション部門と違い、現物やビデオのみではプロトタイプを正当に評価するのは難しいという結論になり、最終的には人々に現実のデジタル体験がちゃんと届いた作品がゴールド以上の賞に選ばれる結果になりました。

—逆に楽しかったことは?

広告賞の審査って、何日間も朝から晩まで見て議論し続けなければならないじゃないですか。でもそれによって審査員自身が何か学ぶものや得るものがあるべきだと思っているんです。そこで審査が始まる前に時間を取って、「僕らはなんのためにここで審査をしているのか」というテーマで、今までの審査員経験で感じたことをミニレクチャーしたんです。広告賞は本来何のためにあるのかというテーマは実は結構奥深くて、ランチやディナーのときもこの話でまじめに盛り上がりました。

デジタル、モバイル、デジタルクラフト部門審査員。右から3番目が木村さん。

次ページ 「グランプリ受賞作、ここがすごかった!」へ続く