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コラム

『編集会議』の裏側

出版界の裏側を語る匿名座談会「エア取材?そりゃあ、ありますよ」

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編集者とライターの関係性、そして出版業界にはどんな裏側があるのか。『編集会議』最新号ではその実態を探るべく、編集者・ライター100人にアンケートを実施。さらに深掘りをしようと編集者とライター双方の経験者3人ずつの2組による匿名座談会も実施。気心の知れた3人同士ということもあり、タブーなしの“ぶっちゃけトーク”を繰り広げてもらった。

D氏 (30代・男)
20代で脱サラして、現在はフリーで雑誌の編集業務を請け負いながら、ネット媒体などでも執筆を行う。
 
E氏 (20代・女)
大学卒業後、ファッション誌の編集者・ライターに。3誌の編集部を渡り歩き、2016年の6月よりWeb業界に転向。
 
F氏 (30代・男)
異業種で働きつつ、パートタイムで編集・ライターの基礎を学ぶ。5年前にフリーランスの編集者・ライターへと転職。

—皆さんの現在の年収はいかがですか?

D E F: ……薄い。

D:もちろんメディアにもよるけど、編集部の同期や先輩に聞いてもたいした額はもらってない。働けば働くほどもらえる部分はあるけれど、その分激務になると考えたら、今の薄給でも生きていけてるし、このままでもいいかなあと。

E:私は今の会社だとボーナスも出ないし……やっぱり辛い。雑誌とかWebの記事ってひたすら消費されていくから、どうしても全体的に安くなっていっちゃうのかな。いつか、著書を出せるような存在になりたい。

F:お金よりも自分の好奇心が満たされてるし、まあ今のままでも悪くないかと思っている自分がいる。

E:でももうちょっと先のことを考えたら、これでいいのか?ってなりませんか。

F:そりゃあ、なるよ。俺の場合、今の働き方や収入だと、結婚なんて到底無理(苦笑)。

D:どこも安いからね。でも教育関係の仕事は結構お金も良いと思うよ。昔、ある予備校のパンフレットをつくったときのギャラは10万円だったからね。

E:地方公共団体や医療系もギャラは良いって聞きます。やっぱり専門分野とか産業として需要があるジャンルだと羽振りは良いですよね。

D:でもやっぱり一番大事なのは、ちゃんとお金がもらえる仕事で自分が好きなものを書いていくってことだよね。そのための環境を自分でつくっていくこと。じゃないと、編集者とかライターって仕事は、なかなか長く続けられないよね。

—最近話題の「エア取材」についてはいかがでしょうか。

F:全然ありますよ!脳内で何人もの“業界関係者”をつくり出して、こんなこと言いそうという言葉をしゃべらせてた(笑)。

E:それはある!アンケートをとったていで「男の子のリアルな意見」とか書いたことがあります。そんなもん知るか!とか思いながら“私の頭の中の男”に書かせてましたね。

F:ネットの外注系の仕事には、「エア取材」モノの記事依頼が多い気がする。しかもこの手のものは裏取りとか何もしなくて済むから、やたら安いんだよね。恋愛指南マニュアルとかいうふざけた商品の紹介文は、1記事1000円だった。ライターになりたての頃だったし、とにかく何でも挑戦しよう!と思ってやってみたけど、何の実にもならなかったな。

D:そんな安い金額で、誰が受けるんだよって話だな(苦笑)。

F:この前なんか、2000字書いて300円という案件を見たからね(笑)。こんな激安単価はネットの外注記事ぐらいだよ。暇を持て余した人がやる仕事で、ライターを名乗る人がやるような仕事じゃない。

D:2人は今、仕事の単価ってどれくらい?

F:この前、Dの雑誌で書いたときは、1ページ2万円だったよね。

D:うん、写真の点数とかにもよるけど、うちは基本ページ単価2万円かな。

E:私たちのメディアは1記事約1万円。Webメディアのなかでは比較的高いと思う。

D:僕がフリーランスとして受けたWebメディアのタイアップ記事は、2時間の取材で原稿を書いて1万2000円だったかな。

F:俺がやってるコラム記事は8000円から1万円の間くらい。しかも取材から執筆まで全部をやって、さらに交通費含めてこの金額。地方とか僻地での取材なら、5000円も手元に残らないなんてこともある。

D:キュレーションメディア系なんて、記事1本4000円くらいがザラだって聞くよね。

F:Webメディアだけで書いて生計立てようとするくらいなら、俺はライターとしてではなく、自らサイトを立ち上げるぐらいのことをしないとダメだと思うわ。ひたすら良いように使われるだけじゃ割に合わなすぎるからね。

※本記事は、10月31日発売の『編集会議』に掲載されている記事の一部を編集したものです。本誌では、匿名座談会の第2弾や編集者・ライター100人に聞いた本音などを掲載しています。他にも以下のような特集を組んでいます。ぜひ書店などでお手に取ってご覧ください。
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