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「文春砲」と企業の広報担当者はいかに戦うべきか?『週刊文春』編集長に聞いてみた

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舛添要一・前東京都知事の政治資金問題やベッキーの不倫騒動など、多くのスキャンダルが『週刊文春』の取材によって明らかになった2016年。12月1日に発売した月刊『広報会議』1月号では、「取材する」側から見た芸能人や政治家、企業の広報について新谷学編集長が明かしている。

「嘘をつく広報」でダメージが拡大したベッキー&舛添

—2016年のスクープの中で、印象に残った話題は。

新谷 学(しんたに・まなぶ)氏
1964年群馬県生まれ。1989年早稲田大学政治経済学部卒業後、文藝春秋入社。『Number(ナンバー)』、『週刊文春』、月刊『文藝春秋』編集部などを経て、2011年ノンフィクション局第一部部長。2012年4月から現職。

新谷編集長:自分たちの記事への対応について、あまり偉そうに評論家のようなことは言いたくないのですが、日ごろお世話になっている企業の広報担当の方々のお役に立てるなら、可能な範囲でお話しします。

企業にとって反面教師になりそうなのは、ベッキーさんと(前東京都知事の)舛添さんのケースです。ベッキーさんは記事が出た直後に会見の開催を焦るあまり、何のために、誰のために会見をすべきだったのかを間違えてしまった。CMタレントとして多数、企業と契約していたこともあり「広告主にまず釈明しなくては」という思いが先に立ち、ファンや視聴者への対応が後回しになってしまった。会見も記事に書かれた内容を否定するだけで、質疑応答の時間もなしでした。

舛添さんも、初めに公用車の使い方について報じられたときに改めるべき点は改めれば良かったのに、「動く知事室」「政治家はトップリーダー」といった発言も飛び出し、反省というよりも開き直ってしまった。両者とも、最初の対応を誤ったことで、火に油を注いでしまい、ダメージがかえって大きくなってしまったと思います。

「悪い広報」には3つのパターンがある

—この2つのスキャンダルから、企業広報が学ぶべきポイントとは。

新谷編集長:私は悪い広報には3つのパターンがあると思っています。それは「逃げる」「隠す」「嘘をつく」です。

「逃げる」広報は、メディアから取材が入ったときに「担当者が不在」として取材に応じない。記事としては「締め切りまでに回答はなかった」と書かれることになるパターンです。それでは読者に「都合が悪いから逃げている」という印象を与えてしまう。

「隠す」広報は、事実が分かっているのに、話すとダメージが大きくなるからと隠してしまう。今の時代、どんなことでも隠し通すことはできません。我々も編集部宛に誰でも情報提供できる「文春リークス」というサイトを開設していますが、中には驚くような内容のものもあります。「墓場まで持っていく」と決めたとしても、2人以上が知っている情報は本当に墓場まで守られることなどないと考えた方が危機管理上はいいと思います。

慶応義塾大学の学生による集団強姦事件の大学側の対応も「隠す」広報でした。当初は未成年飲酒だけに問題を矮小化しているように見えた。大学側はそれほど大ごとになるとは思っていなかったのかもしれませんが、実際には本誌にも他誌にも、たくさんの情報が寄せられていたのです。

そして、最悪なのが「嘘をつく」広報。ベッキーさんはこれに当てはまってしまいましたが、意図的に嘘をついてしまうと、それが嘘だと分かったときのダメージは計り知れません。

『週刊文春』で報じられたベッキーと「ゲスの極み乙女。」川谷絵音の不倫問題。発売に先駆け1月6日、ベッキーは記者会見を開いたものの質疑応答の時間はなし。結果として「嘘をつく広報」となってしまった。

週刊誌の記者だって、最初は広報から当たる

—逆に、新谷編集長が考える「良い広報」の条件とは。

「広報会議」2017年1月号特集「危機管理広報マニュアル」はこちらから

新谷編集長:共通しているのは、日常活動を大事にしていること。例えば、取材を申し込んだとき、電話やファクスだけで終わらせてしまうのか、「せっかくだから名刺交換をしましょう」と言って実際に顔を合わせるのかで大きく違います。この場合は記者からも声をかけるべきですが、広報からも面会の場を提案すべきでしょう。

こうして普段から時々会い、関係性を続ける努力をすることが重要です。たとえ記事が出た場合も、直接会って「実はバックグラウンドではこういうことが起こっている」と解説してもらえれば記事のトーンが変わることもある。そのままならハードランディングする記事がソフトランディングすることが、実は結構あるんです。

我々が取材するとき、最初はたいてい広報担当者に当たります。もちろん当事者に直接夜回りをしないとは言いませんが、本当に広報の方との信頼関係があれば、スムーズに事実確認ができます。

ダメな広報はトップの顔色ばかりうかがう

—仮に広報がオープンな姿勢であっても、社内やトップがそれを良しとしないというケースも多いです。

新谷編集長:もうひとつ、良い広報に共通している点は、トップと直結し、トップに対してもしっかり意見が言えること。ダメな広報は常に内向きでトップの顔色ばかり見ているので、メディアからネガティブな情報を突きつけられたときにそのまま上にあげられません。トップに報告して「そんなことあるわけないだろ」と怒鳴られると「そうですよね」となかったことにしてしまう。

自分の仕事はトップをご機嫌にしておくことだと思っている広報は失格です。そうではなく「社を挙げて調べないとまずいですよ」「トップ自ら説明しないと収まりませんよ」と説得できるかどうか。もしそういう広報を切り捨てるようなトップがいたら、組織そのものが傷んでいくはずです。


・・・続きは、発売中の月刊『広報会議』1月号をご覧ください。本誌では、「文春リークスで増えた内部告発」「労務問題、セクハラ・パワハラなどの内部告発の増加」「記者会見に社長は出るべきか」「2017年の予測」についても聞いています。

「広報会議」2017年1月号は、広報関係者必読の記事満載の渾身の1冊!

【巻頭特集】2017年版 危機管理広報マニュアル

三菱自動車の燃費偽装、有名企業のお家騒動のほか、タレントや著名人など個人に対する批判など多くの不祥事が発覚した2016年。編集部の独自調査をもとに、その問題点や世の中の評価のほか、クライシス発生時の広報部の動きを想定した水面下のシミュレーション、危機管理広報の考え方、炎上対策まで専門家とともに考察していきます。

Part1 2016年の不祥事総まとめ

■問題1
三菱自動車とスズキ 相次ぐ燃費偽装
信頼を取り戻せるのか? 自動車業界の危機管理と広報
–アナリスト 中西孝樹

■問題2
セブン&アイ、出光、大戸屋…続く「創業家の乱」
問われるガバナンス 企業は「聖域」にしない努力を
ジャーナリスト 大西康之

■問題3
増える内部告発、隠し通せる秘密などない!
INTERVIEW
『週刊文春』編集長と総括 2016年の不祥事と広報対応

■ノウハウ編
(1)
もしもあなたの会社でパワハラが発覚したら?
水面下の広報対応 シミュレーションマップ
監修/佐々木政幸

(2)
「謝罪」までのステップ
有事後の「心の持ち方」「行動の手順」

■CASE STUDY
なぜ西武ホールディングスは 10周年誌で「負の歴史」を記したのか

(3)
「社員への対応は後回し」は厳禁 !
不祥事発覚時こそ社内広報が重要

Part2 クレーム過激化社会を生き抜く方法

■レポート
変わる炎上のメカニズム
劇場化するネット世論

■問題4
PCデポ問題が明らかにした「クレームから炎上」の構図

■CASE STUDY
契約選手の不祥事で海外店舗閉鎖 !
エアウィーヴが直面した危機