民放の誕生とともに生まれた「鬼十則」が姿を消す──。
電通は9日、第4代社長の故・吉田秀雄氏が策定した「鬼十則」について、2017年版から社員手帳などへの掲載・掲出を取りやめると発表した。2015年末に新入社員が過労自殺した件を受けて発足した、電通労働環境改革本部が決めた。同本部では、電通からの発注業務で、制作会社に深夜作業や長時間労働が発生しないよう、新たな発注ルールや工程管理方法を策定するための協議にも入っている。
「鬼十則」は、1951年8月、電通の創業51周年を機に、吉田社長(当時)が執筆した。いわゆる社員心得だが、役員や社員に朝礼などで復唱させるなどの強制はなかったという。後に「Dentsu’s 10 Working Guideline」として英訳され、訪日したGEの社長にも贈られた。
執筆当時は、吉田社長による終戦から6年越しの折衝が結実し、初の民間ラジオ放送開局を目前としたタイミングでもあった。前年の1950年に放送法が成立。策定4カ月後の51年12月には、電通・毎日新聞社・朝日新聞社・読売新聞社の4社により「ラジオ東京」(現=東京放送ホールディングス)が初放送にこぎつけた。
日本の広告市場は、民法開始とともに飛躍的な成長をとげ、1950年~60年までの広告費は平均25%増で推移した。61年からの10年間も同15%で伸長した。
成長の一方で、1955年には、苛烈な指示に対して電通社員が一日ストライキを決行している。また1959年には、「頭脳作業を推し進めるために」と題し、適切な休養をとるよう促す訓示も出された。逝去直前には、病床から、長期病欠中の全社員に対し、見舞い状と熱帯植物の鉢植えを贈るよう指示したというエピソードもある(『電通を育てた“広告の鬼” 吉田秀雄』編集・発行=吉田秀雄記念事業財団)。
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