FinTechで「キャッシュレス化」が進むと、消費者の意識や行動はどう変わる? マネーフォワード秋山芳生氏に聞く

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月刊「宣伝会議7月号(6月1日発売)」では、「FinTechの浸透で変わる マーケティング戦略」を特集。決済行動や人と人とのお金のやりとりのスタイルが変化することで、マーケティングがどう変わるのか考えます。本記事では、FinTechで急速に進む「キャッシュレス化」によって、消費者の意識や行動はどう変わるのか、マネーフォワード PFM本部長 秋山芳生氏に聞きました。

マネーフォワード PFM本部長
秋山芳生氏

1976年東京都生まれ。立教大学経済学部経営学科を卒業後、博報堂入社。大手自動車メーカー担当AE後、アイスタイルへ転職し@cosme広告事業責任者、社長室長、プラットフォーム本部長を経て2014年よりマネーフォワードPFM本部長に就任。2004年 カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルファイナリスト受賞。

 

キャッシュレス化の進行で、お金が「見える化」される

自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」

FinTechの浸透によって金融業界に限らず、消費者側にも変化が起きています。その最も大きな変化は、やはり「キャッシュレス化の進行」です。

もともと日本人は現金での決済が中心でしたが、徐々にカードや電子マネーを使える場所が増え、その割合が増えてきました。また、2020年の東京オリンピックに向けた国際化やインバウンド需要を鑑みて、「銀聯(ぎんれん)カード」や「WeChatPay」、「Alipay」などグローバルな決済手段を使える場所もどんどん増えています。

キャッシュレス化が進むことによって起きている変化は、消費者がさまざまなお金の流れを可視化できるようになったことです。「マネーフォワード」はもちろん、クレジットカード会社や銀行の電子マネーのWebサイトやアプリから簡単にいつでも収支を確認できるようになりました。これは大きな変化だと考えています。

何をいつ買ったのかが、これまで以上に見える化されることで、自然と収支が改善する方向に進んでいます。例えば、利用率が低いにも関わらず、払い続けているサービスを見直す機会などが生まれるわけです。まさにお金を払うことに対する見方がより厳しくなっていき、消費者の本質的な支持を得ているものだけが生き残っていくと言えるかもしれません。

我々の「マネーフォワード」はオンライン上でお金の流れを一元管理できるサービスなので、キャッシュレス化の流れと非常に相性が良いと感じています。特にアプリユーザーは、利用していない人に比べてキャッシュレス化がより進んでいるという傾向も見えてきました。家計簿を使う上でクレジットカードと連携させると、自動で明細が登録され、より利便性が高まるためです。今までクレジットカードをあまり使っていなかった人たちが、お金の流れを可視化しようと、カードによる決済金額が約1.5 倍、決済回数は1.7 倍くらいに増えています。

将来に対する潜在的な不安でライフプランニングに関心

イベント「お金のEXPO」の様子。1日で約2000人が参加した。

そうして節約されたお金を使って、資産運用する意識が高まってきました。ユーザーに対するアンケートでは、過去に投資経験のある方が約半数いらっしゃいますが、経験のない方たちの約70%も投資に興味を持っているという結果が出ています。収支改善によって経済的に余力が出てきた際、それをどう活用するかという意識が高まっていくのでしょう。

※本記事は、6月1日発売の『宣伝会議』に掲載されている記事を抜粋したものです。

特に興味深い点が、「ライフプランニング」への関心が高まっていることです。当社では毎年1回「お金のEXPO」という、1日でお金に関することを学べるイベントを開催しています。イベントの事前アンケートでは、株式や投資信託、生命保険などさまざまなテーマがある中で、ライフプランニングへの興味関心が1位でした。

お金の流れが可視化されたことで、「現在の生き方は、自分に合っているのだろうか」という興味が高まっている表れだと思います。一方で、ライフプランニングへの興味が高まっているのは、日本全体に潜在的な不安があるとも考えています。長寿化し、100歳まで生きるのが当たり前になるかもしれない中、老後資金の準備や年金に対する不安があるからこそ、今からしっかりプランを立てなければと考えている方が多いのです。

日本人はもともと金融リテラシーが低いと言われ、1800兆円あるといわれる個人資産の約半分が現預金。つまり流動化していないお金として眠っています。高齢者の方々が老後資金として現金を持っているため、亡くなるときに平均3000万円程度が遺るとさえ言われています。個人資産の一部を運用に回すなど、自分のお金をデザインし対策を立てることは、日本の課題を解決してくれる打ち手のひとつになるのではと思います。

実際に、お金の動向が見える化されたことで「人生の優先順位が変わった」という方がいらっしゃいます。「何よりも家族が一番大事」ということに気づき、無駄な飲み会には行かなくなったそうです。

その結果、年間15万円ほど節約でき、夫婦で投資を始めたそうです。こうしたお金に対する意識の変化は、特に男性よりも女性に起きていると感じています。もともと我々のサービスのユーザーは、2014年までは男性が7割でした。特に30代後半から40代前半の男性が多かったのですが、現在は男女比がほぼ半分になってきました。かつ20代のユーザーも一気に増えました。

テレビCMもきっかけですが、女性が増えた理由はおそらく女性の方が本質的にお金に対する意識が高いうえ、家計簿というサービスとの相性が良いからだと思います。やはり女性は結婚や出産によるライフステージの変化を男性よりも敏感に察知して、お金の使い方を見直したいと思っていると感じています。

もうひとつ、世の中全体の変化としては、お金に対する興味関心がとても顕在化してきているように思います。これまでの日本では、お金について語ることや考えること自体が、あまり良いことではないと考えられてきた文化がありました。相手に「年収いくらですか?」と尋ねるのは、タブーという雰囲気があります。しかし、お金の流れを可視化されたことをきっかけに、積極的にお金に対して議論したり、セミナーに参加したり、情報を発信していくようになったと思います。

……「秋山氏が大手広告会社からFinTech 業界に移籍した理由」「お金に関するデータがマーケティングに活用できる」「FinTechが浸透した未来の広告」など、続きは月刊「宣伝会議7月号(6月1日発売)」をご覧ください。

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