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Anomalyが取り組む3つの改革と、クライアントを選ぶ5つの基準

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9月24日から10月1日の日程で実施した、米ニューヨーク視察研修ツアー「Business Creation Lab. in New York」。6日間の視察を通じ、時代の変化に合わせて新たなビジネスモデルの確立に動く先進企業の動きを捉えるとともに、日本の広告界が目指すべき方向性を探りました。アドタイでは、視察団が訪問した注目企業について、レポートを順次公開していきます。

また「宣伝会議」2018年1月号(12月1日発売)には、レポートの総集編を掲載します。こちらも、ぜひご覧ください。

Anomaly CMO Eric Damassa氏

2004年、TBWA\Worldwide、TBWA\Chiat\Day出身のクリエイティブディレクターを中心に設立されたAnomaly。現在、NY、LA、ベルリン、上海をはじめ世界7カ所にオフィスを持ち、社員数は650人にのぼる(2年前の2015年当時は420人だった)。今年、アドエイジ誌が発表する「エージェンシー・オブ・ザ・イヤー」に見事、輝いた。

日本語で「異例」「変則」を意味する社名が表すとおり、同社が目指すのは「広告業界の“Change Agency(変革者)”になる」ということ。ユニークな哲学を持ち、創業以来右肩上がりの成長を続ける同社のCMO・Eric Damassa氏に話を聞いた。

広告業界の慣習を変える3つの取り組み

従来の広告業界のビジネスを変えるため、Anomalyは3つの取り組みを進めている。

ひとつは「広告をすること」からの脱却。P&Gと新製品を開発することもあれば、他のクライアントに最適なオーディエンスを見つける戦略部分の支援することも、コンテンツをつくることもある。日本企業同様、広告をする以外にも自社のクリエイティビティを発揮している。

このことが決して建前でないことがわかるのが、二つ目に同社が掲げる、「タイムフィー」からの脱却だ。「時給×時間数×人数」を請求する米国広告業界において一般的なフィーの取り方は、時間を水増しすれば請求金額が増える不透明な収益モデルだとし、同社ではほぼ廃止している。特定の1社を除くすべてのクライントとの間で、プロジェクト毎ごとに値付けを行い、成果に応じてインセンティブを受け取る収益モデルをとっている。

Damassa氏は「他のエージェンシーが半年かかる仕事を2日で実現したほうが、クライアントは価値を感じますし、私たち自身のコモディティ化も防げます。Anomalyの全利益の30%程度が、インセンティブによるものです」と話す。

そして三つ目は、知的財産を活用したビジネス展開だ。例えば2015年に全米のリップクリーム市場でナンバー1に輝いた「EoS」の仕事においては、当初スキンケアブランドの販促を依頼してきたメーカーに対し、市場調査の結果をもとにリップクリームの新ブランド立ち上げを提案。共同開発を進め、見事トップシェアを実現した。Anomalyはこの仕事で、フィーではなくメーカーの株を取得することで収益としている。

料理研究家のEric Ripert氏とは合弁企業を立ち上げ、マンハッタンの高級レストランの一シェフだったRipert氏の、ブランディングからテレビ番組制作、スポンサー獲得、マーチャンダイジングなど360度のマネタイズ施策を展開。Ripert氏の料理番組「Avec Eric」は米国で権威あるテレビコンテンツの賞「エミー賞」を受賞したほか、Netflixでも配信されている。

そして2016年には、合法大麻を利用したリラクゼーション・プロダクト「Hmbldt」を開発した。カリフォルニアで大麻が合法化されたことを受け、専門知識を持つ医療・化学企業を探し、ジョイントベンチャーを立ち上げ、新しいプロダクトの開発に至ったという。

エージェンシー・オブ・ザ・イヤーのAnomaly、成長の鍵は「IPビジネス」

こうした知的財産を活用したビジネスについて、Damassa氏は次のように話す。「我々の資本を投入し、企業とのジョイントベンチャーで新しい事業を進めることは、クライアントワークを通じた短期的な資金調達とは別に、長期的な“財布”を持ち経営を安定させることにもつながっています。また自らの事業を持つことによって、その経営ノウハウをクライアントワークに生かすこともできるのです」。

現在は新しいデータプラットフォーム「アポロ」を開発中で、近々米国内で特許を申請するという。

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