データ資産の価値を高める、 WPPの「ホリゾンタリティ」戦略とは?

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WPP’s Data Alliance/Kantar  Nick Nyhan氏、中川直美氏

 

ニューヨークで開かれる米広告界最大規模のイベント「Advertising Week」のほか、最先端の知見が集まるニューヨークの広告会社や制作会社、メディア企業を視察するツアー「Business Creation Lab. 2016 in New York」(JTB主催、宣伝会議企画協力)が9月25日から10月2日まで開催されました。発売中の『宣伝会議』2017年1月号、アドタイ上でもその一部を紹介します。

世界一の規模を誇るグローバルのエージェンシーネットワーク、WPP。傘下の企業は400に上り、112カ国3000以上のオフィスで、レベニューは190億4000万ドル(約2兆円)になる。そのトップを務める英国出身の実業家、マーティン・ソレル氏は広告業界の買収王であり、近年、拡大する傘下企業を束ね「ホリゾンタリティ(水平連携)」の強化に取り組んでいる。

中でも、ビジネスゲームの鍵を握るデータアセットの集約と活用に対しては、
WPP’s Data Alliance(WPPデータアライアンス)を2011年に立ち上げた。WPPが目指す「データ・ホリゾンタリティ」とは。その構想実現をリードし続けてきた人物である、Kantar チーフ・デジタル・オフィサー/Data Alliance 取締役のNick Nyhan氏、Kantar Japan(カンター・ジャパン)から現在Data Allianceに出向中の中川直美氏に聞いた。

WPP’s Data Alliance 社/Kantar社:Nick Nyhan氏・中川直美氏

Nick Nyhan氏
中川 直美 氏

WPPは傘下企業を以下のいくつかの機能に分けて考えている。

GREYやJWT、Ogilvy&Matherのような①広告会社(米国ではメディアバイイングは別機能のため、クリエイティブエージェンシー)、GroupMのようなメディアプランニング・バイイングを行う②メディア投資管理グループ、AKQA、Wundermanなどの③ダイレクト&デジタルエージェンシー、Kantarといった消費者インサイト・コンサルティング機能を担う④データ投資管理グループ。他に、⑤PR、⑥ブランディング&デザイン、⑦ヘルスケアなどがある。

現在WPP全体では、傘下の企業が分散して収集・蓄積しているデータ、FacebookやGoogle、Amazon、SpotifyなどのWPPが提携するサードパーティ企業が保有するデータなどがあり、毎秒5万件にのぼる行動データ、1日のリーチ数である10億人のプロファイルデータ、米国2億世帯超える購買データ、年に8000万もの生活者インタビューのデータが収集されるという。

Data AllianceはこうしたWPP全体で収集するデータを、包括的に利用するための横断的なリソース調達の専門集団である。「データは特別でセクシーなものからビジネスの基本へと変わっています。クライアントは我々に対して、複数データを統合して生活者の正しいインサイトを導き、正しいオーディエンスにピンポイントでアプローチすること、そしてデータに基づく効果測定と投資最適化をすることを求めています 」(Nyhan氏)。

そのためにWPP傘下の主要企業から選抜され、世界5カ国に拠点に置くData Allianceの社員は主に「①WPP内外の企業とのデータ提携業務 ②WPP内の企業横断でアクセスし利用できるツールの整備 ③データ活用に関するグループ内リテラシーを高めるための啓発とコミュニティづくり」(中川氏)に取り組んでいるというわけだ。

Data Allianceで集約するデータは、いくつかのプラットフォームを通じて、WPP内外の企業が利活用できるように整備される。WPP内では、Wundermanなどダイレクトマーケティングに強みを持つ企業はCRMに活用する。

GroupMは昨年11月に発表した[M]PLATFORMというオーディエンスターゲティングのプラットフォームを強化し、マイクロセグメントのターゲティングを実現する。Kantarでは消費者パネルを充実させる。

そして、クリエイティブエージェンシーや、PRエージェンシーはWPP内の「プロジェクト70(P70)」と呼ばれるデータ検索のポータルを通じて、ピッチの前に必要なデータを取り出し、戦略立案や、クリエイティブ開発のプロセスに活用する。

「『複数ソースから、クライアントの業界ニュースや競合動向が知りたい』『消費者インサイトの仮説出しを行いたい』といったニーズに応えるために、『P70』はあります。調査データや、シンクタンクが発行しているホワイトペーパー、FacebookやSpotifyといったパートナー企業のオーディエンスディスカバリーツールに1ログインでアクセスできるようにするとともに、グローバルで検索頻度の高いデータについては、拡充・整備を進めるようにしています」(中川氏)。

WPP内の企業の関係は「キス・アンド・パンチ」と例えられることがある。一部協力しながらも、原則としては競争させる方針だ。よって、「P70」についても、70%のデータはグループ横断で共有、30%は企業内独自にカスタマイズをし、ホールディングスの中でも競争優位性を維持できるようにしているという。

セッションにおいてNyhan氏からは度々「True Data」という言葉が挙がった。日本語に置き換えて言えば「生活者の現実の購買に関与している真実のデータ」と表現できる。

当たり前の話だが、全ての生活者のメディア接触から購買に至るまでのデータを取得することは不可能だ。よって、統計学上有意だと認められる数のシングルソース・データを活用する、あるいは、非常に近い傾向を持つ複数データから確率的に同一人物であると推論する、などの方法がとられる。その精度を高めて、より購買行動に結びつくデータを収集・活用することが求められている。

今後、Data Allianceの機能が高まることによって、WPP内のバリューチェーンが強化され、傘下企業の得られる恩恵も増える。Data Allianceのインターナルコミュニケーションが成功すれば、現場のデータの利活用が増え、ホールディングスが傘下企業から吸い上げるデータも増え、利活用のケーススタディも資産として蓄積できる。この動きを大なり小なり組織に取り込めた企業が、今後のデータ競争においても勝利を手にすることができるだろう。


躍進するグローバル企業の戦い方に学ぶ!
NY視察研修「Business Creation Lab. in New York」
次回は2018年9月30日~10月7日に開催予定です。

他にも、海外視察研修を続々開催予定です。
【SXSW視察研修】Innovation Boot Camp in Texas
2018年3月10日~16日
https://www.sendenkaigi.com/class/detail/innovation_boot_camp_in_texas.php
参加枠申込締切 :2017年12月19日(火)
お問い合わせはこちら: degipro@sendenkaigi.co.jp


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