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競合やユーザーばかりを見るのではなく、「人間」を見に行こう

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宣伝会議から『欲しいの本質』が2017年12月1日に発売。本書では、マーケティングにおいて重要な、人を動かす隠れた心理「インサイト」の条件とは?どうやって見つけるの?ビジネスに生かすには?といった点について解説します。本連載では、マーケターが洞察すべき、消費者自身すら気付いていない隠れたインサイトとは何か。著者の大松孝弘氏が全3回でご紹介していきます。

50年以上前の論文が今でも引用される背景

「マーケティング近視眼」という論文があります。「ハーバードビジネスレビュー」にセオドア・レビット氏が発表したのは50年以上も前のことですが、今でも学者や研究者がその内容を引用しており、ブログにもたびたび紹介されています。

引用されているのは、米国の鉄道会社の事例です。彼らは、自社の事業を「鉄道事業」として考えたために衰退の道をたどった。狭く限定した「鉄道事業」ではなく、人や貨物を運ぶ「輸送事業」であると定義すれば、トラック、バス、飛行機といった他の輸送手段を用いる企業に顧客を奪われることもなかった。自らの製品からの視点に止まり、広く見ることができない「近視眼」に陥ったために衰退の道をたどった、とレビットは指摘しています。

この論文は経営に関する考察ですが、「近視眼に陥ってはならない」という指摘は現在の私たちも目をむけるべき重要な警告です。

マーケティングやコミュニケーションのアイデアを考える際に手がかりにするインサイト。それが、このような近視眼的インサイトに陥っているケースがあまりに多い。日本の多くの企業がいまいち突き抜けきれず停滞しているのは、それが大きな要因です。

アイデアや企画のスタートを、自社ブランドやそのユーザー、あるいは競合ブランドやそのユーザーのインサイトに置く。一見当たり前のように見えるこの考え方に、落とし穴があります。この発想が、コミュニケーションやプロモーションにおいても、競合との小さな差を追求するだけでターゲットに届かない結果に陥る要因になっています。

そのようなインサイトは、結局は「自社」「競合」「ユーザー」といった狭い世界の中での見方に過ぎない。そこから得られるのは、細かい改善点や訴求要素だけです。そして、そんなインサイトから生まれるアイデアには、人々を動かすような突き抜けたインパクトがありません。仮に目に触れたとしても、残念ながらスルーされておしまいです。

では、どうすればいいのでしょうか?

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