事実から感情を導き出す
大松:投影法は感情面からひも解いてファクトを明らかにしていきます。一方、エスノグラフィーは、事実から入ります。前編の『水曜日のネコ』は、人の「表情」という事実から感情をひも解いているので、エスノグラフィーのアプローチです。
ソーシャルリスニングも同様で、例えばInstagramに新型プリウスの斜め後ろ45度からの写真がたくさん上がっていたとします。ということは、「新型プリウスは斜め45度の角度がかっこいい」とは言っていないですが、そう思っていると事実から感情をひも解くことができます。これもある種のエスノグラフィーです。
稲垣:書籍の中にあったキットカットの事例も、キットカットは九州で2月に異様に売れているという事実からスタートしていました。そうした事実を「この数字は何だ」と不思議に思うことが重要だと感じます。
そして観察する時は、ターゲットになりきるというか、本当にその人の心の中に入っていく。生まれ、育ち、世代、といかにその人の気持ちになって物を考えられるかが大事ですね。
大松:皆さんすぐに正解を手に入れたいので、観察を意外とやっていないと思います。一見、遠回りに見えてしまうんだと思います。あと、定性的なリサーチでも、すぐに1つの答えに決めたがります。そうでなくて、いかに可能性を広げるかを考えていくべきです。
広げたものをきちんと確認して、絞って、また広げて、絞って…というプロセスを通じてアイデアにつながるインサイトを見つけていけるので、それが今の成熟した時代では近道になります。ぜひ観察を実践してほしいです。
書籍案内
『「欲しい」の本質~人を動かす隠れた心理「インサイト」の見つけ方~』
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